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その84

「それでは、私たちは見ているだけ、フォローも入れません。いいですね? しっかりとお役目を果たしてください。ええ、まさに命を懸けて」


「命懸け!? ふぉ、フォローは入れてくださいよ……。バレンシアは私より年上じゃないですか」


「いつもはエネフェア様の側で普通にしてるのに何でシラユキの前だと緊張するのよ? シラユキはお姫様だけど、ホントにただの子供だよ?」


「そ、それとこれとでは違うんですっ。フランはもうちょっと王族の方々に敬意を払ってください。口調の軽さが目立ちますよ?」


「あはは、やぶ蛇だったねフラン。確かにフランってエネフェア様の前でもあんまりと言うか、全く変わらないよね。それは凄いよ」


「んー、楽にしてくれって言われてるんだからいいんじゃない? 一応エネフェア様とウルギス様と話すときはちゃんと敬語で話してるんだし、そんなこと気にしないでよ。それよりほら、シラユキの相手してあげて」


「え、ええ……、分かりました」


 やっとメイドさんズ四人の話し合いが終わったようだ。

 そう、今この部屋にいるメイドさんズはいつもの三人ではなく、四人なのだ。


「私が分からない所、気になった所を質問するだけだから大丈夫だよ。よろしくね、カイナさん」


 今日の読書のお相手はなんと、カイナさんです!!


 カイナさんは胸に手を当て、大きく深呼吸を一つした後。


「は、はい! よろしくお願いしましゅ!」


 盛大に噛んだ。






 以前クレアさんに一度だけお相手してもらった事を聞いたんだろう。それを羨ましがっての行動かな?

 私と仲良くなろう同盟を組んでいる二人だし、クレアさんの行動が抜け駆けに見えてしまったのかもしれない。


 母様を通してのお願いだと言うから何かと思えばそんなこと、こっちは毎日来てくれても構わないのにね。

 クレアさんのときと同じ様に、どんなお話が出来るのかとかなり楽しみだ。


 椅子に座り、カイナさんがその横に立つ。まだちょっと緊張してるね、とりあえずは読んでみて何か質問を投げかけてみよう。なんとかこの緊張を解いてあげたい。


 シアさんが選んでくれた本に目を落とす。

 今日の本のタイトルは『お姫様になろう・初心者編』。ふむ、お姫様を目指す初心者向けの本、かな?


 ……!?


「何この本!? しかも絵本だこれ!! 私ってやっぱり駄目お姫様なんだ! こんな絵本に頼らないといけないくらいの駄目お姫様なんだー!!!」


 あああああ……、何か凄いショックだ……。こ、ここまで駄目なお姫様だったのか私は……


「す、すみません! 申し訳ありません!!」


「何でカイナさんが謝るの!?」


 何故かカイナさんに全力で謝られてしまった。



「いきなり躓いちゃったよ……」


「また変な本持ってきて……。シア、フォローしてあげてよ」


「まったく……、姫様はどうかお気になさらずに、深く考えずお読みください。カイナ、貴女は姫様の質問に貴女なりの答えを返すだけでいいんです。たったそれだけの事ですよ? もっと気を楽にしてくださいね」


「命懸けとか言って無駄に緊張させてたのはシアさんじゃない……」


「わ、分かりました。では、姫様、読み進めていきましょうか。何かしらためになる内容が書かれている本なのかもしれません」


 そ、そうだ! ちゃんとしたお姫様になるためだ、絵本とは言え馬鹿にしてはいけない。

 あのシアさんが選んだ本だ、必ず私を立派なお姫様まで導いてくれるに違いない。と信じたい!



 頑張るぞと決意し、本を開く。

 なになに……、『ステップ1 王族諸兄とお近付きになろう』、か。ふむ……?


「そう言う意味のなろう!? の、伸し上がるの? 成り上がるの? わ、私にこれを読んでどうしろって言うの!?」


「ひ、姫様、落ち着いてください。その絵本は、一般庶民が王族の側室、そして王妃へと成り上がる方法を描いた、大衆向けの娯楽書籍ですね。面白おかしく書かれた内容に笑いながら読んでいけばいい、と思いますよ」


 今のどうよ!? とシアさんの方へ顔を向けるカイナさん。

 そうだそれでいい。と、ゆっくり頷いて答えるシアさん。


 なにその掛け合い面白い。カイナさんこんな面白いキャラだったのか。


 よし、そうと分かったら気楽に読み進めて行こう。でもこれを読んでどんな質問をしたらいいんだろう……



 王族諸兄のような方々とお知り合いになるためには、まずは女を磨く事が重要です。ふむふむ。

 女を磨くのに最適なのは男性との熱い一夜、これに限ります。激しく愛し合いましょう。ふむ……?

 若さを武器に毎晩違う男性に抱かれましょう。勿論抱かれるだけではいけません。こちらからも奉仕する……



「ステップ1から全力でアウトだよ!!! シアさん! わ、私にこれを読めって言うの!?」


 ステップ1でこれか!! この先読み進めていったらいったいどんな内容と挿絵が……、ごくり。どれどれ続きは……


「いけません! 姫様には後千年早いです! バレンシア! 姫様になんて物を読ませるんですか!! ここここんな、男性との……、なんて!」


 カイナさんが真っ赤になって、横から本を奪い取ってしまった。

 むう、続きが……、こほん。別に残念とか思ってないよ……?


 しかし、この反応、この反応が普通なんだよね!! 何故か新鮮に感じてしまうんだけど……

 でも千年は無いわ。


「その程度で何を……。姫様はともかく、貴方は三百以上ですよ? まったく、情けない……」


「何を言ってるんですか! そういう問題じゃありません! こういった、その、アレは、愛し合い、結婚する方とのみすることです!!」


「そうだよ! さすがにこの内容は無いよ!! カイナさんは分かってる!!」


 素晴らしい、素晴らしい考えだ。


「愛し合う? 結婚? 男性とまともに会話もできない貴女の言えたセリフですか」


 鼻で笑うように言うシアさん。

 今の言い方はちょっとひどいんじゃないかな……

 あれ? もしかして読書のお相手役を取られた事を根に持ってる?


「う……。だって、男の人って、何か、怖くないですか?」


「う、うん、何となく怖いよね。私はシアさんが隣にいるから大丈夫なんだけど、一対一は絶対無理。泣いて逃げ出しちゃうよ」


「姫様凄いです……。私はウルギス様とルーディン様の前でも緊張してしまうのに……」


 父様と兄様はカッコいいからね、しょうがないよ。さらに王族だしね……


 でも、そうなると……


「男の人とお付き合い、とかした事無いの? カイナさん美人だし、告白とか何度もされてそうな気がするんだけど」


「おおおおお付き合いだなんてとんでもない!! 告白は、その、実は何度かされたことはあるんですが……、どうしても怖くなって、謝って逃げてしまったんです。あのクレアですら恋人がいるというのに、情けないですね……」


 あらら、もったいない、のかな? カイナさんクラスの美人さんなら選り取り見取りで選べそうだし、そうでもないのかも。

 って! クレアさんバレちゃってるよ!? まさか、みんな知っててバレてない様に振舞ってるだけなのか!?



 カイナさんってこうやって話してみると、何か、可愛らしい感じの人だね。

 私と考え方も似てるんじゃないのかな? こんな素晴らしい人が近くにいた事を今まで気づかなかったとは……

 これからは母様に甘えるだけじゃなくて、カイナさんクレアさんと話すためにも執務室に行くようにしよう。




「姫様にはカイナの様な大人の女性になって頂きたいですね」


 カイナさんみたいな大人?


 じーっと見てみる。

 背はクレアさんと同じくらいだよね、170近くはありそうだ。髪は肩まで伸ばしてるんだったかな、それを後頭部でまとめている。短いポニテの様な感じか。仕事のできる大人の女性って雰囲気がいいね。胸は身長に見合った大きさだ。もげろ。

 この見た目でこの可愛らしい性格か……。さすが母様お付のメイドさんズの一人だね。


「私もカイナさんみたいな綺麗な大人になりたいなー」


「私は逆に、姫様の様な可愛らしい外見に憧れます。背がもう少し低ければと何度思ったことか……」


 何その贅沢な望みは!

 カイナさんの身長を下げて、その減らした分私にプラスする魔法でも作れないものか……


「そうなったらレンに襲われるよ? よかったね背が高くて」


「さすがにそれは……。もうそれでも……?」


「カイナさん駄目! 気を確かに持って!!」


「何を馬鹿なことを……。私は姫様一筋だと何度も言っているでしょう。私が言いたいのは……」


 私だけに信じてもらえればいい、と言う言葉通り、シアさんは女性好きと思われても特に反論しなくなってしまった。

 でも、毎回そこで私一筋とか言うのはやめて欲しいんだけど……




「お付き合いや結婚どころか、男性とまともに会話もできず、逃げ出してしまうような大人になって頂きたい、という意味です」


「嫌だよ!! 私だって大人になったら恋愛の一つくらいしてみたいよ!!」


「なっ!? いけません! 駄目に決まっているでしょう!? 全力で阻止してみせますからね!」


「なんで!?」


「私もそれは賛成しちゃう。ウルギス様とルーディン様以外の男になんて絶対触らせたくもないわ」


「だよね。姫が恋愛なんて考えられないし……。ああ、駄目だ、そんな相手がいたら生かしておけそうに無いよ」


「私もこればかりは賛成ですね。姫様、ルーディン様とのお子様、楽しみにしていますからね」


「こっこここ子供!? なっ、はっ! あ、ううぅ……」


 カイナさんのあまりの一言に茹でダコ状態で固まってしまった。




 カイナさんはクレアさんの言っていた通り、私に嫌われる事を恐れて緊張しすぎてしまっていたようだ。

 私を可愛がりたい、でも、もし泣かせてしまったり、嫌われてしまったら、と考えると、体が固まってしまって上手く喋る事もできなかったんだって。

 結婚に関しては、私以上に可愛い子を産める自信が無く、もう私とユー姉様を可愛がれればいいや、と諦めてしまっているらしい。諦めちゃ駄目だよ……



 ちょっと気になったんだけど、本のチョイスでこの話の流れになるよう、全部シアさんの思い通りに進んだんじゃないだろうか?

 カイナさんとの共通の話題のような物を例に出し、親近感を覚えさせて見せたのか。


 ちょっとシアさん凄すぎない? 今度、日頃の感謝も込めて何かプレゼントでもしようと思う。




「ルーディン様と言えば、よく私の胸を……、はっ!? 何でもありません!!」


 兄様にはスタンガンの魔法をプレゼントしようと思う。バチィの刑とでも呼ぼうか……






フランのセリフの違和感がどうしても拭えないので、その78以降のセリフを少し修正しました。

話はそのまま変わっていないので読み直す必要は無いと思います。

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