58.お祖父様が来た
屋敷に戻って、埃っぽいので服を着替えてダイニングに急ぐ。ダイニングに行くと、みんな揃っている。
「た、大変お待たせしました」
「うん、大丈夫だよ。連絡は聞いてるから。まずは、座りなさい」
アーサーさんがグレイに、私兵団寮に行っていることを報告してくれていた。
「はい。あっ、おはようございます。お父様、お母様、ノエル兄様、ジーン兄様」
「「「「おはよう、ジョアン」」」」
ーーーー食後のモーニングティータイム。
「ありがとう。ジョアン」
「えっ?どうしたんですか?お父様」
「いや、私兵団寮のことだよ。父上達が来るのに屋敷のことばかりで、そっちまで全然気が回らなかった」
「もぉー、寮に行くなら僕かジーンを連れて行かないとダメだろ?」
ノエル兄様が言う。
「そうだぞ。何か変なことされなかったか?」
ジーン兄様も言う。
「ん?変なこと?何もないですよ。それに、エイブさんと一緒だったし。うふふ、お兄様たち過保護ですよぉ」
私兵団寮の事を話していると、珍しくお母様が会話に入らない。そう言えば朝食も残していた。気になってお母様を見ると、顔が真っ青だった。
「お、お母様、大丈夫ですか?顔が真っ青です」
「「「えっ!?」」」
お父様、ノエル兄様、ジーン兄様もお母様を見る。
「だ、大丈夫よ。ちょっと気持ちが悪いだけ……うっ」
「マギー、大丈夫か?グレイ、医者を呼べ!急げ!!」
グレイがリビングを走って出ていく。
「あぁー、もぉーいい、私が医者を連れて来る!」
そう言って、お父様もリビングを出て行った。その後をノエル兄様が追った。
「お母様、大丈夫ですか?吐き気だけ?」
お母様の横に座り、背中をさする。
「えぇ、今朝からずっとムカムカしてて……」
「ジーン兄様、お水をお願いします」
私に言われたジーン兄様は水を取りにリビングを出る。
昨日のアフターディナーティーでも普通にワイン呑んで、おつまみ食べてたけど、大した量は食べてなかったはず。もしかして……
「お母様、ちょっと聞きたいんですけど……月のモノ、最後いつ来ました?」
「っ!!そういえば……。あら、まさか?ジョアン」
「もしかしたら、……かもですね。お母様。まずは、お父様とお医者さま来てからでしょうけど」
「まぁ、それが本当だったら嬉しいわ。それにしても、ジョアン、よく気づいたわね。もしかして前世では子供が?」
「はい、2人いました。娘と息子が」
「そうなのね、どうりで。うふふふ。心強いわ」
そう言って、お母様は抱きしめてくれた。
その後、私の予想通り『おめでた』だった。
私に弟か妹が出来るのねぇ。嬉しいわ。
その子を守るためにも、強くならないといけないわねぇ。ナンシーに、来週から訓練を増やしてもらいましょ。
*****
アフタヌーンティーの少し前に、祖父母はやって来た。叔母家族は夕食の時に来る予定らしい。
私としては、3年ぶり。私としては初めて会う。
「お久しぶりです。お祖父様、お祖母様」
キレイにカーテシーをとる。
「おぉ、久しいな、ジョアン。大きくなったな」
そう言って、祖父ウィル・ランペイルは私を抱き上げる。
【ウィル・ランペイル】
ランペイル領、先代領主。元魔物討伐団団長。
【雷】属性。
本当にエイブさんぐらい大きいわ。
そして口髭が真っ白で、まるでサンタさんみたいねぇ。
「あら、大きくなっただけでなく更に可愛くなって、ちゃんと挨拶もできるようになったわ」
頭を優しく撫でながら、祖母リンジー・ランペイルも言う。
【リンジー・ランペイル】
ランペイル領、先代領主夫人。元王妃付き近衛隊。
【火】属性。
とても優しそうで、上品ないかにも貴族って感じのご婦人ねぇ。本当に怖いのかしら?そんな風には見えないけどねぇ〜。ナンシータイプかしら?
「父上も、母上もお元気そうでなによりです。まずは、こちらへ」
お父様は、そう言ってリビングに案内する。
今日のアフタヌーンティーは、紅茶、ソルトバタークッキー、リップルパイだった。
本当は、私の作ったものを出したかったけど……お父様が、お祖父様たちに説明してからって言うからねぇ。残念だわ〜。
でも、お祖父様たちは私の【無】属性のこと、何て思うのかしら?
他愛もない話をしていたが、スタンリーが切り出す。
「父上、母上に報告したいことが2点あります」
「なんだ?改まって」
「まずは、マーガレットが4人目を懐妊しました」
「なんと!おめでとう」
「まぁ、おめでとう。マーガレット。無理しないようにね。何かあったら遠慮せずに言うのよ」
「ありがとうございます、お義母様」
「ありがとうございます、母上。何かありましたらお願いします。そして、もう一つは……おいで、ジョアン」
お父様は私を呼び、隣に座らせる。
私が知らぬ間にきつく握りしめた手を、そっと優しく包む。お父様に手を握られ、安心したのか震えが止まった。
「春の季にジョアンの属性がわかりまして……。【無】属性と判定されました。連絡せずに申し訳ありません」
「……そうか」
「まぁ、そうだったのね。だから、連絡がなかったのね。おいで、ジョアンちゃん」
お祖父様とお祖母様の間に座る。
「辛かったわね。大丈夫よ、私もあなたを守るわ」
お祖母様に優しく抱きしめられて、涙が溢れる。
お祖父様も不器用ながらも優しく頭を撫でた。
良かった。罵倒されなかった。
これは、お祖父様たちも受け入れてくれたと思っても良いのかしら?でも、前世の記憶や規格外のスキルのことは?
不安そうな顔でお父様を見ると、無言で頷く。
「連絡出来なかったのは、その理由だけじゃないんです。実はーーー」
その後、お父様は私が、洗礼式の後倒れたことで前世の記憶持ちとわかったこと、規格外のスキルのことを説明した。
そして、【無】属性のことについてジュリエッタ叔母様が研究していて、今日そのことを説明してくれることになってることを。




