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第八十八話 すべてが良い方向に向かい始める

 その後、マクシノール殿下の体は急速に回復していった。


 次の休日に、わたしが王宮のマクシノール殿下のところに行った時は、もうほとんど良くなっていた。


 侍医は、


「わたしが予想できなかったほどの急速な回復ぶりです。マクシノール殿下の力の大きさを改めて認識しております」


 と言っていた。


 しかし、マクシノール殿下は、わたしに対し、


「侍医の尽力にはいつも感謝しています。さすが名医だと今回も思いました。でもあなたがわたしのことを愛していただいて、そのあなたに力をもらったことが、回復する為の大きな力の一つになっていったのだと思います。想定以上に急速な回復ができたのも、あなたからいただいた力のおかげによるところが大きいと思っています。改めて、あなたには感謝をしたいと思っています」


 と言ってくれた。


 恥ずかしいけれど、そう言われるとうれしい。


 わたしはもっとマクシノール殿下のことを愛していかなくては、と思った。




 わたしがマクシノール殿下に付き添い、マクシノール殿下の健康の回復を救けたということで、王室内でのわたしの評判は、良くなっていった。


 わがままで傲慢な態度を取るというイメージも、心の底からやさしい人というイメージにだんだん変わりつつあった。


 学校では、転生の記憶が戻る前までは、取り巻きの人たち以外のほとんどの人たちが、わたしに対して、わがままで傲慢だという悪いイメージを持っていた。


 転生の記憶が戻って、心を立て直してからも、同じクラスの人たちぐらいしか、評判は良くなかった。

 毎日接している同じクラスの人たちであれば、わたしの心の変化、イメージの変化はわかるのだと思う。


 しかし、そうでない人たちは、一旦イメージが固定化すると、それを変える機会に出会う機会は、なかなかないと言えるだろう。


 その為、同じクラスの人たち以外には、わたしの悪いイメージが固定化されたままになっていたのだと思う。


 しかし、今は、マクシノール殿下の健康の回復を救けたということで、その固定されたイメージが壊れ、心の底からやさしいというイメージが強くなり、学校全体での評判が良くなってきている。


 昔は、会う度にお互い嫌味を言い合っていたロデナーヌさんも、何も言わなくなった。


 わたしとしては、マクシノール殿下を救ったのは、侍医の治療とマクシノール殿下自身の力によるもので、わたしの力はたいしたことはないと思っていた。


 しかし、マクシノール殿下自身が。

「クラデンティーヌさんに力をもらったことが、回復する為の大きな力の一つになっていったのです」


 と言っていた。


 わたしにもその言葉は言ってくれていた。


 その時も恥ずかしい気持ちになっていたのだけれど、他の人々にも言っているということになると、もっと恥ずかしい気持ちが湧いてくる。


 しかし、わたしは思い直していく。


 マクシノール殿下がそういう話をするということは、以前とは違い、わたしのことを大切に思ってくれるようになっているということが言えると思う。。


 わたしのことを買いかぶっている気はする。


 でも、その想いはきちんと受け取っていきたいと思うようになってきた。




 コルヴィシャルデ公爵家の方も、公爵家内、公爵家領内とも落ち着きを取り戻してきた。


 最初はわたしの気まぐれだと思う人の多かった税に対する姿勢も、どうやらきちんと認識されるようになってきたようだ。


 公爵家内、公爵家領内でのわたしへの評価も、地道に向上してきていた。


 このまま進んでいけば、ゲームのようなわたしへの反乱が派生することはないと思われる。


 しかし、それだけでは、現状を維持するだけになってしまう。


「改革プロジェクトチーム」で検討している様々な政策を実行に移し、経済を中心とした領内の活性化を図っていかなければならない。


 チームのメンバーは、情熱を持って取り組んでいた。


 わたしもメンバーの報告、意見を聞き、必要な指示を与えて、プロジェクトを推進していた。


「面白い」


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