81.イケメンバーテンダー誕生
いつも読んで頂きありがとうございます。
「お待たせ致しました〜。…って、アレ!?」
厨房から戻ると、応接間にはマーガレット、ナンシー、スティーブ、ダニエルだけではなく、スタンリー、グレイ、それとノエル達ボーイズ4人が揃っていた。
「お父様たち、どうしたの?」
「ジョアンがちゃんと商談出来るか心配でね」
「ククッ、父上はカクテルが試飲できると思って来たんだよ」
ジーンが本音をバラす。
「そ、そう言う、お前たちだって美味しい物食べられると思って来たんだろ?」
「「「「うん!」」」」
「はぁ〜、どっちもどっちよ」
マーガレットが呆れてため息をつき、スティーブとダニエルは苦笑いだ。
「うふふっ。では、まずは鰹節削り器とお弁当箱です」
ストレージからキャッツブシとハンカチに包んだお弁当箱が入ったランチバッグを出す。
「何でハンカチに包んでるの?」
ノエルが聞く。
「お弁当箱の蓋が開かないようにです。…こんな感じです」
そう言って、蓋を取る。
「「「「「「「おーーっ!!」」」」」」」
「美味しそうね。それに、彩りがきれいだわ」
マーガレットが褒める。
ゴリッ、ゴリッ、ゴリッ。
ジョアンがキャッツブシを鰹節削り器で削る。それを、不思議そうに皆が凝視する。
スープカップに薄く削れたキャッツブシとメソを入れ、そこにお湯を注ぐ。即席メソ汁の完成だ。
「えっと…みんなで試食するには足りないですね…。スティーブさん、ダニエルさん、どーぞ」
「「「「えーーっ!!!!」」」」
ノエル達が不満そうに言う。
「お兄様達には後で作りますから!!」
「えっ、俺らで良いんですか?あっ、すみません。私達で食べて良いのでしょうか?」
驚いてスティーブがスタンリーとマーガレットの顔を窺いながら聞く。
「はい、お礼も兼ねて…って言っても、2人で1つなんですけど」
「そうだぞ。遠慮せず食べてやってくれ。ジョアンの料理は美味いぞ。それと、そんなに固くならなくて良いから」
スタンリーにも言われ、みんなに見られながらで、2人は居た堪れない状況だったが試食をする。
「「美味い!!」」
「この卵の焼いたの初めて食べたけど、ふわふわでスープがジュワッと出てきて本当に美味いっす!」
スティーブはだし巻き卵に驚いた。
「キャロジンが星の形だ。こっちは、花だ」
ダニエルは型抜きしたキャロジンに驚く。
「キャロジンは、スティーブさんが作ってくれた型で切り抜いたんです」
「クッキーだけじゃなく、こういう使い方も出来るんだな…」
スティーブはクッキー型と聞いていたので、他にも用途があると聞き驚く。
「スープも初めて飲む味ですけど、何となく落ち着くというか…ともかく美味いっす」
スティーブはメソ汁も完食した。
「ジョアン様、美味しかったです。ありがとうございました」
とダニエル。
「本当に美味しくて、…作った甲斐がありました」
とスティーブ。
「いえ、こちらこそお願いした通りに作って貰ってありがとうございます。じゃあ、次はカクテルシェイカーを使ってみますね」
そう言って、ブランデー、リモンジュース、砂糖を取り出す。
シェイカーに氷入れて、ブランデーとリモンジュース、砂糖を入れて…。
久々に振るからねぇ〜。出来るかしら?
「うっ、重い…」
鍛錬で使う木剣とおおよそ500mlの空のシェイカーが同じぐらい。だから、5才には中身の入ったシェイカーは重過ぎた。
「やろうか?」
アランドルフが声を掛ける。
「ありがとう、アラン兄様。お願いします」
そう言って、シェイカーを渡す。
口頭で持ち方と振り方を教えると…
シャカシャカシャカ…。
アラン兄様、初めてなのに様になっているわ。
…イケメンバーテンダー誕生だわ。
実演販売したら……売れるわね。
「ジョアン、どのくらい?」
「あっ、もう大丈夫。ありがとう」
シェイカーを受け取り、代わりにハンカチを渡す。
シェイカーの蓋を取り、グラスに注ぐ。
「きれいな琥珀色だな。これは何というカクテルなんだ?」
「《ブランデー・サワー》です。どーぞ」
スタンリー、スティーブ、ダニエルの前に置く。
「お兄様達とお母様には、ノンアルコールカクテルの《フロリダ》です。ミランジジュースとリモンジュースの混ぜた物です」
ストレージから出す。
「「「「うっま!!」」」」
「あぁ〜、この酸味が美味しいわ」
わかるわ〜。妊娠中は、人によってだけど酸味が欲しくなるからねぇ。
私も妊娠中に、毎日グレープフルーツを2つずつ食べてたものねぇ〜。
その後、スタンリー、スティーブ、ダニエルは《ブランデー・サワー》のおかわりだけでなく、《ギムレット》もアランドルフに作らせて飲み、酔っ払いと化していた。
そこへ、帰宅したウィル、そしてグレイや休みだったエイブまでが参加する状況となった。
ーーーダイニングにて。
「「「「うっまっ!!」」」」
「この卵焼き?美味しいね。僕はだし巻き卵の方が好きだな」
と、ノエル。
「えーっ!甘い方が美味しいと思うけど?」
と、ジーン。
「俺は、ノエルと同じだし巻き卵だな」
と、アランドルフ。
「えー!!絶対甘いのだよー!!ねぇー?ジーン兄」
と、ヴィンス。
結局あの後、夕食に卵焼きをせがまれて2種類の卵焼きを作った。
「よく上手に卵をこんなに巻けるわねぇ〜。本当は料理人だったんじゃないの?」
リンジーがジョアンの料理の上手さに驚き、前世のことを聞いてくる。
「いいえ、料理人じゃないです。ある程度の料理の知識や作り方は、自分で本を読んだりテレビ…じゃなくて、えーっと人から聞いたりして覚えました」
テレビなんて異世界じゃないものねぇ〜。
そう考えると、本当に前世は発展してたのね。
まぁ、代わりに魔術があるものねぇ。早くジュリー姉様から習いたいわ。
学院入学式まで、あと5年…自己防衛できるまで訓練を怠らないようにしないとねぇ〜。それに、冒険者にもなりたいからねぇ〜。
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