第33話 新米捜査官は、尋問の手助けをする。
「つまり、其方は邪神遺跡の封印を、誰かに言われるままに解いてしまったのだな?」
「はい、陛下。申し訳ありませぬ。今になっては言い訳に聞こえる様に思えるのですが、何故に私はあの封印を解いてしまったのか、今になれば分からないのです」
遺跡について存分に調査した僕達は、翌朝容態が安定したオレークを連れて一路帝都へ戻った。
昼過ぎの今、玉座にベットを持ち込んで、陛下がオレークに直接尋問をしている。
一応、身動きが出来ないとはいえ、立会い兼護衛兼容疑者の治療名目で僕達、捜査室が待機している。
何故か、リタ姫とナナがいるのは、事件当事者だからか。
「何、意味も分からずに封印を解いたというのか?」
「意味は分かっておりました。封印を解けば異界の魔物が出てきて帝都へ向かうだろう事は。しかし、何故そのような危険な事を行うような考えになったのかがよく分からないのです」
まだ沢山の管に繋がれ、心拍モニターが繋がったままのオレーク。
陛下に聞かれたまま答えているが、実に悲しげな顔をしている。
「もしや、命乞いでそのような事を話しておるのでは無いな?」
「はい、もうこの命は無き者と考えております。陛下に私の持つ情報を全てお話ししましたら、管を自ら抜いて死する所存であります」
オレーク、その表情は青い顔をして冷や汗を一杯かいているものの、少年皇帝から一切眼を外さす、嘘等言わぬという顔だ。
「おい、ちょっと待て。確かにオレークには責任を取ってもらわねばならぬが、それは今ではない。慌てて勝手に逝くな!」
「陛下、それは甘すぎます。私のような逆賊はさっさと処分するに限ります」
陛下とオレークは言い争いをし始めてしまった。
……これ、誰かが止めなきゃ不味いよね。
「陛下、オレーク様。御二人とも落ち着いてくださいませ。ここで言い合っても何も良い事はございませぬ。一番悪いのはオレーク様を騙し、そそのかした奴にございます。本当に悪の根源がオレーク様でしたら、間抜けにも崩落に巻き込まれるような不手際は行わないでしょう」
僕は不敬と思いながらも、御二人の言い合いに口を挟んだ。
まずは、オレークが主犯では無い事を陛下に納得してもらう様に話した。
「そして、オレーク様も死に急がないで下さいませ。生きていれば、いつか償う事は出来ます。今一番大事なのは、これ以上被害が出ないようにする事ですから」
続いて、オレークには決して死に急がないように説得をした。
……もう僕の目前では誰も死んで欲しく無いから。僕の我侭というのは分かっているし、偽善なのも理解しているけれど。
「タケ。うむ、そうだな。まずは情報を集めて敵の正体、そして目的を知らねばならぬ。オレーク、そういう事だからもっと余に話してくれ。それが其方への罰であり、償う方法なのだ!」
「へ、陛下……。タケとやら、すまない。其方には、命を助けてもらっただけで無く、私の名誉も守ってくれた。ああ、分かったぞ。この命、陛下に存分に使ってもらおう。陛下、いくらでも私が知っている事はお話しします。なんなら敵への囮にでもエサにでもお使い下さい」
……とりあえず、話が纏まる方向へいきそうなので一安心だ。
それからオレークは色々と最初から事件について話してくれた。
まず最初に起こった、リタ姫誘拐未遂事件。
これもオレークの配下によるものだった。
帝国は、未曾有の大災害を自らの力では無く、外部からの英雄によって救われた。
その事は、帝国重鎮のオレークにとっては不満であった。
多くの民が辺境伯によって救われた事には感謝している。
しかし、その事がこの世界最強を誇る帝国にとっては汚点、何故自らの力のみで解決出来なかったのか。
その思いが、オレークには深く残っていた。
これは、リタ姫に突っかかって逆に弄ばれたクレモナ伯グリゴリーも同じである。
帝都を、帝国を守るのは本来帝国自身の力でなくてはならない。
そんな時にコウタの身内が領主会議等に参加するため、帝国に来る事が分かった。
ただでさえ不安定な帝国がコウタの身内によって更にかき回される危険性を考えたオレークは、コウタに警告を出すべくリタ姫を襲うことにした。
伝え聞くリタ姫の武勇、及び彼女を護衛する異界技術捜査室。
その実力を持ってすれば、おそらくリタ姫は無事であろう。
オレークからすれば、異界技術捜査室も地球の科学とやらを持ち込んだ外部勢力だが。
襲われる事で、コウタに帝国に係るとろくな事がないと認識してもらい、そのまま帝国から手を引いて欲しかった。
そんな思いからの犯行であった。
なので、雇った下手人は中途半端な悪党で、姫を連れてきたら口封じを兼ねて処分する予定だった。
しかし、異界技術捜査室はオレークの予想以上の凄腕で、下手人はおろか、こちらの手勢まで全員生かして捕まえられてしまった。
もう後が無いオレークは、領主会議でコウタの妻に言いかかったが、こちらも予想外にも自らの富を放棄する発言で負けてしまう。
更に短気なグリゴリーがリタ姫に喧嘩を売って、無様に遊ばれたのを見てしまった。
ここに来て、オレークは敵に回したコウタ達と異界技術捜査室があまりに凄すぎる事に思い至り、自分が悪党になる事で彼らに討ち滅ぼしてもらい、帝国を纏める礎になる事を決意した。
そして自らの領内に眠る邪神を奉る遺跡を起動した。
「なるほど、一応つじつまは合うな。まあ、そんな考えに到るというのは理解できぬが」
陛下は首を傾げながら、オレークの話を聞いた。
「はい、今になれば私も何故そこまで過激な思考になったのか、理解できません」
オレークも自分の考えが不思議らしい。
「すいません、医療関係者から意見具申をして宜しいですか?」
オレークのメディカルデータのモニタリングをしていたキャロリンが陛下に意見具申の許可を願った。
「ああ。申してみよ、キャロ」
「はい。ありがとう存じます、陛下。オレーク様のメディカルデータを確認していまして、彼に向精神薬が投与された形跡がある事に気がつきましたのです」
キャロリンは、オレークに対しての薬物投与が行われていた事に気がついたらしい。
念入りにメディカルデータのチェックをしていたからこそだろう。
「ほう、つまり心を左右する薬が盛られていたと」
「はい、そういう状態で暗示をされてしまうと、人の心は簡単に操られます。更にテレパス系の精神干渉魔法が使われたら、人は容易にクグツと化します」
事実、そうであれば恐ろしい事だ。
オレークは身内、もしかしたら側近に操られていたのかもしれないのだから。
尋問回です。
徐々に敵の黒幕が見えてきました。
卑怯にもマインドコントロールで人を操り人形とする手口。
自分の手を汚さないのが、邪神道化師らしいです。
では、明日の更新をお楽しみ下さいませ。




