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僕は異世界で美幼女姫様と刑事をする。〜異世界における科学捜査の手法について〜  作者: GOM
第2章 捜査その2:領主暗殺未遂並びに美幼女誘拐事件

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第5話 新米捜査官は、領主に謝られる。

「さて、コレどうしようかな」


 僕は、泣き疲れて寝てしまったリーヤを見て困惑する。

 リーヤの腕は僕の部屋着をしっかりと握り、その体重を全部僕に押し付けている。

 その高い体温と、どこか甘い匂いは僕に気持ちよさを与えてくれる。


「このまま男の部屋で朝まで一緒という訳にはいかないよね。と、言って側仕えの方とか呼ぶにしても、僕が動けない以上どうしようもないし」


 とりあえず、リーヤが寝冷えしないように毛布を二枚重ねてリーヤに被せる。


「さて、思案のしどころだぞ、タケ」


 僕にとってリーヤは、大事な宝石みたいな子。

 日頃の姉みたいな時、さっきみたいな妹の時もある。

 そっと触れる事は出来るけど、汚すことなんて一切考えられない。


 ……どうやってリーヤさんを起こさず、かつ体面を傷つけずにリーヤさんの寝室まで運ぶか?


「深夜遅くにすまない。ウチのバカ娘がお邪魔しているのだが、大丈夫かな?」


 僕が困り果てていた時、ノックと共に聞こえてきたのが、領主ザハールの声だった。


  ◆ ◇ ◆ ◇


「す、すいません。自分はリリーヤ様には指一本触れては、いや結構撫でちゃっていますし、今も膝枕状態ですが、一切やましい事は致しておりませんです!」


 僕は部屋に1人で入ってきたザハールに、リーヤが起きない限界の声で混乱しつつも謝罪をした。


「大丈夫だよ。すまないが、さっきからキミ達の会話は聞かさせてもらっている。だから、事情は全て理解しているよ。まあ、日本語で話されていたから翻訳が大変だったけれどね」


 苦笑いをしつつ、僕とはリーヤを挟んでベットに座るザハール。

 その眼は娘を溺愛する父親のものに見えた。


「あ、あの、ザハール様。差し出がましいかと思いますが、リリーヤ様をお叱りにならないで下さいませ。確かに幼子の姿とはいえ、深夜に男の(ねや)に忍び込み、泣き疲れて寝てしまうなんて事は本来あってはならない事。しかし、お母様に追い詰められて実家で孤独に感じてしまった結果、甘えられる自分へと逃げてしまっただけです。(とが)を受けるのであれば、それを許してしまった自分です」


 僕は、リーヤを庇う言葉をザハールに言った。


「おいおい、そこまで私は度量が狭くは無いぞ。第一キミ達を咎めるつもりなら、1人でお忍びなぞして、この部屋までは来ないさ」


 そう言って、リーヤに優しく触れるザハール。


「この子に重圧を掛けすぎていたのが分かっていた。だから、逃げる事も認めて逃げ先を与えたのだ。その先でキミのような甘えられる存在、それも異界地球人に出会うとは私も想定外だったがな」


 僕の眼を見て微笑しながら話すザハール。

 やはりこの人は、リーヤを大事に思ってくれているのだ。


「しかし、地球人と(えにし)が出来るとはな。もちろんキミが思っている通り、リーヤとキミでは文字通り世界が違う。しかし、リーヤを大事に思うなら、ずっと横に居てリーヤを見守っていて欲しい。立場がある私では、もう幼子としてリーヤを構う事は難しいのだ」


 真摯に地球人の平民に語って娘を託すザハール。

 僕は、その思いに答えなくてはならない。


「ザハール様。先程、リリーヤ様に直接お答えしましたが、自分は生涯をかけてリリーヤ様にお仕え致しますから、ご安心くださいませ。まあ、こんな若造で大した魔力も武勲も無い地球人ではありますが」


「何、こうやって(リーヤ)が最大級警戒を解いて、寝姿まで見せる相手だ。キミ自身が思うよりも随分と『強い』と思うよ。だって、今もリーヤの心を守ってくれたじゃないか。タケ殿、今後とも娘を宜しく頼む」

「はい」


 僕はザハールに娘を守る「盾」として見初められたのだ。

 その期待には必ず答えないといけない。


「そうそう、リーヤはキミの事を随分と褒めていたぞ。ペット扱いっぽかったけれどね。なんでも美味しいご飯を作ってくれたとか、震える足で前に立ち塞がってくれたとか。ルーシエン(マム)からも色々と聞いているね。まさか、リーヤがあれだけ日本語が上手くなるとは思わなかったよ」


 ……僕、一体皆に何言われているんだろうか?


「でね、リーヤの事は、今まで通りリーヤって呼んであげて欲しい。その呼び方で娘を呼んでくれるのは、今や私とキミ達だけになってしまったんだ。昔、姉や兄からそう呼ばれて可愛がられていたし」


「あ、あのぉ。不敬では無いのですか? ファーストネームを愛称で呼ぶのは、貴族社会では余程親しい関係か家族だけのはずですが」


 僕は、ちょっとおどおどしながらザハールに聞いた。


「大丈夫、キミ達は十分家族同然さ。従者以上、恋人未満を守ってくれて、友人としていてくれるなら私は一切関与しないよ」


 ザハールの、いたずらっ子っぽい表情。

 その裏には娘を泣かすような事をしたら、また手を出したら許さないぞってのが見えた気がした。


「は、はい。絶対リーヤさんを悲しみで泣かすような事は致しませんから」


「ぷ! じゃあ喜びの涙は今回みたいに、いっぱい泣かせてあげてくださいね」


 僕の慌てた感じが可笑しかったのか、笑ってしまうザハール。


「これ以上私やリーヤがお邪魔したらキミが寝られなくなるよね。じゃあ、私がリーヤを寝室に連れて行くね」


 そうザハールが言うと、テレキネシスでふわっとリーヤが(ちゅう)に浮かんだ。


「では、若きナイト君。おやすみ。良い夜を」


 そう言ってザハールはリーヤを連れて僕の部屋から去った。


「ふ、ふぅぅぅぅ!」


 僕は最大級のため息をついた。


「もう、僕はリーヤさんとは離れられないのね」


 でもその束縛は甘くて優しいもの。

 こんな束縛なら、ずっとでも構わない。


 そんな思いと、ほのかなリーヤの甘い匂いに包まれて、僕は眠りについた。

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