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第四十八話 お父様のありがたい話

 お父様はやさしい口調ではあったものの、わたしが期待通りの政治を行うことができなかったことを残念に思っているという話をした。


「ご期待に沿えず、申し訳ありません」


「でもこうして心を入れ替えてくれて、これからは善政をこころがけてくれるようだ。わたしはうれしい。お前の母も、きっと喜んでくれるだろう」


 そう言うとお父様は涙を流し始めた。


「お父様、そうおっしゃってくれてありがとうございます」


 お母様のことを思い出す。


 お母様は病弱な人だった。


 でもわたしのことをかわいがってくれた。


 もともとわがままな性格だったわたしなのだけれど、お母様が生きていた頃はまだ抑えられていた。


 本格的にわがままさがどんどん酷くなっていったのは、お母様がこの世を去ってからの気がする。


 転生の記憶が戻る前のこととは言っても、今のわたしはクラデンティーヌという人間そのものなのだ。


 申し訳ない気がする。


 わたしの目からも涙が流れてきた。


 しばらくの間、涙を流し合う二人。


 その後、わたしは、明日の朝の会議についての話をお父様にした。


 お父様は、


「わたしはその路線で行くことに賛成したい」


 と言ってくれた。


「ありがとうございます」


「ただ、これだけは理解しておいた方はいい」


「といいますと?」


「お前は既に、公爵家の中の評判は良くない。そして、領民の反発もだんだん大きくなってきている。そのことは承知しているだろうな」


「はい。承知をしております」


「それならば話はしやすい。お前がそのような話をしても、人望はそう簡単に上がるものではない。それだけお前は憎まれることをすでにしているからだ、そういう周囲の理解のなさに、挫折をしてしまうかもしれない。でも、そうなってはだめだ。粘り強く理想を実現させる為に進んでいく必要がある。強い意志を持つ必要がある。そして、もう一つ。安易な妥協をするのもよくない。気品を持ち、理想に向かって進んでいく。このことが大切だ」


「『気品を持ち、粘り強く実現に向かって進んでいく必要がある』、この言葉を心に刻み付けていきたいと思います」


「お前は残念ながら一つの失敗をしてしまった。しかし、当主ともなると、失敗は大なり小なりつきものだ。お前は、失敗をしたことはもう反省していると思う。その失敗を、気品を持って乗り切ることだ。それができないと、お前は侮られてしまう。侮られてしまったら、部下はもう、お前に従わなくなってしまう。でもお前にならできる。気品をもって乗り切ることができる。わたしはそう信じている」


 お父様はそう言うと、疲れてきたようで、少しぐったりする。


「お父様、大丈夫でしょうか?」


 わたしは心配になってくる。


「大丈夫だ。とにかく、お前は心を入れ替えて、善政をしようとしている。政略結婚ということもあって、今はマクシノール殿下とそれほどの仲ではないかもしれない。でも、お前がこれから心を入れ替えていき、善政をする決意をしていくのであれば、きっと、マクシノール殿下は、お前と心を通じ合わせるようになり。うまくいくようになると思っている。そして、お前がマクシノール殿下と結婚し、幸せになることをわたしは強く願っている」


 お父様はそう言うと、また涙を流し始めた。


「ありがとうございます。お父様のご期待に沿えるよう、一生懸命努力していきます」


 わたしは力強く熱意を込めてそう言った。


「面白い」


「続きが気になる。続きを読みたい」


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