70.みんなでBBQ
コロナがなければやりたいBBQ。
今日のバーベキューは全天候型の演習場で開くことになった。演習場なら冬の季でも暖かい中で出来るから。
新作のセウユダレもメソダレも大好評だった。
叔母様と叔父様に至っては、今度ロンゲスト家の料理人に講習を開いて欲しいとお願いされるぐらいだった。
「ジョアンちゃん、このタレ美味しいよ!」
ガンさんが話し掛けると、
「ジョ、ジョアンちゃん、冬季休みだからまた料理教えてくれる?」
マーティンも、ちゃん付け呼びに緊張して吃りながらも話し掛ける。
「ふふっ、ガンさん、ありがと。マーティンさん、また教えますね。あっ、あと皆さん明日から一緒に訓練お願いします」
様付けから、ちゃん付けに変わってみんな呼び辛いのかしらねぇ〜。あらら、赤くなって…。
なんとも初々しいねぇ〜。
「もちろん。でも、本当に一緒にできるの?」
オーキさんは心配そうだ。
「そうだよ。しかも大奥様が教えてくれるんだろ?先輩たちが言うに、なかなかハードらしいぞ」
ナットさんが小声で話す。
「でも、私強くなりたいから。頑張る」
「…強くならなくても、俺が守るのに」
マーティンさんがボソッと呟く。そこにジーン兄様がやってきて
「えー、何?マーティンってば、アタシを守ってくれるのぉ〜。嬉しぃ〜」
と言って、マーティンさんに抱きつく。
「おまっ、離れろって!やめろ、気持ち悪い!」
マーティンさんが逃げようとするが、ジーン兄様がなかなか離さない。周りは大爆笑だ。
2人がふざけ合ってると、バランスを崩してベンチにしていた丸太から2人が抱き合ったまま倒れた。びっくりした2人は目を合わせてしばらく呆然とするが、どちらからともなく笑い出し、最後には2人で腹を抱えて笑っていた。
*****
「使用人、私兵団関係なくみんなで火を囲んでご飯食べて、酒呑んで…なんか良いな」
アランドルフが言う。
「今まではこんな事なかったよ。ジョーだって、前はあんなに笑う子じゃなかった。いつも我儘で自分が気に食わなかったら怒るし暴れるし…。そんなジョーが【無】属性の判定された時は、ちょっとだけ心の中でざまぁみろって思ってたんだ。あっ、今は違うよ。可愛くて料理上手で、目も元に戻して貰ったし大好きだよ。誰にも渡したくないぐらいにね。こうやって今みんなで楽しく笑ったりしてるのは、ジョーが…前世の記憶を思い出したジョーが変えたんだ。このバーベキューだって、使用人も私兵団もランペイル家にいるなら、みんな家族だから親睦を図るためにって。使用人には孤児院から来た子もいて、泣いて喜んでいたよ」
「前世か……。どんな人間だったんだろうな」
「あーなんか、家庭も持ってて仕事をやってた女性だったって聞いたよ」
「だからか、何か5才児っぽくないのは」
そう言うと、アランドルフはジョアンが楽しく私兵団のメンバーと笑い合ってるのを眺める。それにつられるように、ノエルもまたジョアンを見る。
*****
「ん〜このセウユのタレ美味しいー!!ネーギ塩リモンはさっぱりしてるし、食べ過ぎちゃいそう」
ジュリエッタはタレの美味しさで箸が止まらなかった。
「ガーニックの入ったメソだっけ?これも良いよ。コレで肉を食べて…くぅーーっ。エールが美味い!!」
ギルバートは初めてのメソが気に入った。
「お前たちは、明日も仕事だろ?いつもは昼間に帰るじゃないか。なのに、今日は…。あっ、泊まって明日そのまま仕事行く気だろ?」
スタンリーは呆れながらジュリエッタに言う。
「たまには良いじゃないのー。お父様やお兄様ともっとお話ししたかったんだものー」モグ、モグ…。
「私も義父上と義兄さんと話し足りなくて」モグ、モグ…。
「お前たち、ただ単に、ジョアンの飯が食べたいだけじゃろ?」
ウィルも言う。
「そんな…モグ…こと、ないですよ。お母様とも…モグ…まだ、一緒にいたかったですし」モグ、モグ…。
「うん、うん」モグ、モグ、モグ…。
「あなたたち、説得力がないわ…。はぁー。ごめんなさいね、マーガレット。あなたは悪阻が酷いのに」
リンジーがマーガレットを気遣う。
「ありがとうございます、お義母様。それがジョアンの白湯を飲んでから落ち着いたんですよ。バーベキューも食べられないといけないからって作ってくれた、野菜たっぷりのメソスープもちゃんと食べられてますし…。だから、大丈夫ですよ」
「マーガレット、無理しないようにね。でも、ジョアンがいてくれるから安心ね。話を聞いた時は、本当に驚いたけれど。【無】属性で前世の記憶持ち。それだけじゃなく、スキルも規格外なんて。しかも守られるだけじゃ嫌だから、訓練をつけてくれなんて。去年までは、我儘な甘えん坊だったのに、いきなり大人になったみたいで、ちょっと寂しいけどね。だって、悪阻の辛さをわかってくれる5才児なんていないわよ。普通」
「そうですね。でも、あれでも時たま子供っぽいところあるんですよ。相変わらずイタズラ好きだし。この前なんて、筋肉痛で動けないベンをずっとニヤニヤしながら指でつついてたって聞きましたわ」
「「「「「あぁーーー」」」」」
「前世の記憶を取り戻しても、ジョアンはジョアンじゃよ。変わりゃあせんよ」
ウィルはそう言い、ジョアンがいる方を見る。それにつられて大人達はジョアンを見る。
「「「うっわーー、冷てーーーー!!!」」」
ジーン、ヴィンス、ジョアンが、酔い潰れていたウーサ、マツ、ダイの首元に氷を入れて遊んでいた。それを、周りのメンバーは笑いながら見ていた。
「こら、待てーー!」
ウーサ達が追いかけると…。
「「うわっはははーーー逃げろーーー!!」」
と、ジーン、ヴィンスが走り出し、
「きゃははははーーいやーーー」
と、ジョアンが笑いながら走る。しかも走りにくいからとワンピースの裾を膝上まで上げて。
「あっ、こらジョー、スカートを下ろしなさーい」
それをノエルが追いかけている。
「「「「「「………」」」」」」
「あれの、どこが大人なんじゃ?」
ウィルが言えば、
「武力よりもまず令嬢としての礼儀作法かしら?」
リンジーが呟いた。
シュン…。
「「「「「「っ!!!!!!」」」」」」
逃げ回っているジョアンが転移をし、目の前に現れた。
「ふぅーここなら、追いかけられない」
ジョアンが呟くのを聞くと。
「こら、ジョアン、ズルをしちゃいけません!!」
リンジーが怒る。
「母上、怒るところそこじゃありません。……ジョアン、無闇に転移しない約束だろ?」
リンジーの言い分に呆れ、ジョアンに言い聞かせる。
「でも〜便利だし…」
「でもじゃありません!!」
「はーい、ごめんなさい」
不貞腐れたように言うジョアン。
イタズラ好きで、出来る事なら楽をしたい、おばあちゃん。前世では、よくゲームでムキになり容赦なく孫を泣かせ、家族から大人気ないと言われていた。
だから、元からの性格のおかげで身体が5才児でも年相応に見られることがあった。
私も実際、大人気なくゲームで子供も泣かせてますσ(^_^;)




