第56話 エピローグ1:帝都、大宴会!
「皆の衆、この度の戦ではご苦労だった。今日は、皆の慰労を兼ねた祝勝会だ。余の前での宴会であるが、本日は無礼講とする。心の膿や疲れを存分に吐き出し、明日以降は帝国や地球の為に働いてもらいたい」
尖鋭要塞戦から一週間、ドラゴン撃退時に壊された宮殿も修復が完了し、帝都内に落ち着きが出た頃、宮殿内の大食堂にて立席型式で少年皇帝主催の宴会が行われた。
「では、僭越ながらわたくし、岡本真由子が乾杯の音頭を取らさせて頂きます。今回、女性の身、更には帝国とは縁薄いわたくしに、かのような光栄なお役目を頂き、ありがとう存じます。帝国のあります惑星ゼムーリャは、わたくしの娘と義息子がモエシアにて領主をさせて頂いており、わたくしの義理の娘リタが王族として住む星アルフとの国交を結ばせて頂きました。皇帝陛下におかれましては、わが子達に対して、甚大なる庇護を頂きまして、感謝しております」
シックなドレス姿のマユコが、玉座に座る少年皇帝の横でスピーチをしている。
異世界共通語を話せないマユコの代わりに、可愛い系ドレス姿のナナが同時通訳をしている。
……よく考えたら、マユコさんが地球側では一番の大物になるんだね。辺境伯義母で、友好国王女義母。更には、守護神の義母だもん。
「地球においても、陛下のお力で……」
「母様、演説が長いのじゃ! 料理が冷めたら美味しくなくなるのじゃぁ!」
長々と話すマユコに容赦なく突っ込む魔神幼女チエ。
チエは、中央のテーブルに並べられた料理が気になってしょうがないらしい。
「あら、すいませんですわ。では、皆さまのご繁栄、ご多幸、御健勝をお祈りいたしまして、乾杯!」
「乾杯!」
そして宴会という名の「戦い」が始まった。(笑)
◆ ◇ ◆ ◇
「タケ、これもこれも美味しいのじゃぁ!」
「リーヤちゃん。ウチの嫁として恥ずかしい事しちゃダメよ」
「トモヨ殿、すいません。我が娘は、まだまだ子供で……」
「リーヤちゃん。トモヨ様やタケ様に、ご迷惑をおかけしてはいけませんのよ。あら、でも本当に美味しいわ!」
「リーヤおねーちゃん。嬉しいのは分かるけど、はしゃぎ過ぎなのぉ。ザハール様、エカテリーナ様、こちらの料理も美味しいですよ。ウチからの直送のお魚ですから」
僕にくっ付いては大騒ぎしているリーヤを母、妹、ザハール、エカテリーナが抑えるという、実に不思議な光景が目の前で展開されている。
「はぁ。僕、今回も大変な役目かもぉ」
今回の宴会は地球からの参加者も多く、宮殿内の料理人も政変の影響でまだまだということもあり、地球は日本から食材込みで料理人が多数送られてきている。
なお、費用は少年皇帝のポケットマネーから。
一部はチエからの補填もあったそうだ、
因みに、物流は最近開通したポータム-帝都間の高規格自動車道を利用している。
少年皇帝が帝都から離れていた時期、今後盛んになる地球との物流をどうするかと問題になり、何も分からない皇帝代行はケラブセオンとレオニードにすべてを任せた。
優秀だったレオニードは、土地問題などなど厄介な事案を1人で解決し、帝都への高規格道路建設の最初の一歩を作り上げた。
その後、勝手の分からぬ地での工事は難航したが、チエの暗躍によりケラブセオンからの高額な資金援助、日本のゼネコンの斡旋が行われ、工事は順調に進み、先日開通となった。
「今日の料理は、ワシが道路建設を頑張ったからなのじゃぁ!」
「すいませんが、私も土地収用で頑張ったのですけどぉ」
今日も元気なチエの横で小さくなっているレオニード。
本来であれば罪人になっていても可笑しくは無いが、帝国守護神チエの斡旋、かつ辺境伯配下にして領主令嬢友人という立場から、今日の宴会に参加している。
先ほどは、リーヤとも笑いながら話していたのが、僕も嬉しかった。
……命のやり取りは勘弁だけど、共に同じ女性を愛する強敵だものね。
なお、他にも皇帝派のみならず、中間派やら保守派の貴族方も呼ばれており、帝都警備担当になったブルーノの元上司スダレンコフ子爵や、かつてリタ姫と戦ったクレモナ伯グリゴリー、邪神に騙されたジェミラ伯オレークの顔も見える。
……さすがに子爵様は肩身が狭そう。
「がはは! ワシが突撃して暴れたから、要塞の情報が入ったのだぁ」
「貴方、美味しいお酒ですが、呑まれすぎませぬ様に」
「オヤジ、酒の味が分かるようになったのかよぉ。お、この鯛は瀬戸内モノかぁ。うめぇー!」
「お父様、お兄様、『調』は恥ずかしいですぅ」
「これでも魔神にしては大人しい方じゃから、しょうがないのじゃ。さて、伯母上。どうじゃ? これが、ワシが作り上げたコネと人材なのじゃ! 面白いのが揃っておるじゃろ?」
「そうねぇ。貴方達に負けたものとしては何も言えませんわ。しかし、甘すぎではないでおじゃるや? わらわだけで無く、デビットも宴に呼ぶとは……」
向こうでは。チエがどこか野性味のある方々と仲良くしている。
話している内容から、チエの家族らしい。
……あの方々は魔神族の王族という訳か。今日は大人しく人間に変化して楽しんでもらっているみたいだけど。
女帝らしき人物、彼女も文句を言いながらも美味しそうにお酒や料理を楽しんでいる様だ。
魔神女帝の処遇に関しては、地球や帝国では対処不可能ということで、チエ経由で魔神女王預かりとなった。
女王様は、今更「姉」を封印するのも面倒だし、殺すのも不憫、そして女帝は暇をさせていると碌なことをしない、という事でチエに彼女を連れまわさせることにしたと聞く。
なので、チエは今日も彼女を宴会に連れて来た様だ。
なお宴会後に、女帝はチエの手伝いで吸血鬼にされた人々や低級魔神と融合したトニーを、時間がかかるが元に戻すらしい。
デビットと組んで行った事態の罪滅ぼしの一環だとか。
「デビット様、大丈夫ですか?」
「ええ、私は大丈夫ですよ、バトラー。ここの皆様は善人すぎて、私では逆に居心地が悪いくらいですね」
そして、今回の主犯たるデビット。
彼も宴に呼ばれた。
地球に帰ったら、確実に国際戦争犯罪者としての訴求が待っており、状況次第では逮捕護送中に「不慮の事故」が起きるかもしれない。
アメリカとしては、国家機密に係っているし、政府内部の事にも関与している。
生きていてもらっては困る可能性が非常に高い。
そんなデビットを少年皇帝は、自らの配下とすべく動いた。
ヒロを配下とした陛下だが、まだまだ地球との「経済戦争」に打ち勝つには人材を必要としていた。
そこにデビットが要塞付きで帝国領内へと落ちてきたのだから、少年皇帝はカモネギと思ったそうだ。
地球、特にアメリカに対して、アメリカ国民であるデビットの身柄を預かる事を宣言した。
その身代わりとして、帝国内に墜落した超科学の塊たる要塞の共同研究をアメリカ、日本主体の形で認めた。
喉から出るほど未知の科学技術を欲しがり、更に帝国への借りができる事にアメリカはデビットを帝国へと渡す事を認めた。
裏工作として、デビットから入手したアメリカ政府の秘密を使ったとも聞く。
なお、日本にも話を通したのは、ポータム経由で研究員を送る場合、どうしても日本を経由しなければならないからだ。
もちろん日本政府は文句の一言も無く承認したらしい。
「デビットさん、少しお話いいですか?」
僕はリーヤと共に、所在なさそうにしていたデビットの元へ向かい、話しかけた。
「宴会シーンになって文量が増えておらぬかや? 登場人物が前作を加えれば100人を越えるのじゃが、コントロールできておるのかや?」
まあ、今回限りですし、そんなに長くはならない、……はづです。
次回は、タケくんとデビットが話し合います。
では、エピローグ2をお楽しみに。
もうちょい、物語は続くのじゃ!
「それでは、ブックマークなぞをよろしくなのじゃぁ!」




