第7話 新米捜査員は、温泉でくつろぐ。
「ふー、今日は大変だったぁ。気分はアイドルのマネジャーですよぉ」
今は夕刻、僕達はチエが用意してくれた保養所に移動した。
そしてまずは一汗流すのに集団露天浴場にて、ここ自慢の温泉に漬かっている。
「まあ、ご苦労。余も十分楽しめたぞ。しかし、この温泉とやら良いな。地下から湯が出る井戸をくみ上げているそうだが、これは帝都にできそうか、タケよ?」
少年皇帝も今は、僕と一緒に湯の中。
御付のアレクも横にいるとは言え、ゆったりとリラックス中だ。
陛下、御付の方に身体を洗ってもらえるからなのか、裸体になるのに案外抵抗がないらしい。
他にも数名、見たことがない男性も入っていて、こちらをちらちら見ている。
「そうですねぇ。地下に熱源、この場合は火山や地殻由来の溶岩とかがあれば出来ます。ただ、帝都は地殻が安定していて地震も起きないですので、本当の意味での温泉は難しいと思います。冷たい冷泉を温めるのなら可能ですけれど」
「そうか、それは残念だ。ということは、日本は火山や地震が多いのか?」
残念そうに呟く少年皇帝。
よほど温泉が気に入ったらしい。
「はい。火山は、えーっと確か100個くらいあった気がします。地震は、この土地自身が地面の動き、プレートテクトニクスによって出来た島ですので、いたるところで定期的に発生しています。ここ40年間でも2回数千から二万程の人が地震災害で亡くなっています。それと多分あと20年以内にも大型地震が来ると予想されています」
後から確認したところ、日本の活火山は111個、四国以外全国に点在している。
また1995年の阪神大震災、2011年の東日本大震災、そして迫り来る南海トラフ大地震。
「おい! タケやコウタ達は、そのような危険な地に住んでおるのか!?」
「僕は今、そちらに住んでいますが、その通りです。他にも風水害、台風なんかは毎年どこかで被害が発生していますね」
他にも台風などなど日本に住んでいる以上、災害はいつ何時襲ってくるのか分からない。
「タケ殿、それはびっくりでござるよ。日本は時代劇の時代からそうでござるか?」
「はい。時代劇で描かれる江戸時代よりも以前、今から1500年以上前から記録が残っていまして、頻繁に災害が訪れているのが確認されています。約800年程前鎌倉時代の元寇、外国からの侵略も日本が抵抗し上陸させなかったので、トドメに海上で台風に襲われた訳ですし」
ヴェイッコは頭の上に手ぬぐいを乗せ、湯船に座り込んで僕と陛下の会話に加わる。
日本人は昔から記録魔、湯上がり後に確認したら西暦416年の允恭地震の事が日本書紀に残っており、430年頃には東日本大震災と同じ震源域の巨大地震、そして684年には南海トラフ地震として白凰地震が発生しているそうだ。
そして近年の研究により、元寇は日本は九州の戦力だけで元の上陸を妨害し、敵殲滅に成功したらしい。
一時期は日本が苦戦した後に「神風」台風により勝ったように言われていたが、現実には元軍は上陸することが出来ず、長期間沖合いの船に逗留せざるを得ない状態での台風だったそうだ。
「何故、日本人は他の地に逃げる事を考えぬ? 普通、ここまで呪われた地で住もうとは思わぬぞ」
陛下は首を傾げる。
地震雷火事おやじ(笑)、台風に集中豪雨。
確かに日本という土地は、災害、自然との戦いの地である。
「確かにデメリットだけ考えたらそうでしょうね。しかし、ここは大陸から離れた島国。逃げる先など何処にもありません。またこれら災害は別の意味では恵みをもたらすのです。例えば温泉、これは火山や地震が起きる地で無いと出来ません。またこれらは豊かな金属資源を産み出します」
温泉から熱水鉱床・鉱脈、ギーゼラの故郷にある様なスカルン鉱脈等が生まれる。
「また多くの降雨は、山間部の森林から肥沃な土を洪水などにより下流に送り、田畑を潤し肥やし、作物を豊作へと導きます。なので、多くの人々を養う事が出来て、江戸の町は300年ほど前、暴れん坊将軍の時代には既に100万人都市だったようです。今はその10倍以上ですけど」
海外では放置した土地は痩せているために荒地のまま、良いところ牧草地にしかならない。
しかし日本ではあっというまに草が生い茂り、林となり最後は森となる。
土地の「地力」がヨーロッパ等と違って桁違いに強いのだ。
「なにぃ! 今の帝国全土でも人口は100万もおらぬぞ。おそるべし日本よ。なるほど、これほどにもメリットの方が大きいから逃げぬのか。それで災害から助け合いをして忍耐深いお人好しな国民性になったのだな」
「まあ近代は戦争も少なかったので、こんな感じですね。ただ、80年ほど前もそうでしたが、一度戦士として戦いだすと団結してとことんやっちゃうので他所の国からも日本の再武装化は警戒されてます。僕個人としては、防衛の為の『牙』、戦力は持っておいて当たり前ですけれど」
江戸時代以前は、誰もが武具を持ち殺伐としていたらしいが、江戸幕府が300年間平穏を守ったために、今の国民性が築かれたとも聞く。
それでも明治後半から昭和20年までの戦乱期は、色々とやらかしたのも事実。
遺憾に思うレベルまでなら大人しいが、限界超えた途端いきなり宣戦布告までやっちゃうのだから。
「普段は大人しいが怒らせたら怖いのは、コウタやナナ、タケで十分理解している。タケ、キミも十分怖いよ。邪神の眼に唐辛子ぶち込むのはキミくらいだって」
少年皇帝は、僕に対し歳相応の笑顔で話す。
「えー、だってせっかくある手段なのですから、使わない手は無いですよ。それに相手は邪神、一切手加減できません。人間相手じゃあるまいし、卑怯といわれてでも策を講じます」
僕は、えっへんとして陛下に言い返す。
「はいはい。分かったから、次回からは僕を巻き込まないようにね」
「御意でございます」
僕は半分ふざけて陛下に仰々しく答える。
「御願いするよ、タケ。これは友達としての御願い。なんかイヤな予感するんだよね。タケ、キミは仲間、特にリーヤに何かあったら周囲に一切手加減せずに酷い手で敵を殲滅しそうなんだもん」
「は、はい。重々注意して置きますです。では、陛下。そろそろ出ますか。イイ加減長湯すると湯当りしちゃいますよ」
僕は周囲を見て湯船から上がろうとした。
「あ、ダメだこりゃ」
陛下に頑張って付き合っていたアレク、そして毛皮があるにも係らず長湯をしていたヴェイッコが湯上がっていた。
「すいません、陛下。この2人ダウンしちゃっていますので、僕が助け呼んできます。あ、申し訳ないですが、周りの方助けてくれませんか?」
僕は周囲の人に助け舟を願い、急いで脱衣所へ向かった。
よく見ると、ヴェイッコ内緒でとっくりを持ち込んで先行で月見酒をしていた様だ。
「そりゃ、ダメだよね」
……飲酒しながらの長湯は危険なので、決して良い大人はしないように。もちろん子供は論外だぞ!
なお、女湯でも何人かは湯当りをしていたらしく、更にチエによるセクハラが行われたと聞いた。
「今回は女湯から追い出されなかったのじゃ! ワシも学習するのじゃ!」
……セクハラの度合いを学習するってどーなんだろうねぇ。
〝そんなの、ワシの勝手じゃ! そこに『山』があるのじゃ。上らんでどうするのじゃ! そして『頂』にビバークするのじゃ!!〟
内心の呟きにまで尚も干渉する魔神。
魔境にすっかり入り込んでしまった事を実感してしまう僕であった。
今日は、絵面的には陛下以外はあまり綺麗でない男湯です。
明日はお楽しみ、女湯です。
しかしR15の規制範囲ですよ、たぶん。
「ワシ、ビバークしたのじゃ。チョモランマ級じゃぞ」
チエちゃんのえっち(笑)
では、明日の更新をお楽しみに。




