548.修学旅行24 討伐完了
「牛舎内のアウルベアはそのまま、先に沢付近にいるアウルベアから討伐をする」
「「「「「「はい!」」」」」」
熊Aを討伐するにも牛舎内が狭いこと、また家畜達への被害を考えて後回しにすることにした。熊Aと家畜達の接触をこれ以上させないために、ベルデに家畜達に結界を張ってもらい、私達は沢に向かった。
走って数分で沢に到着すると、結界をどうにか破壊しようと体当たりをしている熊Bがいた。私達に気付くと二本足で立ち上がり両手を挙げて威嚇してきた。
討伐する為にブライアン先生が決めた配置につくと、ベルデに結界を外してもらう。
「グゥオオオオー!!」
結界が外れると熊Bが雄叫びをあげた。その声に驚いたのか、周囲の木々に止まっていた鳥達が一斉に飛び立った。
ーー姐さん、牛舎にいた熊公が起きたっす。
牛舎を見張ってもらっていたメテオから念話で報告が入った。それを全員に共有する。
「牛舎のアウルベアがこっちに来る!」
「わかった。とりあえずこっちをどうにかするぞ!」
「「「「「「はい!」」」」」」
熊Bは、四足で地面を蹴ってこちらに向かって来ている。エドは、弓を構えて熊Bが射程距離に入るとすぐさま矢を射った。
「グガァァァァァ!」
矢は熊Bの右目に命中し、その痛みからか地面を転げ回っている。その隙を見逃さず、エドはもう一矢射ったが、その矢は当たらず地面に刺さった。
「クソッ」
「エド、俺がコレを投げたらこの瓶射れるか?……よし。ジョアン、瓶が割れて中身があのアウルベアにかかったら、周りを結界で囲えるか?」
ソウヤが悪態をついていたエドに、手のひらサイズサイズの瓶を見せる。それに対しエドが頷くのを確認したソウヤは、次に私に結界を張るように言ってきた。私も、それに対して頷く。
「エド、いくぞ」
ソウヤから放たれた瓶は、弧を描いて未だに転げ回っている熊Bに飛んで行く。ちょうど熊Bの上空に瓶が来たところで、エドの矢が当たり瓶が割れた。瓶の中には、何かしらの粉末が入っていたようでそれが熊Bの上に振り撒かれた。
「ジョアン、今だ!」
「【シールド】」
「……8、9、10。よし! ピッタリ」
私が【シールド】を張って10秒後、熊Bが微動だにしなくなった。
「あー。ソウヤ? あれは何だ?」
「俺が調合した、強力睡眠薬っす」
「「「「怖っ」」」」
ブライアン先生の質問に、サムズアップをしながら答えるソウヤ。その答えを聞いて、私とリキ、ダガー、ブラッドは、その強力さに怖くなった。ちなみにエド、カリム、ベルは無言で、一歩後ろに下がっていた。それを知らずか、ソウヤがブライアン先生に「睡眠効果は30分っす」と笑顔で申告している。
振りかけて10秒って、どれだけの威力なのよ。上手いこと結界張れていなかったら、こっちに被害があったんじゃない? 上手く張れて良かったー。
『ジョアン、来るわよ』
ちょっと緩んでいた空気がパールの言葉で、一瞬で張り詰めた。
そしてその直後、熊Aの姿が見えた。その体長は熊Bよりも一回り以上大きい。熊Aは、私達を確認した後チラッと結界の中にいる熊Bを見て雄叫びをあげた。
「グルゥアアアアアア! グルゥアアアアアア!」
『あーもー、煩い!』
バリバリバリーッ!
雄叫びに萎縮していた私達をよそに、パールが怒り【雷】属性が直撃した。今までにないほどの光と音に、咄嗟に目を瞑った。
『終わったわよ』
パールの声に恐る恐る目を開けるが、先程の強い光で目はしばしばしている。何とか目を凝らし周囲を見るが、熊Aがいたであろう所はクレーターだけがあり熊Aの影も形もなかった。
「えーっと、パールさん? さっきのアウルベアは?」
『消したわ』
「…………うん。じゃあ結界内のアウルベアを処理するか」
パールのあっさりとした受け答えに、唖然とした私達。その中で、一番早く我に返ったブライアン先生が指示を出した。あれだけのことがあったのに結界内の熊Bは、未だに寝ていた。なので、あっさりと処理完了。
報告を受けた領主様達もしばらく呆けていたが、結果良ければ全て良しとし、その後は飲めや歌えの大騒ぎ。特にパールは功労者として、生肉からステーキと様々な肉が献上されていた。それをパールは、ご満悦でペロリと完食していた。




