第二十四話 心が壊れていくわたし
わたしはもう一回夫婦関係を構築し直したいと思っていた。そのことをグレゴノール殿下に話をしたのだけれど……。
「それは無理だ。わたしはあなたのことも好きだが、オルリドさんも好きだ。別れることはできない」
「グレゴノール殿下は、わたしのものでもあるんです」
二人はそう言うと、再び抱きしめ合う。
そして、
「わたしはオルリドさんが好きだ」
「わたしもグレゴノール殿下が好きです」
と言って、唇と唇を近づけていく。
「グレゴノール殿下、この人から今すぐ離れてください!」
わたしの叫びも空しく、二人の唇と唇は重なり合う。
その瞬間、わたしの心は壊れ始めていった。
そして、涙がとめどなくこぼれてくる。
しかし、そんなわたしには構うことなく、二人はキスを続けていた。
いたたまれなくなったわたしは、
「わたしはグレゴノール殿下のことが好きで、愛していましたのに……」
と涙声でつぶやいた後、ドアの方へ向かっていく。
その間にわたしは、殿下が心変わりをして、
「わたしにはあなたしかいない!」
と声をかけてくれることを、ほんの少しではあるのだけれど、期待をした。
いや、結構期待をしていた。
わたしたちは、幼い頃からの付き合いだったのだから。
でも、グレゴノール殿下がわたしに声をかけることはなかった。
ドアを開ける前、最後の望みをかけて、グレゴノール殿下の方を振り返ったが、オルリドさんとキスをしたままだった。
幸せそうだった。
わたしは、もうこの二人の仲に割り込むことはできないと思った。
わたしは自分の部屋に戻ると、そのまま一晩中泣き伏した。
翌日以降は、なんとか公務はこなしたのだけれど、もうグレゴノール殿下と一緒に寝室ですごすことはできなくなった。
いや、そばにいることすら嫌になった。
しかし、グレゴノール殿下は、それをいいことに、ますますオルリドさんの方へ心を傾かせていく。
わたしたち夫婦の寝室で、わたしとではなく、オルリドさんと一夜を過ごすことも多くなっていく。
その結果、わたしは、心と体の両方が壊れてしまい、実家のキュヴィシャルデ公爵家で療養をすることになった。
でも、グレゴノール殿下はオルリドさんに夢中。
わたしが王宮を去る時も、特に言葉をかけてくれることはなかった。
それが、わたしの心に致命的な打撃を与えた。
キュヴィシャルデ公爵家に戻ると、両親は、わたしに同情してくれた。
しかし、王室に抗議をすることはできなかった。
それは、
「第二夫人の存在は認められていること」
「妃として迎えられた女性の地位は安定しているので、原則的には他の女性にその地位を取って代わられる心配はないこと」
の二点が取り決められているからだ。
第二夫人の存在が認められている為、わたしがいくら反対しようとも、つらく思ったとしても、グレゴノール殿下は気に入った女性を第二夫人にすることができる。
一方で、妃となった女性の地位は安定している為、第二夫人になった女性や、その他の女性も、原則的には、妃の地位につくことはできない。
こうして一種の別居状態になっても、わたしの妃としての地位は安泰ということになる。
グレゴノール殿下がわたしに酷い仕打ちをして、わたしの心が壊れても、第二夫人のことは認められているし、わたしの地位自体の変更はないので、王室、そしてグレゴノール殿下に抗議をすることはできない。
両親も落胆をしていたし、わたしもつらい思いで一杯だった。
わたしの病状は、その後、悪化する一方。
別居状態とはいっても、グレゴノール殿下のことをあきらめることができないわたしは、グレゴノール殿下がお見舞いに来ることを待ち望んでいた。
しかし、オルリドさんに夢中なグレゴノール殿下は、結局、一度も来ることはなかった。
そして、浮気を堂々とされてからわずか一か月の後、この世を去った。
「面白い」
「続きが気になる。続きを読みたい」
と思っていただきましたら、
下にあります☆☆☆☆☆から、作品への応援をお願いいたします。
面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に思っていただいた気持ちで、もちろん大丈夫です。
ブックマークもいただけるとうれしいです。
よろしくお願いいたします。




