成長期 2
024
てん杉の枝の下に木片をぶら下げ、「風」を使って揺らす。向かってくる木片に棒を当てて「流す」練習をした。少しでも「力」が入ると、木片は「爆散」する・・・
棒の使い方は、防御一辺倒にすることにした。カウンターでも自分から撃つように力を乗せると、半端ない結果になってしまうことがわかったからだ。
魔力持ちの動物で、かろうじて耐えられる範囲だろう。ただし、岩大蟻は全力で行く。遠慮なんかしない。
とにかく、もし、人里に行くようなことになったとき、ついうっかりが大惨事になりかねない。訓練だ訓練。
「うっかり」しなくなるまで、体に叩き込む。できるようになったら、今度は木片の数を増やしていく。二本に増やしたとたんに、おもしろいように木っ端みじんになった。これまた、じっくり練習する。二本のぶら下がる長さを変える。やはり、砕いてしまう。
木片の本数を増やし、長さを変えながら、しつこく訓練した。
午前中は、訓練か探索か狩りか、午後は、薫製作業。待ち時間に、種弾作成。最近は、こんな生活サイクルになっていた。
そんなある日。
また、体が動かなくなった。
今度は、草原で夜を過ごす。成長の度合いが分からない上、今度も人型に変身できるようになるとは限らなかったからだ。
うつらうつらしていた、と思ったら、いつの間にか眠っていた。
夜明け前に、目が覚めた。
無事、脱皮できたようだ。
ほっと一安心する。
以前より、さらに、体が軽く感じられる。
皮が飛んでいかないようにひとまとめにし、小洞窟の一つに押し込んだ。山頂に飛んで、体長を記録する。ほぼ、以前の二倍の大きさになっていた。もう、この体格では洞窟に入れない。しくしく。
洞窟前に戻り、変身してみる。
できた〜。よかったよ〜ぅ。
これも一安心。多分、10歳くらいだ。
もう一度、竜体に戻って、皮を切り分ける。人型のままナイフで切ってもいいのだが、大きすぎて持て余しそうだったので。
前と同じく、服、靴、手袋、ベルト、ナイフ、鞘、ポーチを作った。
身に着けてみる。ジャストフィット。前のときも思ったけど、服のサイズは元の皮よりもずいぶん小さいのに、何で余すところなく変形しているんだろう。変なところで、器用な魔力だ。
続いて、体力測定。
火を出したり、カマイタチを出したり、走ったり飛んだり。指弾の撃ち具合も確認。いずれも、出力が増している。棒の「流し」では、木片一本を粉砕してしまった。
・・・また訓練しなおし。ハードだ。
ある程度、物になるまで、森の散策はお預けにしよう。このままでは、自分の通った後が、屍だらけになりかねない。
歩く○○。




