8 学園の噂
総合評価7000pt突破!!こんなに早く達成させていただきありがとうございます!!
ネル、アミナとステータスを振り終わり。
残ったのは俺。
「さてと俺は」
と言っても俺は俺ですでにどういう方向性で育てるかは決めているから、あっさりとステータスを振り終えて終了。
『リベルタ クラス1/レベル9
基礎ステータス
体力11 魔力7
BP 0
EXBP 0
スキル1/スキルスロット3
槍豪術 クラス2/レベル94 』
「え、もう振り終わったの?」
「ああ、もともとどうするか決めてたからな」
ステータスの振り具合はアミナの反対。
体力三対魔力二の振り分けだ。
「そう言えばリベルタがどんな風になりたいかって聞いたことなかったわね」
「そうだね」
「気になるか?」
「うん、ネルも気になるよね」
「そうね。リベルタだけ私たちのことを知ってるのもなんか嫌だし」
さくっとステータスを振り終えてあとは何しようかなと悩む前に、ネルにステータスを覗き込まれた。
そこにはすでに振り分け済みのステータスが表示されていた。
さらに反対方向からもアミナが顔を出してきて、俺の顔の両隣にネルとアミナの顔が並ぶことになった。
こんな状況で話すのかと思いつつ。
「俺の目指すスタイルの名称は物騒だからな」
「物騒って、逆に気になるわね」
ゲームの俗称をそのままいうとネルたちに怖がられるのではと思い、言うのを躊躇う。
「そうそう、それに名前が物騒なだけでリベルタ君が物騒ってわけじゃないしね」
「そうか?それなら」
その躊躇いを察したアミナが笑って問題ないと言ってくれるのでならばと俺の目指す最終形態を言う。
「俺の目指しているのは、首狩りアサシンだ」
「え」
「うわー、思ったよりも物騒なのが出てきたよ」
約束通り、二人とも怯えたりはしなかったが、なんで?という疑問符は頭についている。
「まさかリベルタ、誰かに復讐を」
「しないしない」
俺が孤児だということを知っているネルが、捨てられた原因の相手に復讐することを目標に生きていると勘違いしそうになったが、俺は苦笑しながら手を振って否定する。
「戦闘スタイルが斥候を兼任した戦闘職っていうだけの話だ。メイン武器は槍なのとスキル構成が暗殺者みたいだからそういう風に呼ばれているだけ」
俺自身は暗殺稼業とか興味ないし、もともとソロでもパーティーでも活躍できるスタイルとしてゲーム時代にも愛用していたスタイルだからこの世界もこれで行こうと思っていたのだ。
首狩りアサシン。
急所を不意打ちで狙うクリティカル特化の槍使いだ。
「スキル構成はパッシブで槍術、鎌術、斥候術に暗殺術の四つで構成している。ソロでもパーティーでも活躍できるスタイルだ」
首狩りの名はとあるモンスターがピンポイントで落とすスキル名に由来して、さらにそれが高火力を叩きだせる上にコスパがいい。
「ふーん、リベルタなら勇者になれると思うんだけど」
「それか、賢者様とか」
「王道すぎて対策取られまくってるスタイルはなぁ。強いのはわかるけど……魅力は感じないな」
呼び名に関して何か思うことがあるのだろうか、子供ながらで思い浮かぶ英雄みたいなスタイルを提案してくるけど、ゲーム時代は強いけどそれだけの代名詞の二つのスタイル。
勇者は回復もできて大技も撃てて、さらには剣と盾のバランスがとれるオールラウンダー。
長所は万能、短所はとがってない分じり貧になりがち。
賢者は魔法分野を詰められるだけ詰め込めた感じの魔法の万能形態。
長所は魔法攻撃の幅が広いし火力も十分出る。
短所は物理ステータスが貧弱なうえに、魔法耐性でメタを張れてしまう。
「「ええー」」
「えー、じゃありません。二人だって好きなスタイルを目指しているんだから俺も好きなスタイル目指していいじゃん。後ろ暗いことをするわけじゃないし」
どっちもやりつくされた感のあるスタイルで、面白みに欠ける。
強い人が使えばどちらも上位に君臨できるだけの素質はあるんだけどな。
「そうだけど」
「ねぇ?」
「はいはい、この話はおしまい。明日も早いし早く寝ないとレベル上げの時間を確保できないよ」
「「はーい」」
日が暮れてしまえば、あとは月あかりと星の明かりが照らすだけの大地。
テントの外でデントさんたちが焚火を囲っているからその火の明かりがテントの隙間から入ってくる。
ランプは一応持ってきているけど、遅くまで起きていると明日に響く。
寝袋なんて便利な物はないから、地面に毛布を引いて、さらに上から毛布をかぶるという原始的に眠る方法。
「……お二人さん、近くはありませんか?」
「仕方ないでしょテントが狭いんだから」
「それにくっついていた方が温かいよ。僕の羽は保温性抜群だし」
「私だって体温高いんだから」
「いや、くっつくのは……はい、黙ります」
この季節だと少し熱いかなぁと思うけど、ここには温室効果ガスなんて代物がないから夜になるとある程度は冷える。
毛布をかぶっても暑いとは思わない程度には冷える。
そんな空間で身を寄せ合って寝るのは合理的な話なんだが、お巡りさんを呼ばれないか不安な絵面なので遠慮していただけると助かるのだがと言おうと思ったが、ジト目で見られてしまえばあきらめる他ない。
「ランプ消すわよ」
「はーい」
「ああ」
ネルが枕もとのランプに手を伸ばして、火を消せばここは暗くなる。
そこで寝れれば苦労しないのだが。
「「「……」」」
修学旅行の日を思い出すくらいに眠気が来ない。
昼間あんなに体を動かして、疲れているはずなのに眠くならない。
「ねぇ、もう寝た?」
「いや」
「まだ~おかしいね。いつもならもう寝れてるんだけど」
「枕がないからじゃないか?」
「僕は枕がなくても寝れるよ」
「私もよ。いつものベッドじゃないからかしら?」
「モチクッションを敷き詰めたあのベッドか?」
「あれ良いよねぇ、僕も部屋のベッドに入れたよ」
数分間目をつむって寝ようと努力したけど結局は無理だった。
となると眠気が来るまで軽くおしゃべりしようという流れになる。
地面が普段よりも硬くて、枕も皮袋にタオルを巻いた簡易的な物。
寝心地で言うなら、ドロップ品のモチクッションに比べるまでもない。
「……ねぇ、何か話してよ」
「何かって?」
「何でもいいわ」
しかし、いざ話そうと考えても普段から一緒にいるから何か話そうと思うと話すことが難しく感じる。
「じゃぁ、前に王様が出した御触れの話をしようよ」
「御触れ?何か出てたっけ?」
「リベルタ知らないの?」
「知らないなぁ」
アミナが話題を提供してくれて助かるが、これまでデントさんとやり取りすることでこの世界の情報収集をしていたがそこら辺は回収しきれていなかったか。
「知らなくても無理ないよ、僕たち平民にとって関係はあるけど実際には関係のない話だもん」
「関係があるけど関係のない話?」
「そうね、国が運営している冒険者の学校があるのよ。あそこって貴族の子供やお金がある商人の子供が通う学校だったんだけど、王様がいろいろな子供の才能を発掘するって言って平民の子供も試験を合格すれば入れるって御触れよ」
最初はトンチの話かと思ったが、思いっきり俺の未来にも関係ある話だった。
「え、今まで学校って平民は入れなかったの?」
「当り前じゃない、むしろなんで入れると思ってたのよ」
「そうだよ。学費は高いし、周りは貴族だらけ。平民が行くような場所じゃないよ」
「マジか」
ゲームの時は主人公は出奔した貴族設定だったから、平民状態で試験を受けて普通に学校に入っていた。
学費なんてワードは一切出てこなくて、試験を突破すれば何ら問題はなかった。
ゲーム時代はストーリーを進める際に、学校に入ることで受けられる恩恵は数知れず。その中で俺が欲しいのは渡航権利だ。
学生時代に優秀な成績を収めると、東西南北に加えて中央大陸へ渡航する許可を王様から与えられるという権利を得られる。
上手くすれば一年目でこの権利は獲得できて、モンスターや素材、さらにはスキル獲得と応用の幅が格段に広がる。
この権利を学校に入る以外の方法で獲得するとなると貴族とコネを作ったり、一つの大陸で冒険者としていろいろと貢献したりと面倒な手順を強いられる。
これが学校ルートだと、入って優秀成績者になればという簡単な条件でもらえる。
「リベルタ、あなた学校に入る気だったの?」
「うん」
「ええ!?」
入らない理由がない。
設定上は十二歳から入学できるはず。だから俺もたぶんこの体的に、あと二年から三年くらいで学校に入れるかなと思っていた。
ネルからは恐る恐る質問され、あっさりと入るつもりだったと暴露。
そのあっさり具合にアミナが驚く。
「そんなに驚くこと?」
興奮したら眠れないと思いつつも、ここでも常識のずれが出たかと思った。
「驚くわよ。普通入ろうなんて思わないよ」
「そうだよ。てっきりリベルタ君はこのまま冒険者になっていくものだと思ってたよ」
「私も」
ここまで立場の格差があるとは思わなかったな。
いや、冷静に考えれば学ぶための施設は特権階級の集まる場所か。
俺の日本人としての常識とゲームでの知識が試験を突破すれば難関校でも入れるという誤った認識を植え付けていた。
当たり前こそ疑えか。
ネルたちが教えてくれなかったら、予定が崩れるところだった。
「その方法もありなんだけど、世界中を巡ることを考えると学校には行きたいんだよなぁ」
強くなるためには装備やスキルを充実させる必要がある。
東西南北中央と大陸ごとに手に入れられるアイテムには特色が出る。
共通アイテムも存在するけど、南だけとか、北や東だけとかそういうアイテムも存在するんだよ。
それに中央大陸のダンジョンを攻略するとなれば、一か所でやれることは限界がある。
アミナの言う冒険者からのルートだと効率が悪い。
「絶対?」
「絶対とまでは言わないけど、よほどのことがなければ行くつもり。幸い、試験さえ突破すれば入れるみたいだし。お金もこのままいけば稼げそうだしね」
学校に不都合があるとしたら、アミナやデントさんが言っていた〝貴族〟関連のイベントくらいか。
貴族関連のクエストは基本的に報酬は美味しいが、手間がかかるクエストが多い上に、貴族には派閥があり、一つの派閥のクエストを受け取るとその派閥に属した扱いになる。
そうなると他の派閥の人との関わり合いが非常に面倒になって、嫌がらせや決闘騒ぎといったバッドイベントが発生する確率が上がる。
その手間暇をかけてまで、貴族からのクエストを受けて貴族との交流を深めるメリットは正直ない。
「大丈夫なの?リベルタはわからないかもしれないけど、貴族って私たち平民を見下してるのよ?悪い貴族だと、少し無礼を働いただけで勝てない決闘で無理やり奴隷に落としたりするって話も聞いたこともあるわよ」
「僕も、知り合いのおじさんがひどい目にあったって言ってたし、今回の王様の御触れって王様と宰相様が貴族の反対を押し切って無理やり決めたから貴族からの評判も悪いって」
一部貴族にはネームドユニットと呼ばれる、所謂ユニークスキルを持っている人も存在するけど、強いけど仲間にするメリットはプレイヤーのキャラ愛くらいしかない。
俺も推しがいると言えばいるけど、絶対に仲間にしたいかと聞かれれば、無理して仲間に入れる必要はないかなと思っている。
ネルやアミナは学校に入学することに反対している。
「心配してくれてありがとうな。でも、やりたいことのためならそこら辺は何とかしないといけないからな」
それはわかる。
だけど、じゃぁ止めますとはならない。
「それに貴族だって、全員悪い人ばかりっていうわけじゃないだろ?この国の王様って民思いな人だって聞いてるし、その王様の発案に全員反対っていうわけでもないだろ。なんとかなるって」
「そうかもしれないけど」
「うーん、ネル。このまま行くとリベルタ君絶対に学校に入っちゃうよ」
楽観的と言えばそれまで、見落としも絶対にある。
だけど、そのデメリットと向き合ってでもやらねばならないことがある。
俺を挟んで、ネルとアミナがうーんと唸りあって悩みだしてしまった。
「すぐに入るってわけじゃないからな。どっちにしろ今のままじゃ試験も突破できないだろうし、もっと成長してからの話だよ」
「そうよね」
「うん、そうだね」
今の強さじゃだめだと言ったけど、ゲーム時代の試験内容であれば正直現状のレベルでも余裕で入学できる。
なにせゲーム序盤でやるような試験だ。
初心者でも簡単に攻略できるようになっている。
だけど、それはあくまで何にも考えずにストーリーを進めた場合だ。
色々と攻略するにあたって特典を確保しながら進むのであればやれることは山ほどある。
準備期間としてまだまだ時間に余裕があるのならそれをフルに活用せねば。
「ほら、明日も早い。いい加減に寝よう」
「そうね、私も少し眠くなったし寝るわ」
「僕も、なんか眠くなってきた」
明日は明日のやるべきことをと俺は目をつむり、迫ってきた眠気に身を任せてそのまま寝るのであった。
楽しんでいただけましたでしょうか?
楽しんでいただけたのなら幸いです。
そして誤字の指摘ありがとうございます。




