第34話 新米捜査官は、計略を練る。
「オレークはナニモノかの手により操り人形と化していたという事か」
「おそらくですが、医療データはそれを裏付けています」
キャロリンは、少年皇帝にオレークが薬物によるマインドコントロールを受けていた事を報告した。
「オレークよ。何か変わった事があったのを覚えていないか? 遺跡に最後に一緒に居たのは誰だ?!」
陛下は、ベットに横たわるオレークを問い詰める。
「遺跡に最後まで一緒だったのは古くからの側近であったヴコールと、後1人。え、どうしてあんなのが一緒だったのだ?! 分からん、何故だ?!」
オレークは自供をしている途中で、大声を上げた。
「おい、落ち着くのだ。オレークよ、何があったのだ?!」
「はい、申し訳ありません。最後に遺跡に居た者の内、1人に心当たりが無いのです。何故か、いつのまにか側近の中におり、私に色々助言をしました。遺跡の起動を提案したのも彼でした」
どうやら、諸悪の根源がオレークの身近に潜んでいたらしい。
「そやつ、彼というのだ。男であろうが、どのような風体なのだ?」
「今になれば顔形がぼんやりとして思い出せませぬが、漆黒の肌をした魔族種だった様に覚えています」
オレークは、汗びっしょりになって自供をする。
「真っ黒い人ですって? お姉ちゃん、まさか?」
「うん、多分そのまさかだよね。前の時も会った人は顔を覚えていなかったし」
異種族姉妹は、その「黒い人」に心辺りがある風に話す。
「すまぬが、リタ殿、ナナは敵に心当たりがあるのか?」
少年皇帝は、身を乗り出すように姉妹の方を向いた。
「はい、手段の嫌らしさといい、自分の手を汚さない方法といい、おそらくアイツだと思います。陛下も一度対面して戦ったはずですの」
ナナは、顔色を少し青くして語る。
「そう、敵は異界の邪神『這い寄る混沌』。その端末の生き残りでしょう」
敵は、邪神界の道化師にして闇から嘲笑する神。
あまりに強大な敵に、僕は身震いをした。
「でも、たかが端末です。一番本体に近い奴は9年前にコウ兄ぃと陛下が討ち取りましたし、チエ姉ぇやお母様によって世界を取り巻く結界は強固になっています。本体からは力を得る事も出来ず、姑息な手しか取れない小物ですよ」
ナナは、自分を励ますように敵が大した事も無いように話す。
「しかし、コウタが居なければアヤツの防御結界を敗れぬぞ。余の力だけでは邪神の結界を破れず、本体に傷ひとつつける事は適わぬのだ」
陛下程の力があっても、邪神に対しては無力らしい。
僕なんかでは象の足元の蟻以下だ。
「そこは大丈夫と思います。先程コウ兄ぃと一緒にいるチエ姉ぇに連絡がついて、向こうの目処がたったらしくて、明後日までにはこっちに来るそうです」
ナナの話によると、急遽コウタはチエと共に、とある惑星で起こった事件を解決すべく半月前に飛び出したらしい。
なんでも惑星の守護神とも言える聖獣が突然暴れだし、惑星全土が壊滅の危機に陥ったらしい。
聖獣を殺す訳にもいかず、コウタ達は物理的行使を含む説得を行い、やっと対話の席に着く事が出来たのが、つい先ほどらしい。
「どうやら、そちらも邪神の手だな」
「ええ、そっちにも小物端末が居て、早くに倒せたのですが、今わの際に負惜しみらしき事を言っていたそうです。最初から用意周到だったのでしょうね」
ナナは、両腕を組んでウムムという顔だ。
「ナナ殿。敵は恐るべき策士じゃ。ならば、……」
「ええ、おそらく明日が決戦ですね。敵の本体が、この城を襲いに来ます。目的は前回同様、この城地下に眠る宇宙転移ネットワークシステムの掌握でしょう」
リーヤは、ナナに敵の目的を聞いた。
どうやら邪神は異世界から自分達の同族を呼び寄せたいらしい。
「さすれば、この帝都が再び戦場となる。早急な住民の避難が必要だ! 皆、何か良い案はあるか?」
僕は、頭を悩ませる。
せめて、何か策でこの窮地を乗り越える事は出来ないのか?
住民さえ避難していれば、城を守りコウタの到着まで持ちこたえたら、こちらの勝ちなのだ。
「とりあえず、ナナ。コウタを早急にこちらに呼ぶのだ。出来れば今日明日中に」
「はい、今から連絡します。事情を話したら、すぐにでも飛んでくると思います」
ナナとリタ姫はスマホを取り出し、連絡をし出した。
すでに夕刻、夜襲の危険性もある。
いつ何時敵が攻めてくるか分からない不安が皆を覆う。
……でも、どうやって邪神は攻めてくるんだろうか? 城に攻め入ってきても、今ならナナさんやリタ姫が城内に居る上に陛下もいる。例え邪神を倒せなくても、救援を呼ぶ時間稼ぎには十分だ。
「あれ? 敵はどういった手で来るのでしょうか? バケモノの大群は先日全滅させました。もう同じような遺跡は帝都近郊には無いですから、バケモノの大群を近くに呼び寄せるのは難しいですよね。それにオレーク様を使い捨てにしたというのなら、ジェミラ領内で兵を確保する気は邪神には無いです。更に近隣諸国では今から帝国内に攻め入るには時間も兵力も足らないです」
僕は、思いついた考えを言葉に出した。
そうする事で、案外と考えが纏まったりするのだ。
「ならば、一番考えられる敵の策は、戦乱で荒れた帝都に対して邪神にそそのかされた隣接の他領が反乱を起こす事及び同時に邪神自身による少数精鋭でのシステムへ直接攻撃が考えられます。となれば、帝都全土に対して帝都は無事である事をアピールする、そして真の敵の存在の公開をするのは如何でしょうか?」
攻撃力はチーム内最低のタケ君。
彼の武器は、持てる知識と勇気。
それを駆使して邪神に立ち向かうのです!
では、明日の更新をお楽しみに。




