その310
一日明けた次の日、今日は『踊る妖精』を貸し切っての私の誕生日パーティが開催されている。
昨日は当日という事もあって町はお祭り騒ぎの大賑わい。そんな稼ぎ時にお店を閉める訳にはいかず、メイドウェイトレスさん三人組は森のお祭りに参加できなかったからだ。
参加メンバーは他に、ショコラさんとウルリカさんとソニアさんもいる。
ショコラさんはもう完全にギルド長代理状態で席を外す事ができず、ウルリカさんはソニアさんを置いて自分だけ楽しんで来る訳にはいかない、と毎年遠慮してしまうのだ。
後はお店のオーナーさんのジニーさんも……、うん? 昨日ジニーさんって普通にお祭りに参加してたよね……? ま、まあいいや、深く考えないようにしておこう。
そして私の護衛兼お供役としてシアさんとキャロルさん、マリーさんとキャンキャンさんも昨日から続けて参加。合計十一人と結構な人数になってしまったが、『踊る妖精』が出来たおかげでまだまだ参加人数が増えても問題がないくらいだ。
しかしこの巨乳率……、兄様は絶対に誘えないね!
フランさん並の特大サイズのウルリカさんに、私の大好きなサイズの、こほん、かなり大きめの五人とさらに、シアさんも普通に大きめでジニーさんとキャンキャンさんもそれなりのサイズ。キャロルさんは身長が低めなだけでちゃんとおっぱいと呼べるくらいの膨らみはある。
それに比べてぺったんこなマリーさんと私。お互い強く生きようね……。
「まずはおめでとうシラユキ。昨日は祭りに行けなくて悪かったな。ジニーの奴はしれっと参加していたらしいがな……」
「おめでとうシラユキ。今年で五十か、成人まであと半分じゃの。しかし……、ふふ、何年経っても小さくて可愛らしいままじゃの。ほほ」
恨みがましくジニーさんの方を見やるショコラさんと、優しい笑顔で私を撫でるウルリカさん。
いくつかグループが出来ているのでまずは、大人? の二人に近寄ってみる。理由は特にない。決してショコラさんのおっぱいとウルリカさんのもふもふ尻尾に引き寄せられた訳ではありません!
「ふふふ。ありがとうショコラさん、ウルリカさんも。ショコラさんはなんだかお疲れっぽいね」
いつもは私を発見したコーラスさんやカルディナさんの如く、マッハな勢いで抱き上げに来るのにね。これはやっぱり昨日のお祭りのせい? 町は町で大騒ぎだったみたいだもんね。……つまり私のせいか!?
「はは、まあな。四十の時もその前もアイツがしっかりと纏めていたからなあ……、と、折角の祝の日にする話でもないか。ほらシラユキ、こっちに来い来い」
やはりジニーさんは有能だったと、なるほどさすがだね。
ふむ、呼ばれたもののどうしたものかな。これまでの私なら大喜びで飛び付いておっぱいに頬擦りをしていたものだけど、五十歳の半分大人としてそんな子供っぽい行動を取っていいものなのか……、コレガワカラナイ。
「ん? どうしたシラユキ? 乗って来い乗って来い。可愛がってやるぞ? 吸わせてやるぞ?」
ニカっと爽やか笑顔で私を呼び続けるショコラさん。
く、くうっ、なんて凄まじい誘惑! 思わず飛び込んでいくところだった……。いや、吸いませんけどね?
「どうしたんじゃ? ガトー殿の膝の上は特にお気に入りの筈じゃろ? それならばほれ、儂の尻尾も付けてやるでの」
「いつ見ても見事な毛並みだなこれは。しかしくすぐったい」
ウルリカさんの素敵もふもふ尻尾がショコラさんの膝の上に……! しかも三本とも……!!
た、耐えるんだ! し、しかしっ、ショコラさんに甘えながらウルリカさんの尻尾をモフれるなんてまさに幸せ夢心地。ぐぬぬぬぬ……。
「ふふふ。姫様、ご無理をなさらずどうぞ。実はですね、姫様は五十歳となられた事を機に、エネフェア様のようにどこへ出られても恥ずかしくのない立派な大人の女性に、ハイエロフになるんだと決意していらしてですね。ふふ、本当に可愛らしいです」
人が必死になって誘惑に耐えているというのに、やけに楽しそうに理由を説明されてしまった。
どうしてそこで笑うんですかねえ……。あとハイエロフは語感的になんとなく嫌です!
「ははは、なるほどな。しかしなシラユキ? 大人なんて物はいざなろうと思ってなる物でもなれる物でもないんだぞ? 時が経つに連れて自然とそうなっていく物なんだ。だからほら、我慢なんて意味のない事はするな」
ぽんぽんと自分の両股を叩き、両腕を開いてさらに私を呼ぶショコラさん。その表情はシアさんと同じで嬉しそうな楽しそうな笑顔だ。
それはもう昨日みんなから散々同じ事を言われまくってるし自分でも分かってるんだけど……。
「ううう……。きょ、今日だけだからね!」
も、もう我慢できなーい! とショコラさんの膝の上に飛び乗るようにして座らせてもらう。そして早速頬擦りを開始。
「ふふ。まったく、可愛らしすぎるぞシラユキ。どうする? 吸うか?」
「吸いませーん。うーん、やっぱり幸せ! ふふふ、ショコラさーん」
さすが私的おっぱいランキング二位のショコラさんだ、幸せすぎる!! 我慢していた分感動が上乗せされた感じだよ。
「本当に幸せそうじゃのう。まあ、儂らからすると五十はもういい大人どころか年寄りと言ってもいいくらいなんじゃがの。エルフや竜人からするとどうなんですかの?」
ウルリカさんは二百歳超えてても基本は狐族だもんね、元々長生きする種族とは時間の流れの感じ方も違っているのかもしれない。
そう言う私も一応は元人間なんだけど、もう完全に前世の事なんて忘れちゃったなあ……。
「五十歳くらいではまだまだ子供ですね、勿論個人差はありますが」
「五十にもなれば大人と呼ぶに充分すぎるくらいの歳だな。そこまでいくと個人差も考えられん」
「ほほう、なんともそれは。エルフと竜人、長寿なのはどちらも同じでもやはり種族の違いとは大きいものですのう」
ふむふむ、と頷き関心しながらも尻尾で私をくすぐる事はやめないウルリカさん。大好きです。
いつかは忘れちゃったけど、シアさんが竜人種族の成人は十歳だって言ってたよね、確か、多分、シアさんだった、筈? 誰からなんてどうでもいいか。そしてエルフの成人は百歳。竜人種族からすると十倍にもなる。
種族の違いっていうのは本当に大きすぎるくらいのもので、そのせいで逆にあんまり気にならないのが普通、なんだったかな? こっちもうろ覚えだ。
「なに面倒くさそうな話してるんすかー、って! ガトーショコラ!! アンタまたシラユキ様独り占めしやがって!」
むむ? あ、ノエルさんか。
「ふん、娘をどうしようが私の勝手だろうが」
「シラユキ様はウルギス様とエネフェア様のお子様だ! アンタホントいい加減に」
「っと、スマン、エルフの前で今のは拙かったか。悪い」
「ぐ……、ふ、普通に謝るんじゃねえよ……。くっそ、どこの小物だアタシは」
あはは。確かに今のやり取り、余裕の大人の対応をされちゃった感じだよね。実際SランクとAランクの差は大きいと思うけど。
さて! これだけ人数が集まってるのにショコラさんの膝の上でずっと過ごしている訳にもいかない。もっとみんなともお話をしに行かなければなるまい。
グリグリと少し強めにショコラさんの胸に顔を押し付け、十分に堪能したところで降りさせてもらう。本音を言えばまだまだ甘えたりないが……。
「ちょっとノエルさんと行ってくるねー。また後でお膝に乗せてね!」
「ん? ああ。ま、私たちは食って待つとするか。また後でな」
「儂の膝にもの。どれ、何から手を付けるとしますかのう」
「今日は料理の追加は無いんだから全部食うなよ! それじゃシラユキ様、えーっと、とりあえず向こうに行きましょうか」
「うん! ……あれ?」
ノエルさんが笑顔で差し出してくれた手を取、ろうとしたのだが、
「何を勝手な……、全くこの三下が」
伸ばした手は何故かシアさんと繋がれてしまった。……いつもの事だけど。
「手! 手くらい繋がせてくれたっていいじゃないっすか!!」
「くらい? 姫様の愛らしいお手に向かってなんて言い草ですか、失礼にも程があります。さ、姫様、こんな無礼者は放っておいて参りましょう」
「う、うん。仲良くしなきゃ駄目だよー?」
軽く注意してみたが、シアさんの返答はにっこりと微笑むだけであった。まあ、それも分かってた。
「なんでバレンシアさんって昔っからアタシには冷たいんだろうなあ……。別になんかした覚えも無いし、やっぱ普通に見た目と性格が気に入らないのか? それともこの胸のせいか? でも胸はタチアナもミーネの奴も似たようなモンだしなあ。ってかそもそもバレンシアさんって胸の大きさなんか気にするような人だっけか? あ、シラユキ様がおっぱい好きだからか? はは、まさかな」
何やらブツブツと不満やら疑問やらを呟いているノエルさんを引き連れ、次はタチアナさんとヘルミーネさんのいる辺りへ向かう。とは言っても同じ店内なので一分と掛からない距離、みんなすぐ近くにいるんだけどね。
実は、私もキャロルさんも理由は知らないが、シアさんはノエルさんの事があんまり好きじゃないらしい。
キャロルさんを一方的にライバル視して事ある毎に勝負を吹っ掛けていたみたいだけど、一緒にいたシアさんとは会話はしても名前を呼ばれた事が一度もないと言うのだから驚きだ。
確かにシアさんは胸のサイズを物凄く気にしているけど、それは私と出会った後の話なのでノエルさんを嫌う理由にはならないと思う。一体そこには何があってどんな理由が隠されているのか、気になる気になる木。
……可愛い弟子のキャロルさんが怪我をさせられるからとか? シアさんは子供の頃のキャロルさんには結構甘かったんじゃないかなと私予想。ふふふ。
ちなみに、それなら何と呼ばれていたかというと……。おい、そこの、この三下が、ゴミクズが、などなどあまりにも酷すぎるラインナップだった。ひどいわ!
「シラユキ様ー! うふふふふふふ。可愛らしいですシラユキ様ー。うふふふふふふ」
「わう! タチアナさんお酒入ってる! 誰が飲ませたのー?」
考え事をしていたらテンション高めなタチアナさんに捕まってしまった。
お酒が入っていても無理に抱き上げようとはせず、正面から抱きついてきているだけなので別段問題はないんだけど……、ちょっとお酒臭いです!
「すみません私です! 見てて楽しいもんだからついつい……」
キャロルさんか! まったくもう。まあ、少し臭うけど私も楽しいから許してあげようじゃないか。
「こらタチアナ! その癖は何度言っても治りませんわね!」
「お嬢様だってシラユキ様をいきなり撫でたりしてるじゃないですか。あんまり他人のことは言えませんよ?」
「うっ。だ、だってシラユキ様よ? 可愛らしすぎるのよ?」
「アタシから見ればマリーもキャロルも可愛いけどな。くくっ」
「うっさい!」「うるさいですわ!!」
「まったく騒々しい……。姫様、お席へどうぞ」
「うん、ありがとシアさん。ヘルミーネさんとソニアさんは……、あとジニーさんはどこだろ?」
「ああ、あちらに。何やら危険そうなお話をしているようなので暫く放置するとしましょうか」
「う? 危ないの?」
聞き耳を立ててみると、毒が、毒薬が、などと確かに危険な単語が繰り返し聞こえてくる。ソニアさんのパワーアップフラグだろうか!? ……聞かなかったことにしよう。
なんだかんだで結局今日も甘えまくりな一日を過ごしてしまったね……。明日から頑張る! 明日から本気を出します!
オープニング的なお話に随分と時間が掛かってしまいました。
モンスターを捕まえたり配合したりする仕事がまっているので次回はまた少し間が空いてしまうかもしれません。




