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290/338

その290

 秋の一月も終わりに差し掛かり、今までは『転ぶ猫』などでちょこちょことタチアナさんたちに会いに行けていたのだが、そろそろ本格的な開店準備に入るというのでそれもできなくなってしまった。最後に会った日に三人から聞いたところ、秋の二月の第三週の初日、秋祭りの始まりと同時に開店する事に決まったらしい。

 秋祭りは一週間丸々使ってお祭り騒ぎをする日なのでお店としてもお客さんからしても色々と都合がよく、私の名前が見え隠れしているお店という事で話題性も充分。後は私が初日の挨拶でそれとなく宣伝してしまえばもう勝ちは確定、とジニーさんは見ているのかもしれない。


 個人的には話題性よりも、町の人たちの興味を引いてお店に来てもらった後の方が大事だと思うけどね。料理の美味しさやサービスの質、店内の居心地の良さとか他にも沢山、また来たいと思わせる何かしらの強みが必要になってくると思う。私はあの三人がいれば毎日でも足を運びたいと……、うん? なるほどなるほど、問題はなさそうか。逆に個人客がつきすぎてしまう事を心配した方がいいのかもしれないね。


 まあ、もし男女関係で問題が起こりそうな雰囲気だったら、あの三人は私のメイドさんなんだからね! と白昼堂々と宣言してしまうのもありかも? ふふふ。




 秋祭りまでは大体後四週間くらい、まだ結構な日数がある。頑張っているみんなの邪魔をしてはいけないのでそれまでは遊びに行けないのが残念だ。

 そんなちょっとした寂しさを感じていた私に朗報が舞い込んできた。


「姫様、今朝ウルリカさんが到着したと報告が上がってきていますよ。はい、こちらが今日の姫様の担当分です」


「ウルリカさん帰って来たの!? やった! 会いに行きたい行きたーい!!」


 カイナさんからお悩み相談の手紙と、さらに嬉しい情報を貰ってしまった。


 ウルリカさんとはもう二年以上会ってなかったから嬉しすぎる! スイの砂漠を遥々超えての往復の旅、お疲れ様でした! と思いっきりモフらせてもらいに行かねばならないね。キャロルさんとエレナさんにブラッシングもお願いしておかないと。


「か、可愛らしすぎます姫様ぁ……。あの、膝抱きにさせて頂いても構いませんでしょうか?」


「まったく貴女はすぐに……。まあ、姫様が笑顔なのはいい事です。ですが邪魔をしないようお願いしますね」


「それは勿論です。ああ、姫様……」


 心底嬉しそうに私を抱き上げ、そのまま椅子に座ると早速キスと頬ずり攻撃を始めてくるカイナさん。シアさんもやれやれと呆れつつも笑顔なので、怒っていたり嫉妬している気配はなさそうだ。


 ううむ、私はまだ返事してなかったんだけどなー。でもまあいいや、くすぐったいけどお手紙を読む邪魔にはならないしね。返事を書くときはさすがにやめてもらうけど。

 しかしカイナさんはどうしてこんなにも私のことが大好きになってしまったんだろうか……。本当に謎である。


 いつもの様に近いお友達や家族ばかりからの手紙をやっつけていくと、封筒に珍しい人物の名前が書かれているのが目についた。


「あれ? これリューエさんからだ。お手紙をくれたのは初めてだねー」


「あ、本当ですね。エネフェア様かクレアが入れたんでしょうか?」


「ほほう? それは何やら面白い事になりそうな予感がしますね。姫様、早速内容の確認を」


 ウキウキワクワクとした空気を醸し出して催促してくるシアさん。メイドセンサーが怪しい気配を感じ取ったのかもしれない。不安だ。



 ふむふむ、それなりに長い文だったので簡単に纏めてしまおう。


「ええっとね、ドミニクさんとカルディナさんが畑を広げる事になって、そのお手伝いに駆り出される事になったんだって。しかも今後ずっとみたい。それで、どうしよう? って聞かれても何て答えたらいいんだろこれ……」


「ああ、例のあの畑の……。リューエはドミニクさんに嫌われる、とまではいきませんけどあまり良く思われてませんからね。居心地が悪いんじゃないでしょうか?」


「はあ、面白そうな面白くなさそうな微妙なところですね。まあ、適当にお返事を返してあげてください」


「もっと興味を持って! 手伝って!!」


 まったくシアさんは、もう少し私以外の人にも興味を持ってくれないかなー。リューエさんだってクレアさん繋がりで何度も会ってる人なのに、もうちょっとだけ親身になってあげる事はできないのか……!



 リューエさんについてもついでに簡単に話しておくと……、クレアさんが偽物だって言い張っている恋人さんのことだね。カイナさんが落ち着いて話せる数少ない男性の一人で、三人は幼馴染みの関係だ。

 こう言っては悪いが平々凡々とした男の人で、クレアさんの愛情たっぷり弁当のおかげかやや太り気味。超が付くほどの美人のクレアさんの恋人がこの人でいいの? という失礼な感想も出てきてしまうが、いつも無表情なクレアさんが満面の笑顔を見せるのはリューエさんの前だけなのでやっぱり凄い人なのかもしれない。

 のんびりやで朗らかな優しい性格をしていてちょっと気弱な面もあるが、クレアさんは凛々しい武人タイプと正反対な性格である意味お似合いの二人なんじゃないかな? と勝手に思っている。


 まあ、いつもは凛々しいクレアさんもリューエさんの前だと乙女全開って感じなんだけどね。いい加減早く結婚しちゃえばいいのに。ふふふ。



 シアさんが完全に興味を失くしてしまったので、無難に『ドミニクさんは優しい人だから大丈夫、頑張って』と応援だけしておこう。今度クレアさんを連れて遊びに行って、直接エールを送るのもいいだろう。


「よし、こんなとこかな。次々いくよー」


「ふふ、可愛らしいです……。あの、この後私の部屋に」


「はいはい落ち着きなさい、五十歳になられるまで待ちましょう。本当にあと少しですよ、あとほんの数年で……、うふふ」


「そ、そうでしたね。あとたった四年で……、ふふふ」


「妖艶な微笑みはやめて! 毎日飽きないね二人とも……」


 シアさんは冗談だって分かるけど、カイナさんはこれ多分本気で言ってるんじゃないか!? くうう、五十歳になるのが怖いです! 襲われたりしないよね!? ガクブル。




 お手紙仕事を終え、メイドさんズとのんびりお昼まで過ごし、午後から早速ウルリカさんに会いに行こう! と意気込んでいたら……


「シラユキ様、ウルリカが来てますよ。今はちょっと色々とアレだったんでお風呂に突っ込んでます。旅の間は身なりに気を使えなかったんでしょうね」


「え? 来てくれたんだ!? うーん、お風呂かー。私も一緒に入りに行こうかな? あ、尻尾のブラッシングはキャロルさんのお仕事だからねー」


「はい。いやー、アイツの尻尾はブラッシングのし甲斐があっていいですよ。っと、エレナも呼んできますからまた後で」


 こちらから向かうまでもなく向こうからやって来てくれてしまった。嬉しい。

 キャロルさんは報告を入れるとその足でエレナさんを探しに行くらしい。エレナさんはウルリカさんと凄く仲が良くて、住み込みメイドさんだった頃はブラッシングもエレナさんのお仕事だったもんね。


 今朝長旅を終えたばかりでお疲れだと思うけど、それでもすぐに遊びに来てくれるとは本当に嬉しいね。お風呂で汗も疲れもしっかりと流してきてもらいたい。

 私も一緒に入って湯船に浮かぶ特大おっぱいを揺らして遊ぼうかな、とも思ったがやはりやめておこう。それは今晩のお楽しみだ。つまり今日は返すつもりはありません!


「ちょっと今更感もあるけど、ショコラに続いてウルリカも普通に森に出入りするようになっちゃったよね。まあ、ウルリカはウルギス様のお客様って感じなんだけど。そういえばウルリカってさ、なんかお世話してて楽しいよね」


「見た目若くても中身はおばあちゃんだもんねえ……。まあ、あの二人なら全く問題ないからいいんじゃない? シラユキも喜ぶし。二人ともエルフじゃないのがホントに残念よね」


 ふふふ、さすがはショコラさんとウルリカさんだ、メイドさんズからの好感度もかなりの高さだね。

 そういえばショコラさんは完全に私の我侭だったけど、ウルリカさんは父様が特別に許可を出したんだった。飲み友達が欲しかったんじゃないだろうな……。


「うーん、やっぱりエルフじゃないと森に住んじゃ駄目なのかな。二人ともメイドさんになってほしいのになー」


 メアさんとフランさんとシアさん、それにほかのメイドさんズみんなも勿論大好きでずっと一緒にいてほしいんだけどね。自分でもなんでか分からないけど、ショコラさんとウルリカさんは特別大好きになっちゃったんだよねー。


「あはは、姫はメイドさん大好きすぎでしょ。それじゃウルリカが上がってくるまで可愛がってあげちゃおうかな。ほーら姫、キスしまくってあげるよー?」


「わーぅ! ふふふ」


「ああ! メアずるい! シラユキ可愛い!! 順番だからね順番!」


「む、姫様のお幸せそうなお顔に見惚れていたら出遅れてしまいましたか。それでは丁度いいと言うのもおかしな話ですが、私は少し気になる事がありますのでウルリカさんの所へと……。姫様のことは頼みましたよ」


「あ、うん、いってらっしゃーい。もし怪我とかしてたらすぐに教えてね」


「こーら、ちょっとくらいの怪我で魔法なんて使っちゃ駄目だからね? まったくもう……」


「最近になって重傷? の三人を完治させちゃったからね、それが嬉しくてしょうがないんじゃない? レンはレンでずっと毎朝一緒にお仕事してるからなんか余裕よね」


「そうですか? ふふふ。ではまたすぐ後程……。失礼します」


 上機嫌なままで綺麗なお辞儀を一つ、シアさんはお風呂場へと行ってしまった。

 気になる事……? 私も気になるけどメアさんに甘えるのが忙しいから忘れておこう。


 しかし、私ももうすぐ五十歳になるのにみんなまだまだ小さな子供扱いだよね。せめて普通の子供扱いでお願いします! 甘えまくってる私が言っても説得力も何もあったものじゃないけどね……。あはは。




 その後はお風呂上がりのウルリカさんに思う存分甘えまくり、ブラッシングが終わったらモフりまくりで幸せな時間を過ごさせてもらってしまった。やはりウルリカさんには私のメイドさんになってもらいたい。いや、なるべきだ。


 ちなみにシアさんが言っていた気になる事とは、お風呂には誰が一緒に入っているかという事だった。

 ウルリカさんもショコラさんと同じで森の中では一応監視付きの身分、それはお風呂も例外ではない。……トイレはちゃんと例外です。

 私のお付の三人は談話室に、キャロルさんはエレナさんを探しに外へ、そして母様お付の三人は執務室に……。となると残るはソフィーさんか姉様くらいしか手が空いている人がいないのでは? と気付いたんだろう。


 結果から言うと、さすがはシアさんださすがと言っておこう。

 ウルリカさんと一緒にお風呂に入っていたのはソフィーさんで、なんとあの特大柔らかおっぱいを揉みに揉みまくってご満悦だったらしい。まあ、ウルリカさん本人も少し恥ずかしいくらいで別段嫌がってはいなかったらしいので許してあげようではないか。


 それよりも、私もまだソフィーさんと一緒にお風呂に入った事はないんですがねえ……。ずるいずるーい!!







今後の繋ぎの様な一話でした。

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