17 立体農地
一周年への温かい言葉ありがとうございます!
最初に目標していた連続投稿1年という課題も無事達成できました!!
これも皆様からの暖かい応援のおかげだと思っております。
年末年始も投稿いたしますので、ぜひとも本作をお楽しみください!
また、コミック連載がピッコマ様とニコニコ様でもはじまりました!
そちらのアプリをお持ちの方はぜひぜひ!!
「村もだいぶ賑やかになったよなぁ」
「そうですわね」
「活気があるのはいいことです」
山崩しを実行したことによって急速に、村の域を脱し始めている開拓地だが、立派な城壁はできているが、まだ中身ができていない。
着々と進む地下下水道施設を見つめている今日は、エスメラルダとクローディアと一緒に現場視察を行っている。
城壁と一緒に砦の方も作って、さらにコツコツと下水道とかインフラの方に優先して力を入れているからこそ、街づくりまで着手できていないというのもある。
しかし、その間にも人は増えている。
開拓地で初の子供が生まれたというのもあるが、ゲンジロウたちの一族とエンターテイナーたちの家族が合流したということもある。
追加で仮設住宅を建設して収容したが、ざっと見ても二百人を超える人がこの開拓村に集まっていて、そろそろ食料の買い出しだけでこの村人を養うのは厳しいと言わざるを得なくなってきた。
この後にドワーフたちの受け入れも待っているから、さらに食料が必要になってくる。
資金にはまだまだ余裕はあるが、やはりそろそろ自給自足の準備をすべきか。
「エスメラルダ、戸籍管理のほうは大丈夫そう?」
「ええ、そちらに関してはジンクさんと一緒にしっかりと管理しているので問題ありませんわ」
名前を呼び捨てすることに、皆は驚くかと思ったが意外とすんなりと受け入れるようで、自然と定着した。
「クローディア、村人の体調不良とか怪我の方は大丈夫?」
「ええ、あらかじめ医療関連の人員を配置してくれているので問題は起きていませんね」
なのだが、これを機に自分も呼び捨てにしてくれといってきた人物もいたわけだ。
それが、クローディアということだ。
先日のやり取り以降俺との関係に関して思うことがあったのか、敬称と敬語を外してくれと言ってきて、普通に仲間内で話すような気安さで会話するようになった。
ということで、こうやって自分より年上の女性たちを呼び捨てにするという環境が出来上がってしまった。
「そこに関してはジンクさんに感謝だな。まさか薬屋さんまで引っ張ってきてくれるとは思わなかった」
「それは大きいですね、薬学の知識があるかないかで村での病気に対する対応が変わりますから」
「ですよねぇ」
「そのことも踏まえて、お父様に報告したら目頭を押さえて唸っておりましたわ」
「それに関しては、こんな立派な城壁を作ったからだと思いますが」
なぜこの2人と行動しているかといえば、単純に王都の方に出向いてもらった際の公爵閣下とのやり取りの内容を聞いているのと、前はネル、アミナ、イングリットと一緒に行動したから、2人とも一緒に行動した方がいいかなぁと気を回した結果だ。
「大丈夫かなぁ、次報告するときは山を削っているって言わないとダメだよね?公爵閣下胃痛とか頭痛で寝込まない?」
会話内容には色気の欠片もないが、俺と一緒にいられるだけでもいいという感じが二人から伝わってきて心地よく感じる。
「言わないといけませんね。まぁ、聞いた結果どうなるかはわかりませんが」
「山を削り平地を確保するなんて誰が思いつきますの」
「俺です」
流石にまだ、山を削り切ってはいないが、それでも開拓地から見える最初の景色とは変わってしまっている。
特に山頂部は、最初は尖っていたはずなのに今は台形状に変わってしまって、さらに今もなお山からブロックゴーレムが送り続けられている。
「リベルタ以外にこんなことを思いつく人がいるか、私はパッと思いつきませんが、エスメラルダさんはどうです?」
「私も同意見ですわ。貴族の中でそんなことを言い出したら頭がおかしいと失笑されるのは火を見るより明らかですわ」
「それを実行できるのはリベルタだけですね」
「ええ、リベルタだから私たちも納得できるのでは?」
「違いありません」
その光景を俺だからと納得できる彼女たちの会話を聞きつつ、俺は工事現場を見る。
そこには最初にこの土地を開拓した時よりも多くの人がいる。
ここまで人が多いとさすがに市役所みたいに戸籍を管理する必要が出てくる。
しっかりと住民を把握するために、戸籍を作り書類化し管理するようにはしている。
商店街の人たちをスカウトして本当に良かったよ。
さらに貴族として領地経営の勉強をしていたエスメラルダの知識も大いに役立っている。
今は戦闘員と兼任で文官仕事を振り分けているが、どこかに諸葛孔明みたいな人材がいればその人に全振りしてこっちももっと自由に動けるのだが、思い当たるネームドキャラとのエンカウントはなかなかできないし、俺が原作をかき乱したこの世界で原作通りの場所にいてくれるとは限らない。
人が増えれば、相応のトラブルも発生するし、衛生環境の管理も難しくなる。
そっち方面の人材確保もしっかりと考えないといけない時期が来たか。
「・・・・・人手が増えたのは良いけど、今度は幹部級の人が足りなくなってきたなぁ」
「そうですね。しかし、そういう人材は大半がどこかに仕えている人ですよ」
「仮に在野でそういう人がいたとしても、信用できるかは別ですわよ」
「良さげな人がいてもそういった知識を持っているからと言って迂闊に身内に入れるわけにいかない現状が嘆かわしい。ああ、早く学校作って孤児を集めたい」
しかし、簡単に人を引き入れることができるかといえばできないのが現状だ。
アジダハーカ関連で目立つ行動をしすぎた所為で貴族や商人など国内の連中や他国からの密偵というか、スパイを気にしないといけない立場になって、人集めには慎重になっている。
実際、辺境まで来て売り込みに来ている人もいるのだがその大半が貴族やら、豪商やらと後ろで繋がっている人ばかりだ。
今までは身内関連の人集めでどうにかなっていたが、それでも信用という点はグレー寄りのホワイトだ。
できるだけ厚遇して裏切らないようにしたり、交流を深めて信頼関係を築くようにはしているがそれでも万全とは程遠い。
ゲーム時代の信頼度システムがいかに有能かというのが実感できるし、契約で縛りすぎるのも良くないから本当に人間関係というのは難しい。
「先行投資というわけですわね。一から教育し、信頼できる人材を育てる。幼子の頃より大切に育てれば忠節も育つ、それができている人は少ないですけど」
「私の知り合いの孤児院に声をかければ集めること自体はそう難しくはないですね。どこの孤児院も経営は芳しくないですし。ですが、この村はまだ子供を教育する環境まで用意できているわけではありませんね」
となれば、外部に信頼できる人材がいないのなら信頼できる人材を育てればいいという発想に帰結するのは当然の流れだろう。
「今はどの分野も人手不足。教えている余裕がないし農地も作ってない。環境も整っていない状況で育成するのは難しいからなぁ。せめて自給自足ができて必要最低限でも育成環境を整えてからかなぁ」
ネームドにこだわる必要はない。
モブキャラでもしっかりと育成すれば、最強になれるのがFBOの醍醐味だ。
今はゲーム時代のネームドキャラたちに対する懐かしいという気持ちと憧れという感情には蓋をして、信頼第一で動くべきだ。
「下水道施設の完成が約二か月後。魔道具の制作と設置、さらに細かい作業をできる人が少ないのが工事の進捗を遅らせていますわ」
「おまけに防衛のための城壁と各所砦の建設を並行でやっているからさらに時間がかかる。それが終わってようやく町を作るための地盤が出来て、そこから区画整備をして、生活に必要な設備を作って・・・・・学び舎を作るのは速くても来年、教師を集めることを考えればもっとかかるか」
「やはり、現時点では時間がかかることは避けられませんか」
「それでも十分、いえ、異常と言えるほどの発展速度ですわ」
指折りで数えれば数えるほどに課題は多い。
主に人材問題なんだけど。
「目下の問題は農業ですわ。人を集めるのはいいですけど、いつまでもリベルタの財で民を養い続けるのは健全ではありませんわ。自給自足には絶対に食料と水が必要です。特に水源の確保は必須ですよ?水が無ければ農業はできませんわ」
信頼できる人材を育てるためには信頼できる人材が必要。
「この開拓地から最も近い川でもあちらの山を三つほど超えた先ですね。リベルタそちらに関して何か対策はあるのですか?」
鶏が先か卵が先かという質問をされている気分になりつつ、エスメラルダが今後の食料問題を指摘してくるが。
「ああ、それに関しては農地ごとに水源を作るから問題ないよ」
その解決策はすでにある。
この辺境地には井戸を掘れる程度には地下水がある。
しかし、近くに川は存在しない。
クローディアが示した通り、山があるから自然と山から流れ出る水が川になるが、その川はこの辺境の土地で限られた平地部分には流れ込んでこない。
山を三つほど挟んだ山岳地から、俺が貰っていない王国の領地の方に流れ込んでいるのだ。
それもあって、この土地は開拓に不向きであると言われ誰も開拓をしてこなかった。
水があるところに人は文明を築くというわけだ。
逆を返せば水問題さえどうにかなればいいということになる。
「なるほど、水源を作れるのですね。なら問題は解決ですわ」
「驚かないの?俺、割と非常識なことを言っているけど」
普通に考えて、自然からは賄えない水源を自力で用意できるというのは突拍子の無いことを言っている自覚はある。
さらに農地ごとと変な言葉も使っているはずなのだが、『なら大丈夫か』と言わんばかりにエスメラルダもクローディアも安心している。
「今さらですね。リベルタの言葉に毎度驚いていては気が持ちません」
「そうですわね。リベルタの行動は、リベルタだからと思うことにしておりますわ」
「あれぇ?」
信頼されていると考えればいいことかもしれないが、少し対応が雑なのでは?
俺、好かれているんだよね?
笑顔で俺の行動が肯定されてるはずなのに、どこか寂しいと思ってしまう。
「それで、どのような方法で農地を作るのですか?」
「あ、はい、作るのは立体農地だ」
そんな寂しさを払しょくするために、俺は持ち歩いている設計図を鞄から取り出して彼女たちに見えるように広げる。
「これが、農地ですか」
「建物ですわ」
見た目は完全に立体駐車場。
「一階に収穫した作物を保管する施設とか、上から流れてくる水を処理する施設とか、出荷用の馬車が乗り入れ出来る配送所を設けられるようにした便利な農地なんですよ!!」
ワンフロアを1ヘクタールに設定し、上に重ねて農地を増やすことを実現したファンタジー農地だ。
「「・・・・・」」
もう驚かないと言っていた2人もさすがにこれは驚いたようで、ジッと設計図を真剣な目で見る。
「農地の水源は、屋上に設置したモチダンジョンから供給する水ですよ。他にも各天井に太陽光と同じ光を放つことができる太陽石を配置して日光を確保、さらに各層にサーモコントロールスキルを使えるようにした魔道具とエアクリーンを使えるようにした魔道具を設置することで温度管理と空調管理ができるようにします。耕作地は、それ専用のゴーレムを乗り入れできるようにするので問題なく管理できる!」
建設資材に関しては現在進行形で送り込まれているブロックゴーレムを使用。
魔道具に関しては、闇さんに頼んで既に五棟分は確保している。
美味しい野菜とお肉を約束しているから、嬉々として作ってくれたよ。
「これを応用して養鶏場と養豚場、あとは乳牛と肉牛の牧畜も始めたいねぇ。あ、酒造り用のブドウ畑とかも作らないと」
まだまだやりたいことがあるって本当に楽しいな!!




