61.疲れた……
ーーー厨房。
「で、お嬢。ここに来たのは夕食を作るためにだろ?」
「うん、正解。お祖父様たちに、私の料理食べさせたいの。それに、初めて会う従兄弟もいるでしょ?仲良くするために、胃袋掴むのよ」
「ジョアン様、胃袋掴むって……男を捕まえる時に言う言葉っすよね?」
「あれ?異世界も、そう言うんだ」
「あぁ、言うぞ。まぁ、現に屋敷の連中はお嬢の料理で鷲掴みされてるな」
「あはは、そうかな?じゃあ、お祖父様たちも掴めるかな?」
「「「間違いない」」」
「じゃあ、頑張って作ろうかな。あれ?そう言えばアニーちゃんは?」
姿を見ないアニーちゃんをキョロキョロと探す。
「あー、風邪っぽいって休んでます」
「えっ?大丈夫なの?」
「熱が高いとか言ってましたけど、寝てりゃあ大丈夫、大丈夫」
アーサーさんが能天気に言う。
「風邪っぽいって、お医者さまに診てもらったの?」
「いや、寝てるだけだと……。知ってんのも、たぶん俺らぐらい?」
「はーっ!?グレイやナンシーも知らないの?風邪を甘くみちゃダメ(私の死因の1つなのに。そりゃ後期高齢者だったけど…)。しかも1人でなんて心細いに決まってんでしょ!ったく!……バンッ……サラーーーーー」
扉を開けて、サラを呼ぶ。
聞こえるかしら?
タッ、タッ、タッ。
「はーーーい。お呼びですか、ジョアン様」
さすが、サラ。すぐ来てくれたわ。
「アニーちゃん、寝込んでるらしいの。グレイかナンシーに伝えて、お医者さまに診てもらって」
「えっ!?本当ですか?かしこまりました。すぐにーーー」
「それと報告終わったら、アニーちゃんにコレ渡して飲ませて来て欲しいの」
そう言って、ストレージから特製スポーツドリンクを渡す。
「はい、かしこまりました」
そう言うと、ナンシーを探しに行った。
バタン。
「ねぇー、雁首揃えてそんな事もわかんねーの?家族が病気なったら、心配するよね?医者呼ばねーの?大丈夫ってなんでわかんの?医者なの?バーベキューの時に言ったよね?ここでは、みんな家族なんだよ!!特にアニーちゃんは……わかるよね?大人なんだろ?酒呑んでるもんなぁー。もう少し、考えろや!!」
「すまん、お嬢。気が利かなかった」
「「すみません」」
3人が頭を下げる。
パチパチパチ。
誰かが拍手してる?
恐る恐る振り返ると、そこには
「えっ!?お、お母様、お祖母様……いつからそこに?」
「ん〜雁首辺りから?」
うわー、思いっきり初っ端から聞いてるじゃない。ヤバい、これはヤバい。
前世のくせで、口調が。後輩を説教する時と同じだったわよ。どうしよう?
1、謝る
2、開き直る
3、逃げる
2と3は、後が怖いわよね。
「ご、ごめんなさい」
「あら?どうして謝るの?」
「えっ、あっ、あの言葉遣いが……」
「えぇ、そうね。良くはなかったわ。でも、アニーの事を思って怒ってあげたのよね?」
「はい……」
「じゃあ、そこは目を瞑りましょう。だって、ジョアンが言ってる事は間違っていないもの」
「そうよ、ジョアンちゃん。言いたいこと言ってやりなさいな。ジョアンちゃんが言ってもわからないようなら……ねぇ〜?エイブ、わかっているわよね?」
「は、はい!大奥様、もちろんです!」
「そう……。わかっているなら、良いわ。エイブ、次はないわよ」
「はい!!気をつけます!!」
「アーサーもベンも、良いわね?」
「「はい!!」」
「で、ジョアンちゃんはココで何をしてるの?」
「えっと、夕食の準備をしようかと」
「まぁあ、ジョアンちゃんが?前世のお料理かしら?」
「はい、お口に合うかわかりませんけど」
「お義母様、ジョアンの料理は美味しいですわよ。期待して大丈夫です」
「あら?本当。じゃあ、楽しみにして待っているわね」
そう言って、2人は厨房を去って行った。
「「「「はぁーーー」」」」
「何か、疲れたね」
「あぁ。お嬢に怒られた上に、大奥様の登場はな」
「怒られるような事してるからでしょ?」
「それは、本当に反省してる」
「「すみません」」




