6 スポット封印
カウントダウン!!ついについに!書籍発売まであと1日!
この話を投稿して一年もたたずに書籍化できたこと皆様に感謝します!!!
買っていただければ嬉しい限り!!
描きおろしの方も気合を入れて楽しんでいただけるようにしました!!
明日の発売、皆様のご感想が怖いと思いつつも楽しみです!!
是非とも本作書籍をよろしくお願いいたします!
「うーん、こっちですの?」
「方角はあっていると思いますが」
「いいえ、こっちね!」
ダウジングロッドを3人で持ってモンスターのリポップ地点の捜索を始めて十分ほど。
FBOではリポップ地点の地中深くにはモンスターをリポップさせるためのある種の魔法陣が埋もれている。
これは邪神が流星雨の隕石のように世界中に振りまいた特殊な魔石が原因だとFBOの物語中で語られている。
そしてその魔石から魔法陣が生成され、土地に溶け込んでいるというのをかつて神殿の神官であるネームドNPCが語っていた。
その魔力の発生地点をダウジングで探して地下深くの魔法陣の真上にこの要石を打ち込めば、その一帯のモンスターリポップが封じられるというわけだ。
ただまぁ、FBOの時もそうだったけどダウジングスキルを持たせた特化型のキャラを用意しても、リポップポイントの特定にはそこそこ時間がかかるものだ。
スキルも何もないキャラでやればなおさらだ。
「ここね!」
「見事にダウジングロッドが反応してますね」
「ええ、私たちではここまで綺麗に反応しませんわ」
本来であればもっと苦労するはずなんだよ。
笑顔で「見て見て」と手元をブレさせずに振り返るネルの元に駆けよると、見事にど真ん中を引き当てている反応だった。
「さすがはネル!」
「えへへへ」
だけど、うちには豪運の狐娘がいらっしゃるのでね。
こういうことになるとは思っていたよ。
だから俺はダウジングロッドを持たなかったんだ。
俺が持っても見つかる未来が見えなかったな!うん、ちょっと目にゴミが入ったよ!
「それで、この地点にこれを突き立てればいいの?」
「そうそう」
ネルの頭を撫でながら褒めて、その次にやるのは荷車で引いていた要石だ。
「爆発しない?」
「アースクラッシャーじゃないから大丈夫」
見た目はアースクラッシャーとそっくり。何せ地面の中に打ち込まないといけないのだからこの形状に落ち着くわけで。
なかなかの重さのある魔道具をクラス8のステータスを駆使してせっせと地面に設置。
と言っても、地面と垂直になるように立たせるだけだ。
「本当に?」
「さすがにここで爆発兵器は持ってこないって」
設置後は魔力を流し充填し、スイッチを押せば先端のドリルが回って地中の魔法陣に向かってそのまま突き刺さっていく。
アジダハーカ戦でその破壊力を見せているから、それと同じ形状の魔道具はネルを不安にさせてしまったのか。
「リベルタ、ここも開拓するのですよね?地面に埋めてしまったら開拓の際に掘り起こしてしまう心配があるのでは?」
「この魔道具は深度1000メートル前後まで掘り進めますんで、よほどのことがない限りは掘り起こされませんよ」
「そんなに深くまで…」
「標的となるモンスターのリポップの発生源がそれくらいの深さなんですよ」
轟音とともに地面に潜っていく要石の魔道具を見送って、掘り進めている穴のすぐそばに目印の旗を立てる。
「あとは数日様子を見て、ここにさっきのハンターモンキーが出ていなければ成功ですね」
「すぐにはわからないのですね」
こいつの効果はすぐには確認できない。
要石が効果を発揮していれば問題なくモンスターを生み出さない土地になっているからおのずとモンスターの数は減る。
その様子を短くて数日、長ければ一か月単位でチェックするしかない。
「イングリット、ひとまず地図にマーキングしておいて」
「かしこまりました」
この一発でモンスターが発生しない土地が確保できる。
「リベルタ君。次はどこに向うの?」
「このまま北上していく。できれば山の方の通路をできるだけ早く確保したいからな」
ただ、この土地は森を抜けた先は山岳地帯になっているから、まともな平地はない。
だけど、平地を確保する方法はすでに闇さんに発注済みで現在進行形で開発が進んでいる。
「その道中でトレントを見つけられたらいいんだけどな」
「前に言っていた農業に使うのよね?」
「そうそう、品種改良したトレントはいいんだぞ。農地に重要な極上の腐葉土を作ってくれるからな」
そっちは追々でいい。
今はひとまずモンスターのリポップ地点を潰すことに専念する。
荷車に乗せている要石は残り3つ。
今日中にあと3つはリポップ地点を潰したい。
「他にも、果実を実らせるタイプのトレントにしっかりと栄養を与えれば高品質の果物を作ってくれるし、水中に生えることのできるトレントは水質管理もしてくれるからな」
その道中でトレントも発見したいところだ。
精霊界のダンジョンでテイムしてもいいんだけど、ダンジョンにいるトレントは全部同種で汎用性はあるけどその土地に適した形に進化していない。
この土地に生息しているトレントはこの土地の土に適応しているからその後の品種改良がやり易いんだ。
手間がかからないという点でできればこの土地にいるトレントが欲しい。
「そのためにテイムアイテムも積み込んでいるんだ。ほかにも牛系のモンスターと、豚系、鶏もいたらいいよな」
「普通の家畜じゃなくてモンスターを家畜にしようとしているあたりがリベルタらしいわね」
「そうですね。タフで栄養価も高く、繁殖もさせやすいとは聞いていますが、普通に考えたらモンスターで牧場をやろうとは思いません…」
畑を作るにしても栄養のある土にしないと作物は育たない。
水源を確保しないとまともに農業もできない。
「一番驚きましたのは、角竜牧場ですわ。本当に実現させるおつもりですの?」
まず必要な作物の肥料なのだが、トレントの腐葉土と動物系モンスターのフンを混ぜて発酵させた有機肥料がFBO農家では最強の肥料だ。
野菜や小麦、米といった作物を育て、高品質と評価を受け、それで作った付与料理の効果はとてつもない。
「草食系の竜でテイムも比較的しやすく、角竜が住み着くだけで他のモンスターは近寄ってこない上に運搬車を引っ張ってくれる労働力になる。さらに排泄物は竜のモノというだけあって含有魔力はとてつもなく、それと上位種のトレントが落とす葉でできた腐葉土と混ぜ込んだ有機肥料は最強な物ができる。農家をやるのなら飼わないという選択肢がない」
その中で最強の肥料の原料となるのが竜種だ。
基本は肉食の竜種ではあるが、中には草食系の竜種もしっかりと存在する。
それが角竜。クラスは7と少し高めであり、見た目は完全にトリケラトプスだ。
とにかく図体がでかい。四足歩行竜種の特徴なのが額に生える鋭い三本の角だ。
突進されると、かなり危険な攻撃力を持っている竜種であるし魔法も使うモンスターだが、その魔法スキルが農業に有用だとツッコミを貰うくらいに有能なのだ。
おまけに角竜はテイムすると角が生え変わるようになり、定期的に角がドロップするようになる。
さらに卵生で生殖繁殖もできるようになる。
竜で牧場を開くという非常識な発想かもしれないが、将来的には飛竜とかも育てたいと考えている。
「なるほど、そこまですごいのですか」
「はい、すごいのです」
クローディアは感心しているが、他にも色々と有能なモンスターは多い。
特に農業と掛け合わせると相性のいいモンスターは数えればキリがない。
そんなことを話していると、「ブーン」と羽音が聞こえる。
「この羽音は…」
「蜂ですね」
「どっちだ?」
このエリアにいる蜂種は二種だ。
「スイートハニーであることを切に願うぞ」
まずは有益なタイプのスイートハニー。
蜂蜜が非常に有用なモンスターで、女王バチをテイムできれば養蜂としても重宝するソフトボールサイズの蜂型モンスターだ。
「でも、リベルタが教えてくれていた羽音とは違って大きいわよ」
「…はずれかぁ」
そしてもう一種は、スズメバチを彷彿とさせるオレンジがかった黄色と黒の獰猛な肉食蜂。
ネルの耳がピクリと反応して音を聞き分けると、この進路上にいるとのこと。
スイートハニーの羽音は小さく、そして柔らかい羽音だ。
俺もなんとなく、この獰猛な羽音を聞いて後者の方だとは思っていた。
「ソーンビーか」
そして慎重に進んだ先にいるのは、全長50センチほどの巨大な蜂。
トゲトゲした見た目に、獰猛な牙。
3匹で行動する、その蜂は「カチカチ」と歯を打ち鳴らして獲物を求めて飛び回っている。
「倒すぞ。あの数のソーンビーが徘徊しているってことは、近くに巣を作っている女王蜂がいるはず」
「歌う?」
「ああ、頼む。クラス4のモンスターだが棘には毒があるうえに、飛ばしてくるから注意してくれ」
「先制攻撃をしますわ」
鎖鎌の分銅を回して遠心力を確保し、そして準備が整ったところでアミナが歌う前に氷のブーメランが木々の隙間を通ってソーンビーを貫く。
レベル差を考えれば当然即死。
「さてさて、放置された未開の地。どれだけ溜まってるか」
だが、蟲系のモンスターの厄介なところは、他のモンスターよりもリポップ回転が早いのと、こうやっていろいろなモンスターと戦える空間だと女王が生まれやすいという特徴があることだ。
女王が生まれると、生殖繁殖を始めるための巣を作る。
周囲に敵対しているモンスターがいるから間引きしあうような構図が作られるが、数という面で有利になりやすいのが蟲系のモンスターの特徴。
こういう系統のモンスターは開拓地の近くにいたら危険だ。
できるだけ根こそぎ排除しておいた方がいい。
「来るわ!すっごい数よ!」
アミナの歌に惹き寄せられ、すごい量の羽音が周囲に響く。
そして現れる光景は蟲が嫌いな人にとっては悪夢のようだ。
「蟲系でしたらこの技ですわね」
ギラギラと赤く発光している複眼を携え、キーキーと喚き散らし、敵はここにいると周囲の仲間に知らせ、それによって集結し、木々の隙間を器用に飛んで迫りくるソーンビーの大軍。
だが、蟲という生き物の弱点と言えばいいだろうか。
「ブリザードウェーブですわ!」
猛吹雪を真正面から受け止めて、まともに飛べる個体はいなかった。
もちろんレベル差もあるし、それ専用にスキル構成しているのもある。
この土地のモンスターだから季節的な寒さは耐えられたかもしれない。
だが、暖かい空間から一気に極低温の冷気に曝されたら寒暖差で耐えられるわけがない。
寒さに凍り付き、次々に墜落していくソーンビー。
そして、そんな凍りついて丸まるように地面に転がるやつらめがけて、俺、ネル、クローディアが飛び出し、各々武器を振るう。
サクサクと倒していく簡単なお仕事。
こういう戦闘ばかりなら楽でいいんだけど、作業感は抜けない。
「第二波くるわ!」
「結構溜まってそうだな。さてさて何波まであるか」
だけど、数が多いモンスター相手なら効率重視で倒していった方が精神衛生上はいいか。
「ほいっと!」
「ええい!」
「ハアアアアア!」
アミナの歌に引き寄せられたソーンビーを前衛で受け止め、リキャストタイムが終わったらエスメラルダ嬢の魔法で氷漬け。
その繰り返しをしていれば徐々に数は減り。
数が減ればこっちも迎撃ではなく、進撃に変わる。
着実に進んでいき、どんどんソーンビーの巣に近づいていくとリポップ数も増え、相手の迎撃も激しくなる。
だが、関係ないと進撃すると…
「キィイイイイイイイ!!!」
やたらかん高い叫びを響かせるソーンビークイーンに出くわす。
「なかなかでかい巣を作ったなぁ」
巣を守ろうと兵隊蜂を率いて巣から出てきた女王は大きな体で威嚇行動するが、俺はそれよりも土の中に作った巣の解体をどうするかと、事後処理の方を悩む。
「大変なの?」
「うん、大変。こういう地形を変えちゃう系のモンスターはモンスターを倒してもその後の巣が残っちゃうからねぇ。ぶっちゃけ開拓するときは邪魔」
こういうのがいるから開拓って時間がかかるんだよ。
まぁ、地面に作るタイプの巣だし、ロードローラーゴーレムで溶かして中身のモンスターたちも生き埋めにすればすぐに片付くけど。
そんなのんびりと会話をしながら、まずはこの蜂どもを打倒するのであった。




