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白い布団

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 幅広の布地が作れるようになってから、ちょっとやってみたいことがあった。


 布団である。


 てん杉の糸は綿にできなかった。手に入る動物の毛も、羊のような毛質のものはなく、詰め綿入りの布団の再現はあきらめた。そして、草原の草は、どうやっても干し草にできなかった。ちくせう。


 てん杉の葉を代用品にした。

 大洞窟の奥に、葉を積み上げる。その上に、用意した敷布をかぶせ、形を整えた。



 そろり、と敷布の上に寝転がる。


 杉の葉の香りがした。


 正真正銘の人間に戻れた気がした。布団の上で、ごろごろ転がってみる。しかし、すぐに落ち着かなくなった。



 今の自分が、嫌いではない。むしろ、楽しいことの方が多いと思う。あれやこれや工夫し、知恵を絞っていろいろ作って、思った通りのものが完成すると嬉しくなる。


 それでも、「人間ではない」ことが、無性に悲しい。


 誰も、話しかけてくれない。誰も、聞いてくれない。誰も、答えない。


 どれだけ、人の生活を模していても、いや、より人らしい環境になればなるほど寂しさが募る。



 そう、寂しいのだ。



 こんなもの、作るんじゃなかった。


 敷布をはぎ取り、葉の山を蹴散らし、外に飛び出す。



 今日の雨は、一段と激しい。

 雲の中に突っ込み、むちゃくちゃに飛び回る。



 以前、森の外に見た城塞を思い出す。きっと、森に入る人もいるだろう。だが、まーてん周辺に人の暮らす痕跡はない。人が立ち入らない領域に、平然と生存している。それが、どんなに異常なことか、わからない自分ではない。

 ならば、自分が森を出る? 出てどうする。いずれ本性がばれたとき、どんな顔をされるか。見た目は、この森の獣と同類だ。恐怖と拒絶とそして迫害と。なまじ、他人の温もりを知ってしまった後では、尚更辛いだろう。

 ばれなかったとして、見た目10歳のままでは、街中でずっと暮らせる訳もない。


 否定的な破滅的な未来しか思い浮かばない。



 何故、自分だったのだ!




 ・・・やはり、あの時、自分は死んでいればよかったんだ。


 身体中から力が抜ける。


 そのまま、雨降る森の中に墜落していった。

とうとう、自覚しました。

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