SS ジョアン六歳の誕生日の数日前……②
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それの記念SSを。
100話・六歳の誕生日のあたりのお話し、パート2
《アランの場合》
「6歳になる女の子にプレゼントか……」
トントントン。
「兄上、いる?」
「ああ。どうした?」
俺が従姉妹にあげる誕生日プレゼントを考えていると、9歳になる弟ヴィンスがやって来た。
「あのー、今度伯父上の所に行く時に、えーっと……ジョアン? の誕生日プレゼントを持っていくようにって母上から言われたんだけど、兄上は何を持っていくの?」
「俺は……考え中だ」
「6歳になる女の子は何が好きなのかわからなくて……」
ヴィーが言うのももっともだ。
「あっ、でも母上が言うには裁縫が好きらしいよ」
「裁縫なぁ……とりあえず雑貨屋にでも行くか。ヴィー、一緒に来るか?」
「行く!」
俺とヴィーは、未だ会ったこともない従姉妹のプレゼントを買うために雑貨屋へと向かった。
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プレゼントは、色とりどりの刺繍糸や可愛らしい絵の指抜きが入っている裁縫道具セット。
《ジュリエッタの場合》
ーー王都の某本屋にて
「えーっと、確かここにあったはず……あ、あった。これだわ」
私が手に取ったのは、『こどもでもだいじょうぶ まじゅつをはじめよう』という本。今度、ジェネラルに戻った時に渡す予定の、姪っ子であるジョアンの誕生日プレゼント。
五歳の洗礼式では【無】属性と判定されたようだが、この【無】属性については未だに謎が多い。一般的に【無】属性判定をされると、その後魔術について試すこともない。だから本当に五属性を全く使えないのか、もしくは後天的に全てにおいて平均的に使えるのか……。まぁ、それを研究しているのは私なんだけれど。とりあえず姪っ子ちゃんには、魔術の基本的なことを知ってもらうためにこの本を選んだ。前向きに読んでくれると良いけれど……。
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プレゼントは、『こどもでもだいじょうぶ まじゅつをはじめよう』という本。
《リンジーの場合》
ーー王都の雑貨屋
「これがいいのではなくて?」
「ん? おぉ、なかなか可愛らしいレターセットじゃな。だが、こちらも良いと思うのじゃがなぁ」
「まぁ、これも可愛らしいわね。では、どちらもプレゼントしましょうか」
「そうじゃな。これで、わしらに手紙を書いて貰えたらジョアンの文字の練習にもなるし、わしらも嬉しいのぉ」
「そうね。あの子は下手に知識があるからこそ、変な方向に進まないようにこまめに連絡を取って気をつけてあげないとね」
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プレゼントは、可愛らしい絵の入ったレターセット。
《グレイ、ナンシー、ネイサン、ザックの使用人家族の場合》
ーーグレイ家族の使用人用戸建てにて
「ジョアン様のプレゼント、どうする?」
子供たちが勉強が終わったタイミングで、ジョアン様のプレゼントについて切り出した。すると、ジョアン様と同じ歳の次男ザックが元気に手をあげた。
「はいはい。お菓子が良いと思う!」
「それは、ザックが欲しいものだろ? ジョアン様なら売ってるお菓子より美味しいものを作りそうだぞ」
「じゃあ、兄さんは何が良いと思うの?」
「んー、そうだな。最近、勉強を始めたと聞いたから本はどうだ?」
長男のネイサンは、良く周りを見ている。その視点から本を選ぶあたり、侍従見習いとしては合格点をあげても良いだろう。
「料理の本なら、また美味しいものを作ってくれそうだろ?」
「さすが兄さん。頭良いー!」
……いや、合格点はまだ早かったようだ。結果的に自分に得になるような理由ではダメだ。それにザックもそんな理由で「頭良いー」など褒めるのもダメだ。
息子二人に気づかれないようにため息をついたところ、ナンシーが帰宅した。今日は、休みだったから王都に買い物に行っていたようだ。
「ただいま。ジョアン様のプレゼント、買って来たわ」
さすが私の妻は、私たちよりも先を見越して考えているようだ。
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プレゼントは、絵本セット。
《チーム料理人の場合》
ーー王都の鍛冶屋にて
「んじゃ、このサイズでよろしく頼む」
「了解。それにしても、片刃のナイフねぇ。前世の記憶持ちが好んで使ったって言うから、ウチの店でも一種類だけ置いているが……お前さんには小さくはないか?」
「俺のじゃねぇーよ」
「あー、だろうな。まぁ、今は注文が入ってねぇから五日もすればできる」
顔見知りの鍛冶屋のオヤジに片刃包丁を注文して、俺はジェネラルのランペイル邸に戻った。
「料理長、どうでした?」
「おう、ちゃんと注文できたぞ。出来上がるのは五日後だと」
「じゃあ、余裕で間に合いますね」
「喜んでもらえますかね?」
「喜びますよー。ジョアンちゃん、前世は片刃包丁だったから、このナイフ使いにくいって言ってましたもん」
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プレゼントは、ジョアンサイズの片刃包丁。




