68.商人
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寮から戻ると、エイブさんが玄関ホールで待っていた。
「お嬢、商人が来たがどうする?来るか?」
「行く、行くー!!」
そう答え、3人と別れエイブさんと共に食堂へ向かう。
食堂には既に商人と思われる男性とアーサーさんが談笑をしていた。
「おう、待たせたな。お嬢、こちらが屋敷によく来てくれる商人のーーー」
男性は立ち上がり
「ムラサメ商会のタイキと申しますぅ。どうぞ、よろしゅうに」
うわぁ〜久々に関西弁聞いたわ。
あれかしら?ご先祖様が異世界転移か転生かしらね?
いかにもラノベっぽくて、いかにも商人よねぇ〜。
見た目は有名RPGに出てくる商人みたいな、恰幅がいいヒゲ親父だけど…。
「初めまして、ランペイル家長女、ジョアンです。今日は宜しくお願いします」
ペコリと頭を下げる。
「いや〜アーサーはんに、聞いとったけど奥さんによう似て、えらい別嬪さんやねぇ〜。まだ5才やゆうのに、将来が楽しみやわぁ」
「お嬢、こいつは胡散臭いけど腕は確かだからな。
んで、タイキ、今日は何かあるのか?」
「エイブはんは、相変わらずいけずやなぁ。今日は、こちらですわ。まずは、東の国の調味料ですねん。この黒い液体がセウユ。こっちの茶色のがメソって言うんです。ほんで、これがキャッツブシ」
「何だこれ?そこら辺にある木だろ?……ん?お嬢どうした?大丈夫か?」
エイブさんはキャッツブシを見て訝しそうに言うが、その横で私は俯き肩を震わせていた。
「ジョアン様、だ、大丈夫ですか?」
アーサーさんも心配そうに聞く。
「ふふふっ。あっははは。きたーーーーーー!!」
立ち上がって拳を突き上げ叫けんだ。
それを見て3人は驚き、固まった。
タッ、タッ、タッ…。ガチャッ。
「ジョアン!どうした!?」
お父様とグレイが食堂に駆け込んできた。
「あっ、お父様。ごめんなさい、つい嬉しくて…」
「あっ、なんだそういうことか…。ふぅ〜、良かった。何かあったかと思ったよ。あぁ、タイキ久しぶりだな、息災か?」
「へぇ、なんとか毎日気張っとりますわ。旦那さんも、相変わらずおっとこまえやなぁ〜」
「お前も、相変わらずみたいだな。で、ジョアンは何に興味を持ったんだ?」
「はい、こちらの調味料です」
「ん?これは流木かなんかか?」
「キャッツブシです、お父様。いい出汁が出るんです」
「あれ?お嬢はん、出汁なんて知ってはるん?」
「えっ、あっ、はい…。本で読みました…」
タイキさんには、私の前世の記憶持ちのこと内緒にした方が良いのよねぇ?
でも、今のは隠したのバレバレかしら?
ちらっとお父様を見ると、私の頭を優しく撫でながら
「大丈夫だよ、ジョアン。タイキは表向きは商人だが、我が家の《影》なんだよ」
「ん?影って?」
「商人をしながら、色々な所で情報収集をしてくれているんだ」
何それ?スパイ活動ってこと?
でも、スパイにしてはこんな体型で良いのかしら?
おじさんだし、動きにくいんじゃないのかしらねぇ〜。
「あっ、お嬢はん。なんや失礼なこと考えてはるでしょ?これは仮の姿でっせ」
「えっ!?仮の姿?」
「旦那さん、ええやろか?」
「あぁ、見せてやってくれ」
「ほな…ほいっと」
タイキが立ち上がりポンとバク宙をすると、着地した時にはイケメンの青年が立っていた。
「「えっ!?」」
アーサーさんも変装を解いたところは初めて見たため、ジョアンと共に驚いていた。
「お嬢さん、これが本当の姿ですよ。どうです?格好良すぎて驚きました?」
変装を解いたタイキは、口調も関西弁ではなくなっていた。
「は、はい、ビックリです。すごいキレイなバク宙で、脱いだ服はどこに?」
「へっ?そこなの驚くとこ?」
「「あっははははーー」」
ジョアンの受け答えに、お父様とエイブさんは大笑いだった。
いや、実際は驚いたのよねぇ〜。
まさかデブヒゲ親父が本当はイケメンなんて…。
しかも童顔で母性本能くすぐるような感じよねぇ〜。
「で、お嬢さんは出汁のこと、何で知ってんの?」
「ジョアンでいいですよ、タイキさん。あっ、お父様この際ですから言っておきます。私兵団も様付けなしで良いですか?せっかく仲良くなろうと思って砕けた喋り方になったのに、名前だけ様付けなんて嫌です。ダメですか?」
上目遣いでお父様を見る。目を逸らさずじっと見る。
「うっ…しかしなぁ〜」
「お願い、お父様。ダメ?」
ダメ押しで、手を合わせて首を傾げる。
「うぅ…わかったよ。許可する。ただし、呼び捨てと愛称はダメだからな」
「はい!ありがとうございます、お父様」
「旦那、お嬢に甘すぎじゃねーですか?」
エイブとグレイは呆れ顔だ。
「と言うことで、タイキさんもアーサーさんも様付けなしでお願いしますね」
ニコッと笑いながらお願いする。
「じゃあ、ジョアンちゃん。俺のところで諜報活動してみない?今の仕草とか完璧に男騙して情報得られるよ」
「「「タイキーーー!!!」」」
お父様、グレイ、エイブさんが怒鳴る。
「嘘ですって。でも、興味があったら言ってね」
ウインクをしながらジョアンに言う。
「その時は、連絡しますね。で、出汁はですねぇ、前世の記憶です」
「はい!?ジョアンちゃん、前世の記憶持ちなの?」
「はい、前世の記憶持ちで【無】属性の5才児です」
「マジか!?じゃあ、もしかしてそれ以外の調味料も知ってるの?」
「はい、すごい馴染みのあるものです。これがあれば、料理の幅が広がります。タイキさん、本当にありがとう!」
「へぇ〜、料理できるんだ。すごいねぇ」
「あっ、じゃあお父様、今日は久々にバーベキューしましょう!お祖父様たちもいるし、タイキさんもいるし」
「あーそうだな。久々にやるか?タイキ、今夜はウチに泊まりなさい。使用人寮の空き部屋あったよな?グレイ」
「はい、ございます」
「じゃあ、決定!!タイキさん、食べてって下さいね!!」
「ラッキー!ありがとう、ジョアンちゃん」
バーベキュー、醤油と味噌をゲットしたからちゃんとしたバーベキューのタレが作れるわぁ〜。
これで、タイキさんの胃袋を掴めば、米を探して来てくれるかしら?
なんとなくですけど…
商人=関西弁って感じがするのは、私だけでしょうか?
エセ関西弁っぽい場合は、ごめんなさい。
誤字報告頂けたら嬉しいです。




