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成せば成る 4

027


 あれから数日、夜は山頂で過ごした。


 朝になれば、体長を記録し、麓におりて体裁きの訓練を行い、午後はてん杉の実や枝の薫製作り。大洞窟には一歩も入らなかった。


 が、いつまでも無視するわけには行くまい。



 次は、機織りが待っている。



 あれだけ大量の糸があるのだ。ほかの用途が思いつかない。


 さすがに、機織り機の構造までは知らないが、布の構成はわかる。縦糸と横糸を交互に組んでいけばいい。試作機を作ってみた。縦糸の数は少なくした。とにかく、織れるかどうかやってみることだ。



 ・・・不格好ながら、できるものなんだねぇ。


 道具や手順を改良しながら、いくつも織っていく。織ってはまた、手直しする。


 足踏み式の織り機まで作ることができた。おかげで、ずいぶんと早く織り上げられるようになった。まあ、糸の山は減っても、今度は布の山に化けただけとも言う。


 それにしても。四年で物になるとは、自分でもびっくり。忍耐と根性? ほかにやることもなかったので、集中したというかなんというか。



 糸とか布を切るためのはさみと縫うための針は、蟻板から作り出した。


 はさみのついでで、片刃ナイフの改良も行った。作れば作るほど切れ味が良くなるので、つい、手を切ってしまわないか心配になったのだ。いや、ドラゴンの鱗って冗談みたいに丈夫だから、結論としては無駄な改良だったのだけど。


 なんと、「生きもの」は「切れない」ナイフになってしまった。草でも動物でも虫でも、生きている状態では絶対に突き刺さらないし、切り裂けない。一方、死んでしまった物ならば、岩大蟻でも、ワイバーンの骨でもさくさく切り裂ける。という、とんでもない、というか、ふざけた代物になった。

 なにより、それが出来上がってからは、岩大蟻から作るナイフすべてが「そう」なってしまうようになった。


 ねぇ、ワタシって器用なの? 不器用なの?


 うごうご杉の表皮部分は、八つ当たりの的にされた。


 変なナイフばかりできるようになって、暴れたくなったのだ。が、外でやれば被害甚大。ということで、表皮は、適当な大きさに整えられ、指弾や棒の練習台にされ、ぼろぼろになってもなお、蟻板製のハンマー二本でめった打ちにされるという、哀れな末期となった。



 ここで、なんでも無駄にしないのがワタシ。たたかれた後の表皮が、ある物に似ているのに気づいた。パルプ、紙の原料だ。糊のような繋ぎになる物を探せば、紙すきができる。


 時間はいくらでもあるのだ。機織りに比べたら、まだ簡単だろう。よっし、やるぞ!



 さらに一年がかかったけど、紙も作れるようになった。同時にインクも作った。


 日記が書けるね。

ネットで調べてみたら、布の織り方にもいろいろありました。主人公の織り上げ時間は、魔術クオリティということで。

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