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第八十六話 褒められ続けるわたし

 マクシノール殿下が回復したのは、自らの力がなければできなかったことだと思う。


 しかし、王妃殿下は、


「あなたの力なくして、マクシノールは回復することはなかったと思っています」


 と言うし、国王陛下も、


「あなたがいるから、マクシノールはこうしてまた元気になってきているのだ」


 と言う。


 そして、マクシノール殿下も、


「わたしはあなたに力をもらいました。それがなければ、ここまで回復はしていません。感謝の気持ちで一杯です。ありがとうございます。わたしはあなたが婚約者で本当によかったと思っています。これからは二人で一緒に人生を歩んでいきましょう」


 と言ってくれた。


 それを聞いた国王陛下と王妃殿下は、


「マクシノールをよろしくお願いする」


「マクシノールをよろしくお願いします」


 と言って、わたしに頭を下げる。


 わたしはだんだん困惑してきた。


 まだまだわたしは、自分磨きをしているところ。


 この三人は、わたしのことを買いかぶっている気がする。


 わたしは、


「皆様に、わたしのことを褒めていただくのは、光栄なことだと思っております。しかし。わたしは、マクシノール殿下の回復を一生懸命祈ってはおりましたが、もともとは付き添いをするということが本来の役目でございます。わたしは、そのことを、一生懸命行っていただけでございます。侍医の適切な治療と、国王陛下と王妃殿下のマクシノール殿下の回復を強く願う気持ち、そして、マクシノール殿下のお持ちになっているお力が発揮されたからこそ、マクシノール殿下は、生命の危機に陥る一歩手前の状態から、ここまで回復をして来たのだと思っております。わたしとしては、侍医の優秀さと、お二人の強い願い、そして、マクシノール殿下の能力のすごさにこそ、褒め称えるべきことだと思っております」


 と言った。


 わたしの話をじっと聞いていた三人。


 わたしの話が終わると、王妃殿下は、


「あなたは本当に素敵な方になってきたと思います、昔のあなただったら、マクシノールを助けるということ自体ができなかったと思いますが。もしできたとしても、自分の功績が一番であることをわたしたちの前で、自慢とは言わないまでも、誇っていたと思いますし、侍医の尽力も、わたしたちの強い願いも、マクシノール自身の力も、考慮することはなかったと思います。もちろん、わたしたちの強い願いは、侍医やマクシノール自身の力に比べれば、大きい力ではなかったとと思います。でも、そういうところにも、きちんと気を配ることができるのは、たいしたものだと思っています。わたしたちのことはともかく、侍医とマクシノールのことを考慮することができず、自分の功績を誇るような人のままであれば。マクシノールの婚約者としてはふさわしくありません。いくら政略結婚だといえども、わがままで傲慢なままで、成長が見込まれないのであれば、考え直すことはありえたと思います。家と家の結びつきも大切ですが、マクシノールが苦しんでまで、この結婚にこだわりたくはないと思っているので。しかし、あなたは、そこまで細かい配慮をすることができるほど成長しています。こういうところが、あなたのことを素敵だと思うところですし、マクシノールの婚約者としてふさわしいと思っているところです。あなたは、よくこの短い期間で、マクシノールの婚約者にふさわしいところまで成長したと思っております。今のあなたであれば、マクシノールとともに幸せになっていけるでしょう」


 と言った。


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