第45話 次なる戦場は、いずこや?
周囲には何も無い宇宙空間。
そこに浮ぶ要塞アバドーン内に警報が鳴り響く。
いたるところから火花が散り、照明も赤色になっている。
CICの正面立体映像モニターには、艦内での異常状態が真っ赤に表示されている。
「ま、まさか人類、エルフのお嬢さんが1人でこの要塞アバドーンを大破させるとは思ってもみませんでしたよ。恐るべしは辺境伯の身内ですね。何ものをも寄せ付けないはずの次元シールドを撃破、更に数十メートルの装甲板を貫通。そして艦内構造物を破壊しつくして、反対側の装甲まで貫くとは……」
デビットは、モニターに映し出されたリタの「砲撃」シーンを再度見る。
城のベランダに出た姫、リタの周囲に沢山の桃色に輝く球体が浮ぶ。
それらは、リタが前に突き出した、短く少女じみたデザインの杖に集約されていく。
「新米魔族の私にも見える程のマナの流れですね」
デビットは、金色の竜眼でリタの映像を見る。
リタには、城下町全体からのマナが続々と集まってきている。
そしてそのマナは、リタの背後に天使の羽状になって顕現した。
「きゅうーきょくおうぎ!」
リタ姫が日本語で呟く音声が、録音されている。
その掛け声と共に杖が赤色に変化した。
「とらんざむ! しゃいにんぐ・ぶれいく・ばすた――!!」
リタが呪文らしき言葉を吼えた瞬間、杖の前に集まっていた桃色の球は一瞬収束したかと思うと、ものすごい勢いで要塞目掛けて射出された。
「この時までは、私も姫を甘く見ていました」
物色の輝く弾は、全長数メートルのもなる桃色の火の鳥の形を成して、要塞の次元障壁へと突き刺さった。
しばらくシールドと拮抗していた火の鳥は、輝きを増してシールドを粉々に打ち破った。
そして数十メートルにも及ぶ特殊装甲を溶断・貫通し、要塞内のほぼ中央を貫いていった。
火の鳥の通過コースはすべて熔解し、可燃物は全て燃えた。
そして直径3kmを越える要塞の反対側端まで走り、もう一度装甲にぶち当たった時に炸裂、装甲板を大きく損傷、破孔させた。
「デビット様。要塞の基本システムが、今ようやく自己復旧をしました。警報・異常個所多数、火災箇所を消火中。正直、あの状態から逃げ出せたのは幸いとも言えるでしょう。主機、相転移動力炉は停止中、補機の対消滅動力炉が50%稼動。超空間航法システムは、電力不足で現在ダウン。通常の重力場推進も能力半分以下です。」
要塞内CICにて、バトラーから被害報告を受けるデビット。
彼の身体や小物類は、ふわりと宙を舞っている。
「それで艦内重力も低下しているのですか。女帝様、申し訳ありません。敵の戦力を、また読みきれませんでした」
「なに。あの小娘1人で、ここまでやれた事を逆に褒めるべきなのじゃ。わらわでも、ここまでは命を使っても出来ぬのじゃ! それに、まだ勝負に負けた訳でもない上に、ここ何処とも知れぬ宇宙ではアヤツらも手出し不能。わらわは、実に面白いものを見せてもらったのじゃ!」
魔神女帝は楽しそうな表情で、球となって浮ぶ琥珀色の高級酒をポイと口に含む。
「バトラー。当要塞が能力を復旧するには、どのくらいの時間が必要ですか?」
「はい。現在表示されている修復予定時間が、おおむね15日前後です。人が行う作業では急かす事もテスト省略も可能ですが、今回は要塞の自己修復能力頼りですので、これ以上の短縮は難しいと思います」
「では、しばし作戦を練るのと休息に時間を使いましょうか。次に襲うのは地球でしょうか、それとも『異世界』と呼ばれる惑星『ゼムーリャ』にしましょうか? 良く考えましょう」
「わらわ、チエともう一度遊びたいのでおじゃる」
「ええ。私もソフィア君とはもう一度会いたいですね」
赤色灯に照らされたデビットの顔は、負けたはずなのに楽しそうだった。
◆ ◇ ◆ ◇
「しかし、すっごいのじゃ! リタ姫殿、此方に火の鳥の術を教えて欲しいのじゃ!」
「えー! わたしでも、もう一回同じ事やってって言われたら、ここまで威力出せるか分からないよぉ。あの時は、皆を守りたいって思ったから出来た気がするし。後ね、この家に居る時は姫じゃないもん。ただの岡本リタだよ!」
今、僕達は地球に帰還している。
リタ姫もアルフ王のお爺様共々安全の為、及び杖の再調整の為に地球に避難をした。
チエの読みでは、大破させられた要塞の復旧にはどう早くても二週間前後が必要。
なら、その間に次に襲いに来るであろう、地球。
若しくは異世界帝国に移動待機するのが定石。
「まあ、僕達にはチエさんのポータルがあるから、基本地球でも異世界帝国でもすぐに移動できるから、戦闘準備の方が大事だよね」
僕はリーヤとリタ姫が、仲良く話しているのを見ながら呟く。
横ではアキトを抱くナナが、楽しそうに2人にちょっかいを入れている。
……魔族とエルフと地球人の女の子が、日本の家屋内で仲良く話しているのって不思議な風景だね。
「そういう事なのじゃ! ワシも明日には人数分の機体が完成するのじゃ! 『精○と時の部屋』、もしくは『時○断層』内の自動工廠3Dプリンターにデータ打ち込んでおけば、完成なのじゃ!」
僕の独り言を拾うチエ。
どうやら、作戦実行のキーであるM2シリーズの量産が無事に進んでいるらしい。
「では完成次第、僕が全員の特訓ですね。訓練時間、間に合いますか?」
機体の慣熟訓練は、そう簡単には出来ない。
M2シリーズは、某ロボゲームでの操作方法を利用しているので比較的楽とは言え、それでも一日二日で出来るものでもない。
「それも『精神と時の部○』で修行すれば良いのじゃ。時間加速スピードは調整できるし、本家ほど高重力でも低酸素でもないのじゃ!」
「チエさん。それ伏字になっていないですって」
あまりに露骨な例えに、僕は苦笑する。
「後、前回のタケ殿のゴレムとの戦闘で分かったのじゃが、M2号初期型では火力不足じゃったのじゃ。パイル、あれは種Gブリッツのランサーダートが元ネタなのじゃが、あれしか通用せなんだのじゃ」
……へー、てっきり『むせる』のパイルが元かと思ってたよ。
「ライフルがM2重機関銃、グレネードがMk.47自動擲弾銃をモデルにしたのじゃが、火力不足じゃったのじゃ」
「確かにもう一手欲しかったですね。接近戦にしても高周波ナイフとか贅沢言うならプラズマトーチとか欲しいです」
せっかくなので僕も贅沢を言う。
こういう場合、贅沢は「素敵」なのだ。
「そこはワシが立案するので、タケ殿は補助頼むのじゃ! 敵は要塞内に多数たむろする無人ゴレムシリーズなのじゃ」
「はいです」
そんな時、僕の携帯情報端末に電話がかかる。
「あれ、カナから?」
僕は電話に出た。
「あ、おにーちゃん! リーヤちゃんとまた会えた事とか、職場変わった事とか。どーしてわたしやおかーさんに連絡しないのぉ!! 心配したんだよぉぉぉぉ」
「し、しまったぁ! ごめん、カナ。忙しくて連絡忘れてたよぉ!」
僕は、急遽リーヤを連れて実家にポータルで移動。
みっちりと一晩かかって母さんやカナに、説明をさせられましたとさ。
「うふふなのじゃ。リタ殿は凄いのじゃ! 11年前に邪神を倒した技がパワーアップしておったのじゃ!」
私、過去の話確認しちゃいましたよ。
名前等はメモってますが、各自の必殺技を全部は覚えていないですし。
「さあ、今度はワシらが逆に要塞内へ強襲するのじゃ!」
で、どうやって内部進入するんですか? 今の要塞の場所はチエちゃんには分からないでしょ?
「作者殿の頭の中にもぼんやりとしか要塞の座標が無いのじゃが、そこは弟がやってくれたのじゃ!」
へー、「槍」くんが頑張ったんですね。
「そうなのじゃ! 詳細は明日の更新なのじゃ! ブックマーク等募集中じゃぁ!」
ではでは!




