第62話 「海ほたる」での戦闘:その3「閃光と竜殺し!」
「今は此方の不可視フィールドが作用しておるが、これはいつまでも持つものでも無いのじゃ。戦闘開始したらおそらく此方だけしか、効果範囲にはおれまい」
今、僕達「海ほたる」突入部隊は、1階の大型車輌駐車場に居る。
「ですよね。固まっていたら、そこに手榴弾とか放り込まれたら御終いですものね。如何なリーヤさんでもシールドと不可視の同時展開は難しいですよね」
「うみゅ、正直少し厳しいのじゃ。それに此方守りよりも攻めが強いのじゃ!」
高野山組のシンミョウさんは、防御・補助魔法特化型らしく、防御シールドを攻撃手段に使えるらしいが、それは特殊な例だ。
……確か、チエさんが作った補助魔術具でパワーアップしているって言ってたよね。
「せっかく攻撃力が大きいリーヤさんを守りに使うのは、もったいないですね」
「皆、少し静かに。敵の気配がしますの」
「ええ、坊やお嬢ちゃん達、戦闘準備よ」
僕とリーヤが緊張を解す為に雑談していた時、アヤメとマムが警告を出した。
「あ、バスが! トラックも!」
僕達の眼に、運転席付近が激しく破壊されているバス、トラックが見えた。
「あ、あれは……!」
ギーゼラから悲痛な声が飛び出した。
「あ……」
ギーゼラの視線の先に、血の海に横たわる警備員らしき人が居た。
……あんなに銃撃痕が……。AKを喰らったのなら……。
「もう手遅れなのじゃ。此方、コヤツらを許さないのじゃ!!」
リーヤが怒りを殺して、悲痛な声で呟く。
「気配からして、ここには3名居ますの。敵を無音で仕留めるわ。敵の殺害許可を出します。上の敵に気が付かせなければ何をやっても構いません」
アヤメは刀の鯉口を切り、指示を僕達に出して戦闘準備に入る。
「バスの陰から出てくるの、30m先の柱の後ろ側、向こう側の出口付近。近くから片付けるわよ」
マムは的確に敵の位置を指示してくれた。
「アイ、マム!」
僕達は活動を開始した。
◆ ◇ ◆ ◇
「CP! こちら一階駐車場A。一体どうなっている? さっきから屋外がうるさいぞ?」
ヘルメットと防弾装備をしっかり装備した壮年の男が、AKMを構えて駐車場に放置されたバスの陰から出てくる。
「こちらCP。ドラゴンが戦闘に入った」
「もう自衛隊が来きやがったのか? こちらの人質無視かよぉ。さすが、神を信じない愚か者達だな」
男は嘲笑しながら、周囲を警戒する。
「いや、それが人間が戦っている。それも剣で……」
「なにぃ!? 一体、そりゃ、どうなって……」
男が通信に集中して警戒を油断した時、男の周囲が無音になった。
「おい、CP! CP!」
通信機に向けて叫ぶも音が全く発生しないのに驚いた男が、前を見た瞬間2人の女が剣を持って踏み込んできたのが見えた。
そして女達の背後には、地面の影から半身を出した褐色の女がいた。
「なにぃ!?」
男はAKMの銃口を女達に向けようとしたが、女達のスピードはそれよりも圧倒的に早かった。
左側から、日本刀を鞘から抜こうとしている黒髪黒目長髪の女。
右側から、細い長剣を前にして突撃してくる耳長で金髪碧眼の女。
彼女達は、閃光の様に男に同時に切りかった。
冷たい感触が男の両手足に走り、次の瞬間灼熱と化す。
そしてヘルメット越しに強烈な衝撃を感じ、男の意識は叫ぶ間も無く消し飛んだ。
◆ ◇ ◆ ◇
「ふぅ。1人撃破!」
僕は、膝立ちから立ち上がる。
僕の持つライフルの銃口から、硝煙がたなびく。
ギーゼラの静穏にて、無音で敵を1人倒したのだ。
「次、柱の向こうをやります!」
「らじゃ!」
……死んでいたらゴメンね。ヘルメット内で頭蓋骨周辺を掠めるように撃ったから、うまくいけば生きてるよね。
僕は、精一杯の狙撃技術を駆使して、男を出来るだけ殺さないようにして撃ち倒した。
……オマエ達は裁判で裁いてやる。死なんて祝福、簡単に与えてやるかよ! 僕は、オマエ達と同じ『人殺し』には絶対ならないからな。
僕達は、次の獲物を狩る準備を始めた。
◆ ◇ ◆ ◇
「くっそー。こいつってば、想像以上に硬いぞ。これじゃ、大技使うしかないけど、そんな隙もないよぉ」
コウタは魔剣「影砕き」の反重力能力で飛行しながら、毒気竜と対峙している。
彼や仲間の周囲には、コウタの呪術により風と水の膜が出来ていて、ドラゴンからの毒ガスを防いでいる
「早速、弱音とは情けないのぉ、コウタ。ヒト族は、そんなに早く老化するのか?」
コウタを煽りつつも、同じく空中で竜相手に苦戦しつつも遠距離攻撃をしかける少年皇帝。
彼の背中には、いつもより大きな蝙蝠の羽があり、両手も黒い鱗と鉤爪を持つように変化している。
「しっかし、確かに硬いのぉ。余の部分限界突破では、パワー不足か。かといって、スーパーモードは時間制限がある上に終われば魔力切れで隙だらけ。どうすべきか?」
皇帝は、両腕の間から漆黒の重力指弾を複数個放つが、竜の鱗に弾かれて殆どが友好打になっていない。
「コウ兄ぃ、陛下ぁ。頑張ってぇ。ボクからじゃ牽制がやっとなのぉ」
ナナは次元門施設屋上のヘリポートから九十九神子機を多数放ち、積極的に竜を攻める。
複数の小刀や和ハサミが何回も竜に突撃していき、望遠鏡や花火筒は遠距離攻撃で竜の動きを牽制する。
ナナの周囲には多数のタイル形九十九神と2匹の狛犬が、主人を守るべく警戒をしている。
「これはかなり危険です。陛下、私も出陣しましょうか?」
アレクは、苦戦する皇帝を見かねて、今にでも飛び出しそうになっている。
「アレク様。ここは私、朧にお任せくださいませ。貴方様はナナ様をお守り下さい」
朧はそう言って華麗な礼をした後、空中に舞い上がり矢の様な速度で竜退治に参戦した。
「コウ兄ぃ、頑張って……」
ナナは、空中の夫の姿を見上げて、そっと呟いた。
「あ、しまった! あっちには船がある!」
コウタは叫ぶ。
コウタ達がうっとおしくなったのか、竜は別のターゲット、東京湾を航行する超大型客船に向かった。
「余からでは間に合わぬ!」
皇帝は飛行速度を上げるも、船から遠い側に居た為、間に合いそうもない。
「私が跳躍します!」
朧が空間に穴を開け、空間跳躍をする。
「俺も跳ぶ!」
コウタも魔剣の力で、超大型客船のトップデッキ上に跳んだ。
「きゃあー!!」
超大型客船のトップデッキには、多くの人達が東京湾を眺めるために出ていた。
自分達に迫る竜を前に、腰を抜かす女性達。
竜は大きく口を開き、毒ガス息を吐く準備をする。
「俺の前で誰も傷つけさせねぇ!!」
コウタは立てなくなっている女性を背後に庇う様に立ちはだかり、こちらに迫り来る竜を睨んで真上に掲げた魔剣より己の力を開放した。
「ナウマク サマンダ ボタナン バヤベイ ソワカ! 風天神烈風斬!!」
コウタは風天神の真言を唱え、振り下ろした魔剣の剣先から、竜巻状の真空衝撃波を放った。
それは竜の放った毒ガスごと竜を巻き込んだ。
ジャリジャリという異音と風が渦巻く音が消え竜巻が消えた後、まだ竜は空を飛んでいた。
「ちっ、これでも足らないのか!」
「いえ、効いていますよ。喰らいなさい、重力結界です!!」
コウタが舌打ちをした時、横に朧が現れ、竜を囲むように漆黒の球を複数個展開、竜を結界の中に閉じ込めた。
「朧さん、ありがとう。しかし、これで倒せないのなら、直接切るしかないか。すーさん、足場作れる? 遠距離からじゃ埒あかないから直接『ラグナロク』叩き込みたいんだけど?」
コウタは魔剣に必殺技を使えるか聞く。
「そうだな、マスター。今の結界に閉じ込めている間ならいけよう」
金属音っぽい声が魔剣から響く。
「なら、行くよ! 奥義『ラグナロク』!」
コウタは空中に虚空瞬動で飛び出し、結界内で身動きが出来ない竜に突撃した。
竜に接敵したコウタの足元、空中に金色3m四方の足場が出来る。
コウタは空に浮かぶ足場を踏み締めて、更に竜に一歩踏み込む。
コウタは、剣先を右下にした脇構えからの、柄による突きに始まる左上への切り上げ、右上からの袈裟切り、右薙ぎ、大上段からの唐竹割り、2連撃平突きの7連撃を竜に見舞った。
そしてもうワンループ、左上切り上げから袈裟、薙ぎ、唐竹、そして最後に体当たり気味の渾身の突きで5連撃、あわせて12連撃。
金色の魔力軌跡を描く切っ先は、戦車砲をも止める竜の鱗すら、いとも簡単に切り裂く。
そして最後の突きは、金色の巨大な槍となり竜の心臓を抉り、勢い余って竜の身体を両断した。
「コウ兄ぃ、かっこいい!! やっぱりボクの英雄だぁ!」
ナナは夫の勇姿を眼に焼き付けた。
「コウタ殿、久しぶりに頑張ったのじゃ! あのワザは御爺様直伝の退魔必殺奥義、あの邪神も倒した技なのじゃ!」
主人公のタケくんやリーヤちゃんには、この先沢山の出番がありますが、コウタくんの出番は基本ココまで。
なら、少しくらい活躍させてあげないとね。
「片手剣二刀流16連撃や九頭龍閃ほどでは無いが、見事な技なのじゃ!」
そうですね。
コウタくんが、ここぞという時に使う代名詞たるワザになっていますね。
まあ、前作主人公が出張りすぎるのは、問題なんですが。
ここから先は、タケくん達の戦いです。
明日の更新をお楽しみに。
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