第21話 新米保安官は、事件を解決した。
「皆さん、お疲れ様でしたぁ」
僕達は領主屋敷の食堂で集まっている。
「今回は皆さんのお陰で、僕は無事事件を解決する事が出来ました。急に保安官になんてなってしまい、自分だけでは何も出来ませんでしたが、なんとか被害最小で事件を解決する事が出来ました。どうもありがとうございましたぁ」
僕は皆に頭を避けた。
「ねえ、モリベ保安官、いえタケ。もう堅苦しい事は良いから、早く食べましょうよ。貴方の作ってくれた『ブリ大根』というの、もう我慢できないのぉ」
マムが目の前の料理に我慢できずに呟く。
「そうじゃ、せっかくのタケの暖かい料理が冷めてしもうたら台無しなのじゃぁ」
「うん、タケっちのご飯は絶品だもんね」
「ああ、タケ殿の作った煮魚。拙者夢にも見たのでござるぅ」
「タケお兄さんのお魚料理、いつもおいしいもんね」
「さあ、定番だけど何処まで美味しくできたのか、ワタクシを唸らせてくださいな」
ウチの面子は好き放題言っている。
「タケ殿、お主の作るものを、私は完全に信用しておる。今日は毒見なぞせずに暖かいうちに食べようぞ」
「ええ、お魚と野菜でこんな料理が作れるのですね。タケ様、良かったらウチのシェフにもご教授願えませんでしょうか?」
……僕の専門って犯罪化学分析だよね。なんで、銃撃ったり料理作ったりしているんだろう?
脳裏に疑問が浮かんだ僕だが、今はご飯に集中だ。
なお、食材や料理器具は僕がポータムにとんぼ返り&注文して準備した。
「では、いただきます!」
「いただきまーす!」
「なんだ、これは!」
「ええ、このお野菜もですが、このお魚の味は一体?」
領主夫婦は一口で驚愕中。
「おいしいのじゃ、おいしいのじゃ! タケをお嫁さんにしたいのじゃぁ!」
「わたくしもタケちゃんを息子にして、毎日ご飯作ってもらいたいわぁ」
「それならアタイもタケっちを欲しいな。こんなご飯毎日食べたいよぉ」
「拙者、もう溜まらんでござる。タケ殿の料理したブリを食べるのが夢だったでござるぅ」
「あーん、このお魚がたまんなーい。タケお兄さんありがとー」
「うまいぞー! 口からビーム出てしまいますわぁ、ワタクシ」
ウチの連中も大満足らしい。
僕も、先に毒見と称して食べていたけど、今度はゆっくりと賞味する。
うん、今回も大成功。
この間入手していた小豆島産の醤油、瀬戸内産味醂、生姜、そして圧力釜の勝利だね。
ほっくりと柔らかい大根を食べる。
ブリの旨さを吸い込んだ大根が絶品。
「タケ、今回の料理について教えてくださらないかしら? 皆さん知りたいでしょ?」
「えっと、マム。事件報告は後で良いんですか?」
「そんなの、もうどうでも良いわよ。詳細なんて機密事項多すぎるから話せないもの。結果だけ話しますと、イワンは事件責任能力が無い為、実家にある座敷牢にて一生蟄居。ただ、可哀想だから地球から精神・脳関係の医者を派遣して事件の原因を調査しつつ知育を今更だけど行うらしいわ。父親のニコライ様は、息子が犯した事件の責任をとって爵位を返上、引退して息子に寄り添うとの事よ。以上、報告終わり」
マムは待ちきれなかったのか、ざっとだけど事件の顛末を説明してくれた。
イワンは、やっと父親と一緒に暮らせるようになったらしい。
遅すぎた感はあるが、これで子供時代からのやり直しをして欲しい。
何せ、壮年とはいえ魔族なのだから、僕よりも余命が沢山残っているし。
「そういう事で、タケ。料理について教えてね」
「はいはい、分かりましたマム。あ、先に言わなければならない事があります。ザハール様、もう事件が解決しましたので保安官の職を辞したいと思うのですが、宜しいでしょうか?」
僕は、ザハールに保安官を辞めたいと言った。
「どうして保安官を今辞めたいのかね、タケ殿」
「それは事件解決のために臨時に僕を保安官に任命してもらっただけで、正式になったわけでも無いですよね。実績も実力も家名も、ましてや地球生まれのヒトが成れる役職でも無いはず。本来の僕では力不足なのですが」
僕は、保安官という役には力不足だという事をザハールに説明した。
因みによく言われる役不足というのは、「役」の方が行う人に対して足らない、こんな役につけるのはもったいないという意味。
これを間違えて力不足と混同している事が多い。
「そうだね。確かに事件解決前、キミに役を押し付けた当初はそのとおりだったね。でもキミは私を救い、リーヤを救い、無事事件を解決した。これは保安官としては十分な実績に見えるが? それに保安官ならリーヤとも釣り合うぞ。なあ、レディ」
「ええ、貴方。わたくしも同意見ですわ。その肩書きがあればリーヤの夫候補、婚約者としても十分ですの」
……おい! 話がどこかで間違っていないかい? なんで保安官自体の話がリーヤとの婚約話になるのかよぉ!
「タケ、もう観念なさいな。貴方はペトロフスキー家に捕まっちゃったのよ。このまま、こちらに骨を埋める覚悟で頑張りなさいな」
「マムぅぅ!」
マムも面白がって僕の立場を遊ぶ。
「タケや、此方ではイヤのかや?」
そこで聞いてくるリーヤ。
もう僕に逃げ先なんて一切無い。
この甘くて優しい呪縛、僕は望んで捕まるのだ。
ワクワクしている仲間達を前に僕は、ため息ひとつ付いて答えた。
「イヤな訳ないじゃないですか、リーヤさん。僕、モリベタケシは、リーリヤ・ザハーロヴナ・ペトロフスカヤと一緒に歩みます。何回同じ事を言わせるんですか?」
「そうじゃろ、そうじゃろ! お父様、お母様、そういう訳じゃから、当分お見合いはナシじゃ。タケが生きておる間、此方はタケと一緒に居るのじゃ!」
パチパチと手を叩く仲間達。
「そうか、なら余計に保安官職を当分持っておくといい、タケ殿。何か困ったら、その役職を使いなさい。それが私からタケ殿への婚約祝いだよ、後、婚約以上はナシだぞ。娘に手を出したら、私は許さない。清い付き合いにしておきなさい」
笑顔が怖いザハール。
どうやら娘を託すには十分だが、それは僕が生きている間で手出し禁止。
まあ、娘を大事に思うからの落とし所だろう。
「ええ、わたくしもリーヤにお手つき、エッチな事をしなければ良いですわ。リーヤをよろしく御願いしますわね、タケ様」
エカテリーナの笑顔も怖い。
娘を思う親心だとは思うが、そこまで思われるリーヤが羨ましい気もする。
「タケや。其方の結婚は、また別の話じゃ。保安官なら準貴族扱いじゃ。重婚もこちらではOKなのじゃ。此方を第一婦人扱いにしてくれるのなら何の問題もないのじゃ!」
リーヤは、僕の逃げ道を完全に塞いでくれた。
結婚でリーヤとの婚約を破棄する方法も出来ない。
「はあ、もうリーヤさんから逃げられないんだね、僕は」
「なんじゃ、此方から逃げたいのかや?」
僕はリーヤの顔を覗きこみ、宣言する。
「いーや、こちらこそお願いしますね、リーヤさん!」
「はいなのじゃ!!!」
この後は僕の作った「ブリ大根」談義で盛り上がったのだ。
(第二章 完)
これにて第二章お終いです。
リーヤちゃん、可愛かったですか?
書いている私もにんまりしたり、しんみりしたり、ほっこりして楽しかったです。
次は、イヌのお巡りさん、ヴェイッコくんのお話です。
かなりシリアス風味ですが、宜しくお願い致します。
次回更新日は18日土曜日を予定しています。
次も初日は、2話更新、どうぞお楽しみに!
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