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僕は異世界で美幼女姫様と刑事をする。〜異世界における科学捜査の手法について〜  作者: GOM
第1章 捜査その1:貴族街殺人事件

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第16話 新人捜査官は、大物退治をする!

「『火炎球(ファイヤーボール)』じゃぁ!」


 リーヤが、アイアンゴーレムの頭部に火炎弾を叩き込んだ。

 そしてゴーレムが怯んだ隙に僕はしゃがみ込み、2脚を展開して射撃体勢に入る。


「ヴェイッコさん、助けに来ましたよ!」


 そして僕はゴーレムの首元、関節の隙間を狙ってダブルタップ(2連発)ライフル(7.62mmNATO)弾を撃ち込んだ。


 ガキィ!


 僕の撃った弾はゴーレムの関節隙間に入り込み、そこで火花を上げた。


 ……うーん、後一歩。通常弾じゃ苦しいか。炸薬のホットロード(強装弾)、かつ貫通魔力充填した徹甲弾スペシャルでやっとかな?


「ヴェイッコ、良く頑張りましたね!」


 マムは負傷者の下へ駆け寄り、防御結界を張りながら治療を開始している。


「マム、リーヤ姉さん、タケ殿! かたじけないでござる!」


 ヴェイッコがゴーレムの攻撃をかわしながら叫ぶ。


「どう致しましてじゃ。しかし、此方(こなた)火炎球(ファイヤーボール)でも駄目なのじゃ。こうなったら、秘宝(アーティファクト)壊しの大規模術、『粉砕の嵐(シャッターストーム)』をするのじゃ!」


 リーヤはヤケになっているのか、とんでもない呪文名を言う。


 ……アレって、聞いた感じだと周囲全部の機械壊すんだよね。もし、そうなら僕達の武器や装備も全滅だぞ。


「リーヤさん、落ち着いてよ。そんな呪文使ったら勝てても僕達装備全損だよ。最悪、僕達だけ手ぶらでゴーレムぴんぴんって事もあるから、そんなの唱えないでよぉ!」


「う、しょうがないのじゃ。なれば、喰らうのじゃ! 『球電(ボール・ライトニング)』!!」


 リーヤの手から球電がバチバチ鳴りながら転がり、ゴーレムにぶち当たる。

 どん! という衝撃音がするも、着弾点が少し焦げただけで、ゴーレムは無事だ。


 ……やっぱり装備全損だったのかよ!


 しょうがない、こうなったらアノ弾を撃つしかない。


「マム、ヴェイッコさん、リーヤさん。僕が強装徹甲弾をゴーレムの弱点、印に対して撃ちますから、それまでゴーレムの引付(ひきつけ)をお願いします。出来たら、ゴーレムの印の場所を探してくれると非常に助かります」


「ええ、任せてね、タケ」

「了解でござる、タケ殿」

「それだけ言うのじゃ、決めて見せるのじゃ、タケよ!」


「はい!」


 僕は、急いで広場に面した建物の窓を探す。


「あ、あそこだ!」


 僕は、急いで空き家の階段を登り、鍵をぶち壊して窓際に立つ。

 そして2脚を展開、足場をがっちり固定させる。


「さあ、いくぞ!」


 僕は、銃から20発が入る弾倉(マガジン)を抜く。

 コッキングレバーを引きボルト(遊底)を動かして、銃から装弾された通常弾を抜く。

 通常弾は忘れずにポーチへ。


 ……これ()無くしたら始末書モノだし、足元に落すと転ぶんだよね。僕の銃はカート(空薬莢)キャッチャー付いているから、まだ大丈夫だけど。


 そして、ポーチから取り出した10発特注(スペシャル)弾入りの弾倉を差込、ボルトリリースレバーを動かす。

 これで、初弾は銃に無事装填された。


「狙うは、呪文の印!」


 古来よりゴーレムには動かす為に呪文を掘り込んだ場所が、どこかにある。

 よく額とか胸元に「אמת」と書かれていて、「ת」の文字を削れば壊れるというのが通常のパターンだ。


「タケ、弱点はココよ!」


 マムが光る球を呪文が掘り込まれた頚部に貼り付けて(マーキング)くれた。

 

「はい、ありがとうございます!」


 さあ、深呼吸。

 この一発が勝負の分かれ目だ!


 吸って……。

 吐いて……。

 吸って……。

 吐いて……。

 吸って……。


 心拍を落ち着かせるために、そして酸素を体内の隅々まで取り入れるために、深呼吸。

 

 息を止めて狙って……。

 右目で見る8倍スコープの中心に、ゴーレムの弱点が見えた!


 左目からは、デザートイーグルを叩き込むヴェイッコ、雷撃を放つリーヤ、そして華麗な舞でゴーレムの攻撃を捌くマムが見えた。


 僕は、ゆっくりと狙いを定める。

 そして引き金は、指で引き絞るのでは無く、霜が振るごとく落とす!


 ぱしぃ!


 ドスン、ミチィとした衝撃が銃床(ストック)を通じて僕の肩に突き刺さる。


 キン!


 僕の撃った弾は、狙い違わずゴーレムの頚部に命中する。

 弾は一瞬ゴーレムの装甲に弾かれそうになるも、弾丸に付与されている魔法の光が輝き、そのままゴーレムの装甲を貫く!


 ピキ!


 ゴーレムは、僕の放った銃弾を受けた部分からヒビが入りだした。


「トドメじゃ。『粉砕(シャッター)』!」


 リーヤから飛んだ赤い小さな魔力弾はゴーレムに突き刺さり、そのままゴーレムを文字通り粉々に粉砕した。


「ふぅぅぅ!」


 僕は、大きなため息を付き、酸欠の頭脳と身体に酸素を沢山取り入れた。

 銃床(ストック)を受け止めた右の肩がズキズキと痛むが、下に見える皆の笑顔を見たら、その痛みも吹き飛ぶ。


「タケや、すごいのじゃ!」

「見事でござるよ、タケ殿!」

「お疲れ様、タケ!」


 僕にとって初の大金星。


 ……父さん。僕、皆の役に立てたかな?


 しかし、息をつくまもなく、ギーゼラから連絡が入る。


「こちら、ギーちゃん。トニーのバカ、ホノリア邸に入り込んで、奥様達を人質にして立てこもったぞ。早く助っ人頼む!」


 今度は、立てこもり犯。

 急いで現場に向かわないといけない。


 僕の脳裏に幼い姉弟の姿が浮かぶ。


 ……子供に指一本でも手を出してみろ、生きていることを後悔させてやる!


 僕は節々が痛む身体に鞭打って、走った。

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