第16話 新人捜査官は、大物退治をする!
「『火炎球』じゃぁ!」
リーヤが、アイアンゴーレムの頭部に火炎弾を叩き込んだ。
そしてゴーレムが怯んだ隙に僕はしゃがみ込み、2脚を展開して射撃体勢に入る。
「ヴェイッコさん、助けに来ましたよ!」
そして僕はゴーレムの首元、関節の隙間を狙ってダブルタップでライフル弾を撃ち込んだ。
ガキィ!
僕の撃った弾はゴーレムの関節隙間に入り込み、そこで火花を上げた。
……うーん、後一歩。通常弾じゃ苦しいか。炸薬のホットロード、かつ貫通魔力充填した徹甲弾でやっとかな?
「ヴェイッコ、良く頑張りましたね!」
マムは負傷者の下へ駆け寄り、防御結界を張りながら治療を開始している。
「マム、リーヤ姉さん、タケ殿! かたじけないでござる!」
ヴェイッコがゴーレムの攻撃をかわしながら叫ぶ。
「どう致しましてじゃ。しかし、此方の火炎球でも駄目なのじゃ。こうなったら、秘宝壊しの大規模術、『粉砕の嵐』をするのじゃ!」
リーヤはヤケになっているのか、とんでもない呪文名を言う。
……アレって、聞いた感じだと周囲全部の機械壊すんだよね。もし、そうなら僕達の武器や装備も全滅だぞ。
「リーヤさん、落ち着いてよ。そんな呪文使ったら勝てても僕達装備全損だよ。最悪、僕達だけ手ぶらでゴーレムぴんぴんって事もあるから、そんなの唱えないでよぉ!」
「う、しょうがないのじゃ。なれば、喰らうのじゃ! 『球電』!!」
リーヤの手から球電がバチバチ鳴りながら転がり、ゴーレムにぶち当たる。
どん! という衝撃音がするも、着弾点が少し焦げただけで、ゴーレムは無事だ。
……やっぱり装備全損だったのかよ!
しょうがない、こうなったらアノ弾を撃つしかない。
「マム、ヴェイッコさん、リーヤさん。僕が強装徹甲弾をゴーレムの弱点、印に対して撃ちますから、それまでゴーレムの引付をお願いします。出来たら、ゴーレムの印の場所を探してくれると非常に助かります」
「ええ、任せてね、タケ」
「了解でござる、タケ殿」
「それだけ言うのじゃ、決めて見せるのじゃ、タケよ!」
「はい!」
僕は、急いで広場に面した建物の窓を探す。
「あ、あそこだ!」
僕は、急いで空き家の階段を登り、鍵をぶち壊して窓際に立つ。
そして2脚を展開、足場をがっちり固定させる。
「さあ、いくぞ!」
僕は、銃から20発が入る弾倉を抜く。
コッキングレバーを引きボルトを動かして、銃から装弾された通常弾を抜く。
通常弾は忘れずにポーチへ。
……これ無くしたら始末書モノだし、足元に落すと転ぶんだよね。僕の銃はカートキャッチャー付いているから、まだ大丈夫だけど。
そして、ポーチから取り出した10発特注弾入りの弾倉を差込、ボルトリリースレバーを動かす。
これで、初弾は銃に無事装填された。
「狙うは、呪文の印!」
古来よりゴーレムには動かす為に呪文を掘り込んだ場所が、どこかにある。
よく額とか胸元に「אמת」と書かれていて、「ת」の文字を削れば壊れるというのが通常のパターンだ。
「タケ、弱点はココよ!」
マムが光る球を呪文が掘り込まれた頚部に貼り付けてくれた。
「はい、ありがとうございます!」
さあ、深呼吸。
この一発が勝負の分かれ目だ!
吸って……。
吐いて……。
吸って……。
吐いて……。
吸って……。
心拍を落ち着かせるために、そして酸素を体内の隅々まで取り入れるために、深呼吸。
息を止めて狙って……。
右目で見る8倍スコープの中心に、ゴーレムの弱点が見えた!
左目からは、デザートイーグルを叩き込むヴェイッコ、雷撃を放つリーヤ、そして華麗な舞でゴーレムの攻撃を捌くマムが見えた。
僕は、ゆっくりと狙いを定める。
そして引き金は、指で引き絞るのでは無く、霜が振るごとく落とす!
ぱしぃ!
ドスン、ミチィとした衝撃が銃床を通じて僕の肩に突き刺さる。
キン!
僕の撃った弾は、狙い違わずゴーレムの頚部に命中する。
弾は一瞬ゴーレムの装甲に弾かれそうになるも、弾丸に付与されている魔法の光が輝き、そのままゴーレムの装甲を貫く!
ピキ!
ゴーレムは、僕の放った銃弾を受けた部分からヒビが入りだした。
「トドメじゃ。『粉砕』!」
リーヤから飛んだ赤い小さな魔力弾はゴーレムに突き刺さり、そのままゴーレムを文字通り粉々に粉砕した。
「ふぅぅぅ!」
僕は、大きなため息を付き、酸欠の頭脳と身体に酸素を沢山取り入れた。
銃床を受け止めた右の肩がズキズキと痛むが、下に見える皆の笑顔を見たら、その痛みも吹き飛ぶ。
「タケや、すごいのじゃ!」
「見事でござるよ、タケ殿!」
「お疲れ様、タケ!」
僕にとって初の大金星。
……父さん。僕、皆の役に立てたかな?
しかし、息をつくまもなく、ギーゼラから連絡が入る。
「こちら、ギーちゃん。トニーのバカ、ホノリア邸に入り込んで、奥様達を人質にして立てこもったぞ。早く助っ人頼む!」
今度は、立てこもり犯。
急いで現場に向かわないといけない。
僕の脳裏に幼い姉弟の姿が浮かぶ。
……子供に指一本でも手を出してみろ、生きていることを後悔させてやる!
僕は節々が痛む身体に鞭打って、走った。




