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第五十話 方針転換したことを説明するわたし

 こんなにていねいな言葉を使い、柔らかい調子で入ってくるとは思わなかったのだろう。


 それにしても、あいさつに対して、何も返してこないとは……。


 わたしが、普段、いかに内心みんなに嫌がられているか、ということだろう。


 しかし、それを気にしている場合ではない。


「今日。ここに集まってもらったのは、政策の方針転換をする為です。わたしのことをよく聞いてください」


 わたしは一回言葉を切った後、心を整えて、


「今までわたしは、当主に就任した後、最初は財政赤字を減らす為、増税をしてきましたが、いつも間にか、それは度を越すものになり、臨時税を課すようになってしまいました。わたしはそれを改め、税率はもとに戻し、臨時税の取り立ても止めることにします。したがって、これからのわが公爵家は、もとの税率で、やりくりをしていくことになります。まずはこの点を理解してください」


 と言った。


 出席者たちは、唖然としている。


 やがて、出席者の一人が、


「クラデンティーヌ様、ご無礼をお許しください。クラシディネと申します。発言をしてもよろしいでしょうか?」


 とおそるおそる申し出てくる。


 男性で、お父様が推薦している三人の内の一人、クラシディネさんだ、


 この人も、今まで、わたしによって酷い目にあわされた人の一人なのだろう。


 わたしを前にして緊張をしているのがよくわかる。


「どうぞ遠慮なく発言をしてください」


 わたしがそう言うと、クラシディネさんは、


「今日クラデンティーヌ様が、そのようなことを急に言い出すのは、信じられない気持ち一杯です。今ままでは、領民のことなど、全く考えたことがないと思っておりましたので。もしかすると、今日クラデンティーヌ様がおっしゃられたことに賛成したら、反対勢力だと思われて、そのものたちを処分されるおつもりではないでしょうか? そうであれば、ここでクラデンティーヌ様のご意見に賛成すると言うことはできません」


 と言った後、


「もしクラデンティーヌ様の怒りに触れましたら、申し訳ありません」


 と頭を下げた。


 他の出席者たちも同じ意見のようだ。


 わたしの日頃の振る舞いが。家臣たちをここまで萎縮させていたのだ。


 これが逆に、反乱へのエネルギーに転換していったのも理解できる気がする。


「頭を上げてください」


 とわたしは言った後、続けて、


「あなたのいうことはもっともだと思います。今までのわたしは、あなたたちに対して酷い仕打ちをしてきたように思います。そのことは、反省しているところです。しかし、今のわたしは違います。コルヴィシャルデ公爵家を発展させ、領民の為になる政治をしようと心に決めたのです。そのまずは第一段階として、税のことを申しました。これだけでなく、今まで購入してきたドレスや宝石類も、必要なもの以外は売却していきます。でもそれだけではもちろん足りません。これから改革の為のプロジェクトチームを立ち上げようと思っています。ここで、コルヴィシャルデ公爵家の立て直し、そして発展する為の案をまとめ、そして実行していくのです。わたしはこのような形で進めていきたいと思っています」


 とわたしは力強く言った。


 出席者はその後、みな黙り込んでしまった。


 わたしが言ったことは理解されたのだろうか?


 単なる絵空事だとしか追われていないのだろうか?


 そう思っていると、出席者のまた別の女性は、


「クラデンティーヌ様、サロレデシアと申します。ご無礼とは申しますが、おっしゃること自体は理解をいたしました。しかし、今までのクラデンティーヌ様は、今までは気まぐれで政策を動かしてきたようにわたしは思っておりま。今はそう言っていても、またもとに戻ってしまうのではないか、と言う怖れをここにいるものたちは全員持っているのでございます」


 と言った。


「面白い」


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