第11話 新米保安官は、行動に移る!
「RHPグループ現地法人に、モエシア領保安官として告げます。貴社は、ライファイゼン地域鉱山開発において、廃水処理を怠慢、そのまま汚染水を環境に放流する事で、周辺地域を汚染しました。その為に周辺住民にカドミウム障害を起こさせ、またそれを隠蔽する為に処理施設を見た現地住民を殺害、その死を事故死と隠蔽しました。これらの罪状により、貴社に対して施設の立ち入り調査・捜索、及び殺害を行った犯人及びそれを示唆した者を逮捕致します!」
早朝、僕は、鉱山入り口の警備員やこちらを見ているであろうカメラに、領主代理及び裁判所から発行された礼状を提示した。
なお、会話は向こうに分かるように英語だ。
僕は、英語はちょっと苦手なので多機能スマホで翻訳してもらったけど。
因みに僕が異世界へ派遣された理由の一つが、異世界語の会話が出来る事だった。
僕が大学に入学する頃、もう異世界ブームが起こっていた。
そこで話されている共通語が、ラテン語、イタリア語の変化形という事が分かり、大学でイタリア語を受講するミーハーが多く出た。
なんのことは無い、僕もそのミーハーな1人だった訳だ。
論文が読めたら問題が無い英語よりも、実際に異世界人と会話を出来る異世界語に力が入ってしまったのは言うまでも無い。
……そのミーハーが後の人生を決めるなんて、大学時代の僕は思わなかっただろう。まさか魔族の美幼女に一生仕えることになるなんて。
「ちょ、ちょっと待て! お前らはポータムの警察機関だろ? 何でここまで逮捕権が発生するんだよ!」
慌てて叫ぶ警備の厳ついお兄さん。
僕達の素性を知っていて、本来なら逮捕権が発生しない事も理解している=自分たちが何か後ろめたい事があるって分かっていると白状したも同じ。
「確かに異界技術捜査室名義では、逮捕・捜査権はポータムだけです。しかし、僕、タケシ・モリベは、アンティオキーア、モエシア両伯爵より地域の保安官を命じられています。なので、どちらの領内においても僕とその仲間には逮捕・捜査権はあるのです!」
僕は、保安官任命書をカメラに押し付けた!
……これカッコイイからやってみたかったけど、もしかして僕もう後に引けないのかも。このままザハール様やマムの手の上で弄ばれるのだろうねぇ。
僕は、僕が真剣そうにしているのを見て笑っているマムを横目で見た。
……しょうがないや。腹をくくるぞ!
「では、中に入らさせて頂きますね。皆さん、宜しくです!」
「アイ、サー!」
……僕、貴族じゃないもん。
僕の後ろには、いつもの捜査室の面子の他、ライファイゼン近郊の騎士団・兵士の方々が居る。
こちらも本気な訳だ。
「と、通せる訳ないぞ。ここは地球企業、治外法権だ!」
「そういうと思いました。こちらはRHPグループ本社からの命令状です。現地法人は解体、悪事に係った者は解雇、おって業務上横領等で起訴だそうです。ですので、この地はモエシア領内ですね」
僕は、命令状もカメラに押し付ける。
……事前に根回ししない訳ないじゃん。本社、今回の事態をデータ付きで送ったら、さっさと尻尾切りしたよ。そりゃ本社としては今後の事を考えれば、こんな悪党共抱えておくメリット無いし。
◆ ◇ ◆ ◇
「な、なにぃ! 一体いつの間に本社まで連絡が行っていたのか! アントニー、どうなっている!」
「はい、先程、私や現地法人代表宛に今と同様の内容メールが来ました。もうお終いです。本社は私達を切りました」
社長室で映像を見て吼えるヒューバルト。
敵がまさか本社まで動かすとは思っていなかっただけに、激しく狼狽する。
「あいつら、一体どういうヤツラなんだ。まさか、地域保安官まで兼務かよ! このままじゃ俺達もお終いだ。逃げるぞ!」
「逃げるといいますと?」
冷や汗を激しくかくヒューバルトは、同じく汗まみれの秘書に叫ぶ。
「モエシア沖の精錬工場があるだろう。アソコまで逃げたら満足な船の無いアイツラでは手出しできないだろう。山崩れを時間稼ぎに利用するぞ! 後、ここの警備員も総動員して俺達が逃げる時間を作るんだ!」
「御意!」
◆ ◇ ◆ ◇
「なんで、此方人等は銃撃戦になっておるのかや? もう毎度とは言え、困るのじゃ!」
鉱山入り口で突然始まった銃撃戦、僕達は一旦後方に下がり、道を塞ぐようにして停車したシームルグ号を盾にしているが身動きできない。
「そうですねぇ。大人しく投降してくれないと困るんですけどね。銃撃対応できるのは僕達捜査室だけですから、騎士団や兵士の方々に無理は言えないですし」
ポータムですら地球警察以外の現地警察・警備隊等は、まだ銃器を使用していない。
僕らが逆に異端という存在だ。
一応、防具関係は防弾防刃ベストの支給が始まっていて、最悪の事態には対応出来るようになってきているけれども。
……ポータムでも、騎士団の方々は先日まで自らの鎧で勝てると思い込んでいたけどね。しかし僕達の戦闘で、銃が簡単に鎧を撃ち抜くのを見て、反省しているそうな。
ポータムでそういう状況だから、田舎のライファイゼン近郊では近代銃すら見たことが無い人々ばかり。
今、その恐怖に晒されて、シームルグ号の影で騎士団、兵士の方々は震えている。
……火縄銃とかパーカッションロックのマスケット銃がやっとの時に、21世紀の銃器が登場したら、しょうがないよ。
「マム、これは不味いから派手にやっちゃって良いですか?」
「そうねぇ、人死にが沢山出なきゃ、何やっても良いわよ。だって、タケ、いえモリベ保安官の命令ですものね」
マムは、相変わらず僕を弄ぶ。
「はいはいです。では、フォルちゃん。RWS起動お願い!」
「はいですぅ、保安官お兄ちゃん!」
……うん、フォルちゃんも遊ぶ気満々だ。
シームルグ号の貨物室天井に設置された無人砲塔が鉱山入り口の方へ向く。
「RWS起動。グレネードランチャー準備、砲弾は白煙、催涙弾ミックス、照準よし! タケお兄ちゃんどうぞ!」
「よし、発射!」
RWSからポンポンと擲弾が発射される。
それは各所で炸裂し、警備するPWCSの兵士達は浮き足出した。
「では、リーヤさんの支援魔法が効果を出し次第、突撃します!」
「アイ・さー!」




