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悪魔に転生してました。  作者: ぐっちょん
何となくハンター編〜悪魔争乱〜
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ブックマークありがとうございます。

嬉しいです。

「ここだな!」


 ご丁寧に障壁結界まで展開してあった、ゲスガス王城を軽く潜り抜けた俺とナナはラットの思念を頼りに玉座の間へと向かった。


「クローさまってやっぱり、その姿の方が似合ってると思うな〜」


 チビコロを胸に抱え、俺の後ろを気分良く追従するナナからそんな声が漏れてきた。


「……この悪魔の姿がか?」


 ツノ、翼は悪魔のそれっぽくなって大分見れるようになったが、顔は前世の黒髪黒目の平凡顔。

 目つきが多少鋭くなったところで、この平凡顔に迫力なんてない。

 ただこの姿に戻ると上着が全て弾け飛ぶ。俺にそんな性癖はないはずだが――


「うんうん」


 でも、なぜかこの姿になるとナナは異常に喜ぶ。


 ――ふむ。配下の贔屓目? まぁ悪い気はしないが……


 今まで、そんなことを言われたことのない俺は、口元がゆるむのを感じるも、なんとか平静を装った。


「ナメられるだけだ」


「え〜、そんなことないのに……ぁ? ああっ!! クローさま、もしかして今嬉しい?」


「そ、そんなはずないだろ、何を言うんだ」


「だって〜クローさま、シッポ揺れてるし〜」


「なに!」


 俺は慌てて身体を捻り、尻尾を確認すると、ナナが言った通りゆらゆら揺れていた。


 ――うおっ、なんじゃこれは!? バレバレじゃねぇか!?


「こ、これはだな……」


「にひひ」


 ――うぐっ。


「お、俺は先に行くからな」


 俺はニヤニヤ笑みを浮かべるナナに返す言葉が思い浮かばなかったため、何事もなかったように先に進むことにした。


「ええ! あっ、待ってよ、クローさま」


 納得いかないのか、ナナが後ろでぶーぶー言っているが、今はダメだ。


 ――なぜ悪魔にもなって恥ずかしい思いをせねばならん。


「ああ、そうだ。はいっ! はい、は〜いっ!! クローさま!! あたしが今度は前を歩きたい」


 ナナがわざわざ俺の前まで回り込んで挙手をした。


「ナナが? ……はいはい、好きにしろ」


「配下だもんね。好きにするもん、にひひ」


 配下らしくナナが先導したいそうだ。ナナは元気に俺の前を歩き始めた。


 ――まぁ……


 隠蔽魔法を展開した俺たち悪魔に人族が気づくのは稀、気づけるとしても王宮魔法騎士ぐらいのもので、その時は魔法騎士の発する魔力を感知した俺たちの方が先に気づけるため、その脅威はないに等しいしな。


 それに、道を間違っても伝えればいいだけのことだ。なんてったって今の俺は尻尾の件で威厳もへったくれもない。


 ここは主として寛容なところだけでも見せねば示しがつかんのだ、そう思い好きにさせたはいいが……


 悪魔の姿に戻ったナナの布面積は少ない。ほぼ水着姿に近いといってもいい。

 まあ、どんなモノを着てるのかと聞かれれば、理想の姿になっているので、皆さんの想像にお任せするが……


 要するに前を歩かせると、歩くその後ろ姿が妙に色っぽく、今は必要としない俺の欲求を刺激する。


 階段の上りになり、とうとう我慢できなくなった俺は、何だかんだ理由を付けて再び前を歩くことにした。


「な、ナナ。やはり何があるか分からん。俺が前を行く」


「えっ、そうですか。分かりました」


 ナナは何も言わず素直に下がった。俺は逆に何も言わず素直に後ろに下がったナナが気になりちらりと横目にナナを見ると……


「うふふ、にひひ」


 ナナは楽しそうに、にやにや、にまにま笑みを浮かべていた。


 ――ぐぬぬ。 俺で遊んでいやがった。


 ――――

 ――


 王城内部は思った以上に入り組んではいたが、ラットの思念が優秀で迷うことなく玉座の間にたどり着いた。


「よし、ここだな。着いたぞ!」


 しかし、王城というから少しは警戒していたが、警備はずさんなもので、途中に、だらだら巡回している兵士数人とすれ違ったくらいだった。


 ――兵士、少なすぎだろ。


「ねぇねぇ、クローさま?」


「何だ?」


「今回の相手って廃棄悪魔ですよね?」


 そう尋ねてくるナナの声に振り返ると、ナナは首を傾け立ち止まっていた。


「ああ、俺は廃棄悪魔をよく知らんが……そう追加で聞こえてきたな……」


 ナナは珍しく頬に指を当てて何やら考え込んでいる。


「ナナ……それが何か関係あるのか?」


「あれ、クローさまは知らない?」


 ――ふむ。廃棄悪魔か……あまり気にしてなかったが睡眠学習で得た悪魔界の知識は……思った以上に少ないのかもな……


「ああ!! そうだ〜。廃棄悪魔については、支配権を持つ第7位悪魔になって初めて知る事柄の一つだっ……あっ、あはは」


 ナナは滑舌良く喋っていたが、途中で何かに気づいたのか気まずそうに俺から視線を逸らした。


 ――ほう、面白い……


 俺は別に廃棄悪魔について興味はない。


 ただ、ナナに先程のお返しを少し、ほんの少しだけしてあげたくなった。


「ふむ。なるほど……第7位ね……でもナナはよく知っていたな」


 ギクッと音が聞こえてきそうなほど、肩をビクつかせ目を泳がせたナナは、必死に何やら考えている。


 面白いくらい口を開けては閉じ、開けては閉じと繰り返した。


 ――くっくっく。


「……そ、それは……たまたま、教えてもらったから……だよ? あははは」


「ほう……」


 ――た、楽しい!! ナナをからかうとこんなにも楽しいのか。ぷっくく、もっとからかったらなんて言って誤魔化すかね? それとも、正直に話しだす……


 俺は、ナナと出会った当時、悪魔執事族セバスにお嬢さまと呼ばれていたことを思い出した。


 ――ふ、ふむ。これ以上は深入りしない方が良さそうだ。

 やはり悪魔界は、俺の知らないことが多いな……


「そ、そんなことよりクローさま。廃棄悪魔は全身にDという文字が浮かび上がってるんだよ……」


 ナナが言うには廃棄悪魔を真似て侵入してはどうかという提案だった。


「別にそこまでしなくていいんじゃないか?」


「クローさま……隠れて安全にやり過ごそうとあたしに言ってくれたのはウソなの?」


「いや、ウソじゃない……が……しかし……」


 ただ、ナナのこの提案。廃棄悪魔を真似るというが、真似て変身しようとしたが、何らかに阻害され変身スキルが上手く展開できなかった。


 Dの文字を浮かび上がらせることができなかった。


 ――ふむ。悪くない提案と思ったが、変身できなければ仕方ないよな……


「クローさま〜。えへへ……」


 そう思った俺はこのままゲートに進むつもりだったのだが、ナナがにこりと笑って俺の前を遮り、二本の筆と青墨を取り出し服を脱げと言った。


「ナナ、何を言って……」


「……じゃあ、はい!!」


 ナナは満面の笑みであった。筆の一本を突き出しそう言ったナナはすでにすっぽんぽんであった。


 ぷるっ。ぷるっ。


「う、うむ〜」


 ナナのおっぱいは今日も元気なようだ。



 ――――

 ――


「よっと、はい!! クローさまも、これでおしまい。できましたよ〜」


 30分後、俺とナナの体(顔以外)には、お互いがペイントしたDの文字がキレイに描かれていた。


「ああ……」


 俺の苦行が終わった。ナナの場合は平気で癒しを突き抜け欲求を刺激するからタチが悪い。


「……ふぅ……」


 思わず息が漏れた。俺はすでにお疲れモード。ゲートを越える前にぐったり元気がでない。一部除く。


「えへへ」


 ナナは満足そうに魔力の服を身にまとい、俺も傚ってズボンを手に取ると、あることに気づいた。


「……ナナ……これ服着たら見えないんだから……裸になる必要なかったんじゃないのか?」


「……」


 ナナがまたまた、目を泳がせた。


「……ま、まあまあ。今から危険な所に行きますし、クローさまには元気が必要かなぁと……ね?」


 最後はボソボソ呟きよく聞こえなかったが、ナナはゲートを前に、俺を元気にしたかったらしい。


 ――たしかに元気になったが……意味が違う……と思う。


 本能では拒絶しなければ、と思うも、男の性なのか、見れればそれはそれで嬉しくなる。


 ――ああ、くそ〜。何なんだよ……


 結局、拒絶と癒し、癒しは元気に、元気から欲求へ、考えれば考えるほど胸にモヤモヤが溜まり、わけが分からなくなった。


「ふんっ!!」


 俺は固く閉じていたはずのゲートを軽く小突いた。完全な八つ当たりであるが、ゲートはガコンッと音を立てるとアッサリと開き、黒いモヤが漏れだした。


「あれ? それって簡単に開くもの(トビラ)だったかな〜」


 首を捻るナナを気にすることなく、俺は少し歪んでいるトビラを力任せに開いた。


「ふんっ!! よし、行くぞ」


「う、うん!」


 ナナは返事をすると俺にぴたりと張り付いた。正直、動きづらいが、構わず俺はゲートへと手を伸ばした。


 ゲートから漏れていた黒いモヤが一気に俺とナナを包み込み暗闇の道へと引き入れた。


 ――――

 ――



 ゲートの暗闇を潜り抜けると、ゲートは勝手に閉じ、俺の目の前に大きな城砦がその姿を見せた。


「ほう。ここが悪魔界か」


 ――ここは妙な感覚だな。重苦しい?


「う〜ん。正確には悪魔界にある支配悪魔の使用空間ってところかな……って、あれ? さっきまでいたチビコロいなくなったよ」


「そうなのか……んあ? チビスケもいなくなってるから、どっか二匹でいったんだろ」


「そっか〜、あっ! そうだよ、契約者じゃないからこっちに来れなかったんだよ……」


「そうなのか? ……しっ!? ……誰か来る!! ゲートを抜けたから誰かに気づかれたか!?」


 俺は警戒し感覚を更に研ぎすます。


「どうだろうね……支配悪魔と管理悪魔には分かるかもしれないけど……」


 ナナもきょろきょろと警戒し周りを見渡しながら俺の方へ歩み寄ってきた。


「まぁいい。とりあえずこの場から離れるぞ。ナナついてこい」


「うん」


 俺は悪気を探りつつ、悪気の少ない方へと移動する。


 ――できれば安全に潜める所を、今のうちに見つけときたいのだが……


 移動中、建物の死角を上手く利用し、隠れそうな所に目星を付けていく。


「ん?」


 悪気を避け、目星の位置を数カ所、見つけたところで俺は違和感に気づいた。


「悪魔たちの動き……おかしくないか?」


「へ? そうですか?」


 ナナはきょとんとして首を傾げた。


「ああ、悪魔たちは規律なくバラバラ動いている。巡回とはちょっと違う。これは……まるで誰かを探しているように感じるが……」


「クローさま。それってあたしたちのことじゃないですか?」


「ふむ……そうかもしれんが……ゲートと正反対の位置にまで悪魔たちが隈なく広がっている……これは俺たちが、ゲートを潜り抜けてから、そして今もずっと続いている」


「へっ!? クローさまって、そんなこともできるんだ〜」


「いや、まあ、いいだろう。ん!?」


「どうかしたの?」


「ああ。悪魔が四体? こいつらは全く動いてない」


「四体?」


「多分……四体だ。三体はすごく悪気が弱い。どうだ? 分かるか?」


「えっと……わぁ……ほんとだ!」


 ――さて、どうするか。気になるといえば気になるが……


「クローさま、ちょっとだけ行ってみましょうよ。仲間っぽく近づけば、バレないよ」


 ナナはモデルっぽく腰に手を当てるとDの文字を指差した。


「……そうだろうか?」


「大丈夫ですよ〜あたし、これでも勘はすごくいいんですよね〜へへへ」


「ふむ」


 ――そういえばこいつ、超直感ってスキル持っていたな。悪いようにはならない……か。


「分かった。行ってみるか」


「わ〜い」


 俺たちは気配を消し、その四体に近づいた。


 少し近づいたところで、一体の悪魔と視線が合った気がしたので、軽く手を挙げてみたが無視された。


「あいつ、俺と目があったのに無視しやがった!」


「まぁ、まあ」


 俺の反応が面白かったのかナナは肩を震わせ笑いを堪えていた。


「ふん」


 更に近寄った所で、魔力の高まりを感じた。このままだと間違いなくこちらに魔法が放たれる。


「クローさま、なんか話が違うんですけど〜」


「ナナ〜、それは俺のセリフだと思うが……ちっ!」


 俺はナナにそう言い残すと、こちらに手を向ける悪魔に向かって一瞬で距離を詰め、その手を握り潰した。


「ぐっ、ぐぁぁぁ」

「「「えっ!!!」」」


 イケメン悪魔が右手を抱え転げ回りると、高まっていた魔力も霧散した。


 ――こいつ黒髪?


 周りにいる残り三人の悪魔は目を見開き、その身体をガクガク震わせていた。


 ――こっちは美人な悪魔が三人……う、羨まし……こほん、けしからんな。


「……ま、待て! 俺はまだ終わっちゃいねぇ……」


 覚悟を決めたようにイケメン悪魔がよろよろ右手を押さえて起き上がってきた。

 その右手は少しずつだが再生を始めている。


「お前が先に手を「もう、ちょっとクローさま、置いていかないでよ〜」


 ナナの不貞腐れた声と、ぷにゅんと柔らかな感触が背中に走った。


「こ、こら! 背中に張り付くな。今は危ないだろが!!」


「クローさま、こうしてないと置いてくでしょ?」


「だ、か、ら、今は違うだろ……」

「お、おい!」


「え〜、だって〜」

「おいって!」


「いいから離れろ……」

「おーい!」


「ぶぅ〜」

「おいっ! こらっ!!」


 イケメン悪魔が何やら叫んでいるが今はそれどころじゃない。


「危ないだろって」


「いやだよ〜」


 イケメン悪魔は顔は半泣き状態だった。


「無視すんなよ〜! おい……」

皆さんの予想通りの展開?だったと、思うのですが、すみません。


他の展開も考えていたのですが、殺伐となりそうだったので…。

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