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その92

 ミランさんをからかうのに堪能したのか、シアさんはまたラルフさんたちのいるテーブルへと戻っていった。


「ごめんねミランさん。な、撫でる?」


「は、はい! ししし、失礼します!」


 ミランさんはおっかなびっくりといった感じで、私の頭の上へ手を伸ばし、優しく撫で始める。


「ふふふ」


 ミランさんにこうされるのは初めてだ。なにかちょっと嬉しくなって、ついつい顔がにやけてしまう。


「かかかかか可愛いすぎる……、髪もサラサラ……。私もこんな可愛い子供欲しいなぁ……」


 子供って可愛く見えちゃうよね、特に私は背が小さめだし、尚更可愛く見えてしまうんだろう。

 可愛い可愛いと言われるのは嬉しいが、恥ずかしくもあるね。


「はー……、ずっとこうしていたい……。っと、すみません。ありがとうございました」


 私の頭から手を放すミランさん。

 かなり満足してくれたのか、凄くいい笑顔をしてくれている。嬉しいね。






「ミランさんは好きな人はいないの? 私みたいな、その、可愛い子? が欲しいなら結婚して作るしか……。子供作るとか言っちゃった……」


 軽く問いかけたつもりが、自然に子作りとか凄いことを言ってしまい、顔が赤くなってしまった。


「ふふ、可愛らしい……。シラユキ様にはまだまだ考えるのも早いですからね」


「う、うん。それで、どうなの? 好きな人、恋人とかさ」


 ミランさん可愛い人だし、いてもおかしくはないと思うんだよね。


「恋人ですか? いませんよ。好きな男性もいませんね。私ももう三百近いですし、そろそろ結婚したいと考えてるんですけどね……。まぁ、その、気になる方もいるにはいるのですが、既に愛する人がいらっしゃいますからね。愛人の座を狙ってはいるのですが、無理でしょうね……。今は受付をしながら出会いを求めている毎日ですよ……」


 あ、遠い目。

 こんな可愛い人に誰も告白しないなんて! みんなどういう目してるのよ! まったく……!


 でも、ちょっと気になる発言があったね、自然な話し方すぎて流してしまう所だったよ。

 気になる人はいるんだね。でももう恋人がいるか、既に結婚してるのかな? 愛人の座を狙うとか、ミランさんも可愛い顔をして中々大胆な事を考えるね……


「その気になる人っていうのは? あ、聞いちゃっていいのかな」


 しまった! 聞いちゃったよ。

 いいか。多分どうせ私の知らない人に決まっている。その人が同じエルフであってほしいと思うくらいだ。


「え? あ、いや、さすがにそれは……。で、でも、シラユキ様のご質問だし、う、ううう……」


「無理に言わなくてもいいか」


「る、る、ルーディン様なんです……! ああ、もう駄目だ……、結婚したかった……」


 兄様か。

 確かに兄様カッコいいよね。ああ、愛する人がいらっしゃるって言い方で気づくべきだったか。しかし兄様かー。兄様は姉様一筋だし、愛人も難しいんじゃないかなー……。ミランさん普通サイズだしね、もっと大きければ不可能ではなかったかもしれないが……


「ふう……。ルー兄様なの!?」


 驚くのが遅れた!!


「姫様!? またですかミランさん!!」


「すみませんすみません!! できたら命だけはお助けをー!!!」


「何もしないよ!? ミランさんはもうちょっと私たちを信用して!!」




「まったくもう! お友達に何かする訳無いじゃない!」


「す、すみません! ですが、ハイエルフ、王族の方々は、私たちにとって本当に雲の上の存在と言ってもいいくらいなんですよ。シラユキ様がお優しい方と言うのは分かってはいるんですけど、つい過剰に反応してしまって……」


 く、雲の上の存在? 神様扱いか!? そういえばキャロルさんもそんな反応だったよね。詳しく聞いてみるか?

 いやいや、今日はまだやめておこう、急いで調べる事でもないや。今はまずは、ミランさんが兄様を、という話からだ。


「ミランさんも早く慣れてね。今度家に招待して、普段の父様母様を見せてあげるから。多分すぐに」


「おおおお王族の方の館へ!? とととととんでもない!! わ、私ただの一般エルフなんですよ!?」


 あるぇー? 逆に慌てさせてしまった。

 シアさんが、またか……、という目でミランさんを睨んでいるが、気にしないでおこう。


「気にしすぎだよ……。この話はやめよう、うん。話を戻すけど、愛人の座、だっけ、ルー兄様の」


「そ、そっちはそっちでとても話し辛いのですが……。はい、ルーディン様素敵ですよね……。ラルフさんを通じて紹介してもらったんですけど、お、王子様ですよ? 王族の方とお知り合いになれるなんて、もう舞い上がっちゃって……。恋と言うより憧れに近い感情ですね」


 兄様カッコいいけど、家ではおっぱい星人ないいお兄ちゃんなんだよね。ミランさんの憧れを壊すような真似はしたくないから黙っていようか……


「ミランさんには残念だけど、ルー兄様はユー姉様一筋だからね。多分難しい、と言うか、無理だと思うよ?」


「わ、分かっています……。でも、やっぱり憧れますよね……。一度だけでもいいから抱いていただき、何でもありません!!」


 き、聞かなかったことにしよう。ミランさんはやっぱりいやらしい人だ。


「ルー兄様は、胸が大きな女の人なら、後は無条件で興味を持つと思うんだけどね。ミランさんは小さくは無いんだけど、普通サイズだから……」


「ら、ラルフさんの言ってた事は本当の事だったんですね。む、胸で誘惑してみようかな……。やっぱり無理!!」


「あはは。ミランさんも森の中に住んじゃえばいいのに。それなら毎日でもルー兄様に会えるよ? そうなると私も嬉しいなー。あ、家のメイドさんになる?」


 ミランさんメイド化計画か、いいね。

 エルフのお友達は全てメイドさんにしてしまいたいね……、? 私ってメイドさん好きなのか!? 嫌な事に気づいてしまった……!!!


「り、リーフエンドの森の住人に!? だ、駄目ですよそんな気軽に!! エルフにとってリーフエンドの森は聖地。選ばれた者しか住まうことは許されないんですよ?」


「へ? そうなの?」


 せ、聖地? ただの森じゃないのあそこ? え? どういう事?



「何やら説明が必要な気配を感じまして、思わずやって参りましたバレンシアでございます。リーフエンドの森についての、森の外のエルフの認識のお話でしょうか?」


 またいつの間にか真横にシアさんが!?

 何か機嫌がいいね。今日はあっちでもこっちでも説明ができると嬉しそうだ。




 ラルフさんとナナシさんの話から随分と離れてしまったが、これはこれで気になる話題だね。二人の事はひとまず後回し、まずはシアさんの話をしっかり聞こうかな。


「姫様にとってはただの森という認識で問題はありませんよ。ですが、エルフにとってはまさに聖地、聖域と呼ばれるに値する神聖な森。もちろん私も例外ではありません」


「シアさんもなの? 私にとってっていう事は……、私はハイエルフだからかな?」


「はい、さすがは姫様。姫様は不思議に思いませんか? ハイエルフは世界に七名しか存在を確認されていない事を。他の大陸で今後生まれる可能性はあるとは思いますが、では、ハイエルフは誰から、いえ、何から生まれると思います?」


「ば、バレンシアさん? あの、それって私が聞いてもいい事なんでしょうか……。王族の方に仕えるメイドさんだからこそ知っても許される事だと思うんですけど……」


 誰からじゃなくて何から? ミランさんの反応からすると、一般のエルフは知らないみたいだね。

 考えた事も無いけど、普通にエルフから生まれた、髪と瞳の色が青いエルフがそう呼ばれるようになっただけなんじゃないのかな?


 あれ? でも、お爺様とお婆様が、ハイエルフはハイエルフ同士でしか子供を作れないって言ってたんだっけ?

 あ、あれ? そうなるとお爺様とお婆様は誰から生まれた? 


 

 ……何から……?



「シアさん、ごめん、ちょっと、怖い。先に答え教えて? な、泣きそう……」


「ええ!? す、すみません姫様!! 怖がらせるつもりは全く! 私はなんという事を……。申し訳ありません姫様、ではまず答えから、答えとは言っても私もウルギス様に教えて頂いただけなのですが……。すみません、また回りくどくなってしまいましたね。ハイエルフは森から、いえ、恐らく世界から生まれるのだと思います」


「世界、から?」


「はい。ルル様とネネ様、姫様のお爺様とお婆様は、気づいたらこの世界にいたのだそうです。目覚めたのは、現在姫様の住んでいる館である大木、あの大木の根元で目覚められたとか。お二人は始祖ハイエルフと呼ばれていますね。私たちただのエルフになどには名前を呼ぶ事すらおこがましい、まさに神と同等、いえ、それ以上の存在と言っても過言ではありません」


「大袈裟な話、じゃないんだよね? でも、森の中の人たちはみんな普通だよ? みんな家族だよ?」


「ええ、その認識で大丈夫ですよ。今森の中に住んでいるエルフは全て、ルル様ネネ様と家族同然にあの森で暮らしてきたエルフの子孫に当たるんです。もしかしたら、当時の事を知っている方もまだ生きているかもしれませんね」


 ああ、まだこの国ができる前から住んでいた人たちなのか。お爺様とお婆様が見つけた森で国を興したんじゃなくて、二人が生まれた森に人が集まって国になったのか?

 駄目だ、スケールが大きすぎる、全然理解できないや。とりあえず分かる事は。


「み、ミランさん、凄い事聞いちゃったね。もう逃げられないよ?」


 ミランさんはもう、友達から家族にランクアップしてもいいんじゃないか、という事だ。


「に、逃げられない!? ああ、なるほど。この話を聞かせてもらえたのはあれですね。冥土の土産……」


「理解が早くて大変結構」


「違うからね!? シアさんはもう戻っていいよ! ありがと!!」


「はい。また分からないことがありましたらお呼びくださいね。いえ、説明の気配を感じましたら勝手に参上致します」


 また元のテーブルへと戻って行くシアさん。


 どれだけ説明好きなのよシアさんは!






「なんか疲れちゃった……。今の話は忘れようか、またラルフさんとナナシさんの話に戻ろう?」


 ミランさんには、もちろん私にも、重大な秘密、国家機密のような話だった。

 忘れた方がいいよねこれは……。絶対無理だよ!!


「ううう……。絶対誰にも話せないですよこんな話……。バレンシアさんは一体何を考えて……、あ、すみません。ええと、どこまでお話しましたっけ?」


 どこまで話したんだったかな。シアさんのお話のインパクトが強すぎて思い出せないよ……


「えーと……。ナナシさんがまだあの依頼を受け続けてる、っていうのは聞いたね」


「忘れてください! あ、本人たちに確認を取ろうとしたんですよ確か!」


「ああ! そうだった! 私が止めたんだったよね。うんうん、そうだったそうだった。でも、まだ本人に答えを聞くのは早いなー」


「エディさんに聞いてみるのはどうですか? 今一番長く二人の近くにいるのは彼ですから、きっと知っているんじゃないかなと思い、あ、答えが出ちゃいますね。どうしましょうか?」


 エディさんか。確かに答えが出てしまいそうだけど、まだそこまで長い付き合いでもないよね。もしかしたら当たらずとも遠からずなお話が聞けるかもしれない。


 試してみる価値はある! あの二人を一番近くで客観的に見れる立場だ、他にも面白い話が聞ける可能性だってある。また面白くなってきたぞー!!




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