第41話 新米騎士爵は、更に事件を調査する。
「それで、犯人達から証言は取れたのですか?」
僕、マム、リーヤにチエは、今日旅行6日目も東山警察署へ赴いている。
まだ事件の全貌が見えず、京都市内も厳戒態勢のまま。
こんな状況では、お気楽に観光旅行という気分でも無い僕達は、治外法権を盾に事件へ介入しているのだ。
なお、休暇は陛下の一声で更に延長中である。
「それが、一切しゃべってくれないんですよ。神がどうのとか、なんで天国へ贈ってくれないかとか、そんな事は言うのですが、誰が首謀者なのかとか、どうやって入国したのか辺りになると、だんまりなんです」
ミナカミは、昨日よりは態度を軟化させて僕達に話す。
「そうなんですか。あ、ミナカミさん。昨日も言いましたけど、僕に敬語は不必要ですから。同じ警察同士ですし、僕は巡査。まあ、今日は帝国貴族の立場使っていますけど、事件に係ってしまった以上無視というのが、僕は出来ませんから」
僕は、我ながら異世界貴族身分を使うのがイヤラシイとは思うも、自虐的にミナカミに話した。
「なら、モリベと呼ぶぞ。昨日は、すまなかった。事件で気が動転していた上に、訳の分からないお前たちが勝手に逮捕までしちまったから、気が立ってしまって……」
ミナカミ、苦笑しながら僕に話す。
「僕は一切気にしていませんから。第一、ウチの上も悪いんですからね」
僕はマムとチエをジトメで見る。
なお、今日はフェアはお留守番、キャロリンとフォルが喜んで子守をしている。
……キャロリンさんにとっては御褒美なのかもね。
僕はキャロリンが蕩けた笑顔でフェアを抱いている姿を想像した。
「そうなのじゃ。此方、せめてカツ丼が来るまでは我慢できたのじゃ!」
リーヤは、元気そうにジュースを飲みながら、すこしピントがずれた答えをする。
……リーヤさん、日本のドラマのお約束に毒されすぎてませんか?
「さて、ワシが彼らの装備を見た感じじゃが、AKはアメリカで生産されておった民間向けセミオートを違法改造したタイプじゃったな」
「流石は魔神様ですね。はい、県警の科捜研の方からもそのような情報が入っています」
オオムラは、今日も冷房が聞いた部屋の中で大汗を書きながらチエに答えた。
犯人達が使用した武器、AKシリーズは第二次大戦後にソ連で開発された突撃銃。
炸薬をフルサイズライフル弾より減らして撃った時の反動を抑え、全自動連射をしやすくした自動小銃を突撃銃という。
そのうち最も初期に開発され、世界中を席巻した「小さな大量破壊兵器」がAK-47。
東ティモール、ジンバブエ、モザンピーク等の国旗にも描かれている「革命」の象徴。
今回、犯行に使われたのが、それの改良型AKMのこれまた民間モデル。
アメリカでもセミオートモデルは正規ルートで販売されており、この銃に使われる弾が拳銃弾よりも安く販売されていると聞いている。
「更に会話を聞いたのでは、アラブ系にしては英語に訛りが少なかったのじゃ。アメリカ国籍なんじゃろ、犯人は?」
「そこまでお見通しなら、私共がいう事は何もないですね」
オオムラ、チエの明快な推理に脱帽らしい。
「すいません、わたくしからお聞きして宜しいですか?」
マムが軽く挙手してオオムラに聞く。
「はい、どうぞ。ルーシエン様」
「あら、様はいいですのにぃ。さて、今回の事件は、たまたま陛下が巻き込まれた、その解釈で良いのですわね」
マム、帝国側として陛下がターゲットの事件なのかを確認する。
「はい、それは間違いなく。何せ、犯人どもは貴方様達の話をしたら、震え上がってしまうくらい畏れていましたから」
おどけて両手を上に上げるオオムラ。
僕の想像通り、今回僕達が事件に巻き込まれたのは偶然、たまたま自爆テロの自爆しそこなった犯人に会っただけの事の様だ。
……にしても、偶然過ぎるのは確かだね。
〝そこは第四の壁の向こう、楽屋裏の事情なのじゃ! タケ殿は気にせぬで良いのじゃ!〟
内心の思いに、意味不明の内容で早速突っ込んでくるチエ。
……そう言われたら余計に気になるんですけど。
〝そこは絶対に大丈夫なのじゃ! 男は細かい事を気にするのではないのじゃ!!〟
「では、わたくし達は善意の第三者という立場で宜しいですわね。それでは、タケ。後は貴方が判断しなさい。これ以降貴方はどうしたいのですか?」
マム、僕の方を見て微笑みながら問う。
僕の立場は帝国・日本どっちにもある。
どちらの立場に立ち、どの身分・役割を使って動くのか、そうマムは僕に聞いているのだろう。
「タケ、此方はタケの言う通りに動くのじゃ。タケの国を荒らした愚か者共、此方も許せないのじゃ!」
「ワシは、今回オブザーバーじゃ。タケ殿に従うのじゃ!」
のじゃ幼女2人とも、僕に好きに動けと言う。
なら、僕がどうするかは決まっている。
「オオムラさん、ミナカミさん、御願いがあります。僕達を犯人に会わせて頂けませんか? 出来たら彼らから証言を得たいんです。僕自身、今回の事件はあくまで通りすがりです。しかし、出来る事なら事件解決のお手伝いをしたいんです」
僕は2人の刑事の眼をはっきり見ながら話した。
もう事件は僕の手を大きく離れていて、国際規模になっている。
しかし、犯人の怯えながらも自爆しようとしていた姿が目に焼きついていて、しょうがない。
彼らから詳細を聞くことで事件解決の糸口を得られたら嬉しいし、犯人達もある意味救ってやりたい。
「タケ殿、そう来たか。タケ殿もコウタ殿の事を言えぬ、お節介焼きのお人好しじゃな」
「タケは、お人好しに決まって居るのじゃ! 此方が一番好きな男なのじゃから、当たり前なのじゃ!」
「やっぱりね。はい、マムはお手伝いしますわよ!」
3人の美女は最初から僕が出す「答え」を知っているかのように笑顔で話し合う。
「はー、しょうがないですな。皇帝直属のモリベ閣下の御願いなら聞きましょう。その代わり、魔法でも何でも使ってでも証言を得て欲しいものです。あ、今のは独り言ですわい、はははは! ただ、無茶に無理は禁物ですよ」
「モリベ、そんなんじゃお前長生きできないぞ。なんでも首突っ込んでいたら、身体や命がいくつあっても足りはしない。リーヤ譲ちゃん、コイツちゃんと守ってやるんだぞ」
2人の刑事は、僕の意見を快諾しつつも心配してくれた。
「ミナカミ殿、心配せぬでもタケの事は此方が一生守るのじゃ! 此方、これでもタケの婚約者なのじゃからな!」
リーヤは、いつものドヤ顔で答えてくれる。
……リーヤさん、僕はキミのその笑顔の為ならいくらでも戦えるんですよ!
タケくん、お人好しにも事件に首突っ込みます。
「しょうがないのじゃ。ワシ含めてコウタ殿に関係した人は皆、お節介焼きのお人好しになってしまうのじゃ!!」
チエちゃんも、こう申していますね。
では、明日の更新をお楽しみに。




