71.賄賂
読んで頂きありがとうございます。
翌朝、いつも通り6刻前起床。
自室を出て、これまたいつも通り厨房へ向かう。
叔母様と叔父様にお弁当を作ろうかしらねぇ。朝食を食べずに7刻には出るって言ってたから、時間はあるわ。
ご飯がないから、サンドウィッチかしらね?
卵サンド、BLTサンド…あっ、この前作ったリップルジャムにシナモン入れるのも良いわねぇ〜。
そう考えながら歩いていると、外を歩くアラン兄様が見えた。今日は、昨日の夜半から雪が降り続いていて、いつもより一段と寒い。
天気とか関係なく朝練するなんて、ストイックねぇ。
サンドウィッチを作ったら、スポーツドリンクでも持って行ってあげようかしらねぇ。
ガチャ。
「おはよー。」
「おう、お嬢。相変わらず早いな。」
「ジョ、ジョアンさ…ちゃん。おはようございます。ご迷惑お掛けしました。」
「あっ、アニーちゃん。大丈夫?風邪の具合はどう?無理してない?」
「はい、もう大丈夫です。お医者様のことも、スポーツドリンクのことも、メソスープもありがとうございます。おかげで元気になりました。」
「良かった〜。これからは寝たら治るって思ったらダメだよ。ちゃんと誰かに頼ってね。」
「うぅ〜ありがどうございまずぅ〜。」
「あーもー、泣かないで。ね。」
ようやくアニーちゃんが泣き止み、サンドウィッチの件を話した。
「それは、ジュリエッタ様たち喜ぶだろうな。」
「朝食もサンドウィッチにしたら、良いかなぁ〜って思って。どうかな?」
「おー良いんじゃないか?パンとスープはもう出来てるから、あとは具材を作るだけだな。で、BLTってのは何だ?」
「ベーコン、レタシ、トメットを挟んだやつだよ。パンにマヨネーズを塗っておけば、パンが野菜の水分でぐちゃぐちゃにならないよ。」
「じゃあ、私、卵サンド作ります。茹で卵にマヨネーズですよね?」
「うん、お願いね。じゃあ、エイブさんはBLTで、私がリップルシナモンだね。あっ、タイキさんも、今日発つんだったっけ?」
「あぁー、アイツも忙しいからな。7刻前には出るみたいなこと行ってたぞ。ん?あいつの分も作るのか?」
「うん、賄賂的な?探して欲しい物あるから。」
「ん?何が欲しいんだ?」
「お米。前世では毎日食べてたんだよ。」
「それは、美味いのか?」
「美味い!!」
「あはは。じゃあ急いで作らないとな。アニー、鍋を火にかけたら念の為タイキに待ってるように言ってこい。」
「はい、わかりました。……よし、行ってきます。」
しばらくすると、アニーちゃんがタイキさんと共に戻って来た。タイキさんは既に最初に見た恰幅の良い商人の姿だった。
「エイブはん、ジョアンちゃん、おはようさん。なんや用あるって聞ぃたんやけど?こっちの準備終わったから来させてもろたわ。ほんで、何やの?」
「タイキさん、おはよう。朝食取らずに出発するって聞いたから。今、お弁当にサンドウィッチ作ってるからもうちょっと待ってて。」
「えっ!?弁当?俺に?ええの?」
「うん、もちろん。タイキさんのおかげで、セウユもメソも出汁まで手に入ったし。それに、探して欲しい物があって、賄賂かな?」
「お嬢、相手に賄賂って言っちゃうんだな……。」
エイブさんが呆れているけど、気にしない。
「あははは。賄賂なんかーい。まぁ、ええわ。探しといたるわ。ほんで、なに欲しいんや?」
「あっ、その前に私の作ったメソ汁飲む?野菜とションガーたっぷりだから、身体温まるよ?」
「おっ、ええの?飲む飲むー。メソ汁がここで飲めるなんてダメ元で持って来て良かったわー。」
ストレージからメソ汁を出して
「熱いから気をつけてね。」
「えっ!?ジョアンちゃんのストレージ、Sなん?」
「うん、Sだよ。Sの内容、知ってるんだね。」
「まぁ〜、色々と情報は知っとるからな。ほな、いただきますぅ。…モグ…うんまー。ションガーってメソ汁に合うんやなぁ。知らんかったわ。」
「ねぇータイキさんって前世の記憶持ちの子孫とか?」
「っ!!……なんで知っとるん?俺、旦那さんにも誰にも言ぅとらんで?」
「あー、えーと、食事前の所作で。《いただきます》の挨拶。」
「あーそうやな。今、言うとったわ。それでわかったん?じゃあ、もしかしてジョアンちゃんも?」
「うん。だから、もしかしたらご先祖さまと同郷かも知れない。その口調も懐かしいしね。」
「ジョアンちゃんも、このしゃべり方出来るん?」
「元の世界では、その話し方は方言だったの。私の前世の親がその方言だから、知ってるの。……出来るけど、そないに上手やあれへん。久しぶりに話すさかいに…おかしない?」
「うわぁ〜ジョアンちゃん、やっぱ俺のところにけぇへん?間違いなく、諜報活動できるで。」
「んー、まだ5才やし…大きぃなったら考えるわ。ほんでもええ?」
「ほなら、俺の奥さんでもええで?」
「あはは、タイキさんの年がいくつか知らんけど、年齢差があるやろー。」
「ジョアンちゃんなら年は気にしぃひん。大人なるまで待てるで。」
「アホなことを言うとるとしばくで?」
「お嬢……外国語話してるみたいだな。」
「はい……。でも、タイキさんの言葉使うジョアンちゃんも可愛いですねぇ。」
「まーな。でもスゴいのは、あんなに話しながらも一切手が止まらないって事だな。」
「確かに……。」
話しながらもサンドウィッチを完成させ、タイキに渡す。
「じゃあ、お米お願いしますね。」
「はいよ。次、来るまで探しとくわ。」
「お願いしますね。あっ、あとコレ。……はい、飴ちゃん。疲れた時でも食べて。」
ストレージから、ヴィー達の為に作ってあったべっこう飴を渡す。
「あははは、おかんみたいやな。ほな、またね。」
そう言って、タイキさんは屋敷を出て行った。




