550.駄目という理由
「ただいま戻りました」
ジェネラルの屋敷に戻って自室で着替えを済ませた私は、リビングに向かった。リビングには両親と学院から戻っていた双子ちゃんがお茶をしていた。
「おかえり。無事に帰って来れて良かった」
「さぁ、座って話を聞かせて」
「「姉様(姉上)おかえりなさい」」
お母様に促されソファーに座るとすぐにナンシーが紅茶を出してくれた。
それから夕食まで修学旅行での話をした。バートン辺境伯領でもてなしを受けたこと、料理教室のこと、ガロンやゴールダーとのお出掛けのこと、ティガー領の温泉のこと、帰りにはウォーカー領でのアウルベア討伐のことも。話した後は、みんなにお土産を配った。
お父様にはアニア国産のコーヒーを、お母様にはラグナのお家、ムーン侯爵領特産のハチミツから作られた化粧品を、フウゴにはリクエストされていたアニア国の有名な植物学者が書いた植物図鑑を、ライラにはこちらもリクエストされた鉄扇を。ライラの鉄扇は、武闘会の際にジェネラルに来たティガー公爵夫人のマルタ様が持っていたらしく、同じようなものが良いとリクエストされたので店をマルタ様に紹介してもらい購入してきた。ちなみに王太后様、王妃様とキャリーちゃんにもデザイン違いで買ってきた。
その他にも、アニア国での私のお気に入り、《ラクーン》特製スペアリブと東の国の魚介類をたくさん。明日にはお兄様たちも帰って来れるということで、久々にBBQを開催する予定。
夕食の準備ができたとグレイがリビングに呼びに来てダイニングルームに移動する前に、私は意を決してお父様とお母様に後で時間を取って欲しいと願った。お父様は何かを察したのか静かに頷いてくれた。
アフターディナーティータイムの後、私はお父様の執務室で二人と進路について話をした。とはいっても、なかなか話を切り出すことが出来ず話しのきっかけとして進路希望表を応接セットのテーブルの上に置いた。
「……ジョアンの希望は、以前と変わらないのか?」
「はい。第二騎士団に入団希望です」
「それは以前も言ったように、私からの命だとしても変わらないのかい?」
「……」
お父様の以前と変わらない言葉に私は何も答えられずに俯いてしまった。
「……ねぇ、スタン? どうして駄目なのか説明しないと、今のままではあなたがただジョアンの希望をただ切り捨てているだけよ。ジョアンだってなぜ駄目なのか明確な理由が知りたいわよね?」
お母様の言葉を聞いて、私は無言で頷いた。それをみたお父様は、小さく息を吐き私に視線を合わせた。
「ジョアン……私はね、ただ心配なのだよ。確かに第二騎士団に以前は女性団員もいたよ。ナンシーやホルガー公爵夫人たちのようにね。……これは非公開の話なのだがーー」
お父様の話は、少し衝撃的な話だった。
ナンシーたちが退団した後、今のように男性団員しかいなくなったそうだ。そしてその5年後にようやく女性団員が入団した際に事件が起こった。第二騎士団では私も体験したように、遠征先で野営がある。その当時は、荷物を減らすことも考えて男女関係なく雑魚寝が当たり前だった。ある時、遠征中にそのチームの班長と女性団員の二人が仮眠するタイミングで、その班長がテントに防音と結界の魔道具を使い女性団員を襲ったということがあったらしい。だが、もつれ合っているうちに魔道具が壊れ、テント内の口論が外にいる他の団員に聞こえた。外で夜番をしていた団員が、ただ事じゃないとテントの中にに突撃すると、女性団員が短剣を班長に突きつけてるところだった。その状況だけを見ると女性団員に非があるように見えるが、女性団員の頬が腫れ胸元のボタンが外されて中のインナーが見えていたこと、そして何より女性団員が録画出来る魔道具をボタンに仕込んでいたことが証拠となり班長は解雇されたそうだ。その後、騎士団では防音と結界の魔道具の使用禁止、テントでの仮眠は三人以上が徹底されたそうだ。
ちなみに、女性団員がなぜ録画していたかというと彼女を溺愛する婚約者が、遠征することが心配だからといって渡されたらしい。後日談として、その遠征が終わった後に女性団員は婚約期間を解消して結婚&退団。その女性団員は、かなり優秀で第二のナンシーになれると言われていたのに、あっさりと退団。当時の副団長はせっかく育てたのにと、辞めるきっかけを作った加害者の班長に対して恨みを抱いたそうだ。そして、その班長は領地に妻子がいたが、班長が領地に戻ると離縁届けと指輪がテーブルの上に置いてあり妻子は既に出て行った後だったらしい。解雇の原因は、女性側からの希望もあり、非公表だったのに出て行った妻子はどこからか聞いたらしい。
いや、それって絶対、当時の副団長がリークしたよね?
「今はジーンとエリック君が副団長だし団長はエリーの弟だから、こういうことはないと思いたい。……が、やはり親としては心配なんだよ」
お父様が暗い面持ちで私を見ることで、本当に心配してくれていることがわかった。
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