57.私兵団の酔っ払い
エイブさんは【身体強化】をかけて、私を抱っこし私兵団寮まで走った。
「まずは、食堂に行ってみよ。誰かしら朝食の準備してるでしょ?」
抱っこされたまま向かうと、食堂で酔い潰れて、机に突っ伏して寝ているエルさん、ウーサさん、ダイさん、マツさん。床に倒れるように寝ているアッシムさん、ヒロさん、キラさんがいた。
「「はぁー」」
私とエイブさんは、同時に溜息をつく。
酔っ払いを横目に隣の厨房に行くと、ナットさん、リュウジスさん、マーティンさんが集まっていた。
「おはよう」
「あっ、ジョアン様、エイブさん。おはようございます」
「「おはようございます」」
ナットさんに続き、リュウジスさんとマーティンさんも挨拶をする。
食堂のほうを指差して
「アレ、どういうこと?」
「あぁー、アーサーさんとベンさんは日付が変わる前に帰ったらしいんすけど、団長たちは朝まで呑んでたらしいっすよ」
ナットさんが教えてくれる。
「はぁ〜。エイブさん、まず起こして風呂入れよう。食堂の空気も入れ換えないと酒臭いし、部屋の隅は埃溜まってるから掃除もしないと……」
「そうだな。おい、お前ら他のメンバー起こしてこい!」
「「「はい!」」」
まだ寝ていた他のjr.メンバーが起きて来た。
「えっと、あの、どーしたんです?」
オーキさんが目を擦りながら聞いてくる。
「お前ら、聞いてないのか?今日、大旦那達が来るの」
エイブさんが呆れながら聞く。
「えっ、アフタヌーンティーぐらいに来るんすよね?」
来ることは知っていたようだ。
「来るのはアフタヌーンティーだけど、それまでにアレ、復活するの?」
そう言って、食堂の方を指さす。
「「「「「「「あっ」」」」」」」
「きっと、寮にも来るよ?酒臭いし、埃溜まってるし……。その状況見て、どう思うかな?お祖父様って、未だ訓練欠かしてないんだって。大剣に雷纏わせてぶった斬るらしいよ」
「「「「「「「ひぃっ!!」」」」」」」
ようやく事の重大さに気づいた。
「じゃあ、オーキさん、エリーさんは食堂を掃き掃除。オミさんは【ウォーター】で外から窓掃除。ナットは【ウインド】で空気の入れ替えを。リュウジスさんとガンさんは玄関掃除を」
魔術を掃除で使ったって良いわよね?
「あのー、俺は?」
「マーティンさんは私と一緒に、朝食をつくろ」
「っしゃー!」
なんでガッツポーズ?
掃除がよっぽど嫌いなのねぇ。
「じゃあ、エイブさん、まず起こそうか」
「だな」
みんなで食堂に向かう。
相変わらず、先程と変わらない状態だった。
「団長、起きて下さい!」
オーキさんがエルさんを揺さぶるが全く起きない。
他のメンバーも、起こしてみるが全然起きない。
「あっ、ナンシーだ!」
私は大きな声で言う。
ガタッ。
驚いたことに寝ていた全員が立ち上がり
「「「「「「お疲れ様であります」」」」」」」
と、敬礼をした。
それを見たjr.メンバーは唖然とし、私とエイブさんは
「「あっははは。ははははー」」
お腹をかかえて笑った。
「あれ?えっ?ジョアン……様?エイブさん?」
寝起きのエルさんは困惑した。
もちろん、酔っ払っていた他のメンバーも。
「うふふっ。ナンシーは来てないよ。でも、いい加減起きてね」
「あぁーーー。嘘か。良かったーーーー」
ちょっとエルさん、どんだけナンシーを怖がってるの?
パンパンと手を叩き
「はい、じゃあ、ともかくシャワー浴びて目を覚まして。お祖父様たちが来るのに、こんなんだったら本当にナンシーに怒られるよ?」
ビクッとした酔っ払いは、一目散に食堂を出て行った。
「はぁー、じゃあ掃除しましょ。ナットさんは、空気の入れ替えしてね。オミさんは、ナットさんが終わったらちゃんと窓が閉まってるか確認してから、外から窓の水洗いを。オーキさん、エリーさんはコレを床に撒いてホウキで掃いて。リュウジスさん、ガンさんは同じように玄関を」
そう言って、ストレージから茶殻を渡す。
「これ、何すか?」
ガンさんが聞いてくる。
「茶殻だよ。コレを撒いてから掃けば、埃が茶殻にくっついてキレイに掃けるよ。じゃあ、お願いします」
「「「「「「はい!!」」」」」」
「ふぅーーー。朝ごはん作らなきゃ」
エイブさんと共に厨房に戻る。
「あっ。ジョアン……様。何作る?」
マーティンさんが待っていた。
「……」
「どうした?お嬢」
「えっ、あっ、話すのに敬語やめてもらったのに、名前って様付けだなぁーって思って。年も近いのに」
「そりゃ、貴族と平民じゃ違うだろ?」
「えぇーーー。じゃあ、貴族が様付けするなって言ったらいいの?」
「んーーー。それは、ほら、旦那がなんて言うか……」
「じゃあ、お父様に後で聞こうっと。ということで、朝食作ります!」
「何がという事なんだか。で、何作るんだ」
「時間もないから、ワンプレートで良いんじゃない?エイブさん、オムレツお願い。マーティンさんはサラダを。私がパンケーキ作る」
バタバタとしたものの、シャワーを浴びて目が覚めたエルさん達も掃除を手伝い、なんとかキレイになった。これから毎日、全員当番制で掃除をすることを指示して、エイブさんと共に屋敷へ戻った。
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