第30話 新米捜査官は、偵察任務に着く。
「これは、凄い! マム、一体どうやってこんな武器仕入れたんですか?」
翌朝、到着したトラックから荷物が続々と降ろされており、僕達の目の前には大量の銃火器がずらりと並んでいる。
「そこは、『蛇の道は蛇』って言うのかしら。ちゃんと正規ルートで買いましたわよ。まあ、結構お高かったし、何に使うんだとも言われましたが」
今までも対人用、警察機構としては重武装だった僕達。
散弾銃の一粒弾すら生まれつきの重装甲で弾くトロール等を相手するために、ライフルやグレネードの使用も許可されている。
しかし、マムが準備したものは全て軍隊が使うようなものばかりなのだ。
「確かに相手が邪神やその配下となると普通の武具では勝負になりません。しかし、これを注文した時にはそんな事は分かっていなかったですよね」
「ま、まあ女のカンかしら。おほほほ」
マムは笑って誤魔化すが、誰かの裏知恵があったのでは無いかと僕は思った。
「細かい事や裏事情は、もう良いですよ。とにかく今度あいつらが来ても、僕達だけで倒せるのなら文句なしです!」
僕は、ついワクワクテカテカしてしまった。
だって、今までカタログやネットでしか見たことがない武器だらけなのだから。
「タケや。1人で興奮せずに此方人等に使い方を教えるのじゃ!」
「拙者、大砲も良いでござるが、弾をばら撒くのも好きでござるよ」
「アタイも攻撃呪文は苦手だから、撃ちやすくて強いのが欲しいな」
「タケ、アタクシも攻撃に加わるのを考えてね」
「タケお兄さん、ごめんなさい。わたし、銃は撃てないから砲座から撃つね」
仲間達は皆、一昨日の雪辱戦に燃えているのだ。
「はい、皆さんが使いやすいものを選びますね」
「タケ、宜しくね。あ、もちろんわたくしのも御願い。拳銃じゃ遠距離当てれないの」
さあ、逆転してやる。
悪党め、待っていろ!
◆ ◇ ◆ ◇
「これは酷いでござるな。なんまんだぶ、なんまんだぶ」
ヴェイッコが惨劇跡を見て、手を合わせて拝んでいる。
今、僕達はシームルグ号と4WD車で帝都から北方へ進んでいる。
本来、今居る辺りは帝都に酪農製品を卸していた村があったはずの場所。
しかし、見渡しても一面何も無い。
そう、建物、小屋はおろか、人の遺体、家畜の死体すら何一つ残っていないのだ。
あるのは、赤黒く染まった草ひとつ残っていない土地と同じく赤黒い小川のみ。
文字通り蹂躙され、全て喰らい尽くされたのだ。
「この血は人のモノですね。おそらく数百リットルは撒き散らされている、つまり百人以上の人が喰われたのだと類推出来ます」
僕は簡易検査結果を話しながらも、その内容に怒りが抑えきれない。
ALSで照らされた視界には、引きずられた被害者が足掻いた跡が見える。
つまり生きながら喰われたのだ。
「ただ殺すだけでなく、喰らうのか。おぞましいのじゃ」
リーヤは、両手で自らの身体を抱き、身震いをした。
「絶対、敵を討たなきゃいけないし、もうこれ以上被害を出させちゃダメだよ」
ギーゼラはリーヤの肩を抱き、敵の撃退を誓う。
「そうね。では、悲しいですが、先へ進みましょう」
「アイ、マム」
僕達は元「村」であった地を去り、更に北方へ、敵が向かってきた先へ進んだ。
◆ ◇ ◆ ◇
「陛下、そちらはどうですか?」
「とりあえず、避難民の収容は終了した。彼らの証言からすると、敵はジェミラ領内から来たと思われる」
今は、薄暗くなり少し肌寒くなってきた夕刻。
僕達は、帝国中央領の最北端まで進み、領地を分ける大河の手前でキャンプをしている。
「やはりそうですか。こちらは街道をジェミラ領の手前まで来ていますが、ここまでの経路にあった村々は、血痕以外全て何も残っていません」
「く、そうか。分かった。では、調査を今後も頼む。くれぐれも命は大事にな」
「ええ、陛下もお気をつけてくださいませ」
マムは、少年皇帝との通信を切った。
「帝都は、どういう状況じゃ?」
「今のところは、敵の追撃は無し。避難民の保護に忙しい様ね」
リーヤは、パチパチと音を立てる釜戸の焚き火に小枝を放り込みながら、マムに状況を聞いた。
「マム、あの敵はどこから沸いたと思いますか?」
僕は釜戸に夕食用の鍋をかけて、マムに聞きながら火加減を見た。
「タケは、どこからか心当たりがあるのね。わたくしに聞くときって大抵タケが自分の考えを整理・確認する時だもの」
マムは、鍋を仕掛けるためにしゃがんでいた僕の頭を軽く撫でる。
「え、そうなんですか? あ、言われてみればそうですね。多分、答えを言うのが不安になってマムに聞いてしまうんだと思います」
僕は、慈愛の表情のマムを見上げた。
「あら、タケちゃんたら。まあ、わたくしは皆のお母さんだもの。頼っても良いのよ。その代わり、やるときはやるの。いつもわたくしが助けられるものでは無いですからね」
マムはそう言うと、優しく僕の頭を胸に抱いた。
「あー、タケはまたマムに甘えているのじゃ!」
小枝を捜すために少し釜戸を離れていたリーヤは、マムと僕の様子を見て走ってくる。
「タケは此方の所有物じゃぁ!」
そして毎度のごとく、僕の頭は2人の胸に挟まれた。
「すいません、火を扱っているから危ないですよ、2人とも。僕を大事に思ってくれているのは、ありがたいのですが……」
結局、煮物が一つ出来上がるまで、僕は2人に開放される事は無かった。
他の仲間達は、またかという風だったけれども。
怪物の足跡を追って北へと進むタケ君達。
不安な気持ちは皆同じですが、皆を愛して見守るマム。
慈母ですね!
では、明日の更新をお楽しみに。




