542.修学旅行18 温泉の効能
今回、ティガー公爵家にお呼ばれしたのは、先日ゴールダーと共に領地の別荘近くに沸いていた温泉の話をする為だった。
あの時、ゴールダーには温泉のことを簡単に話しゴールダーがティガー公爵に文で連絡したらしいが、その後公爵との予定が合わず、ようやく話し合いが出来るのが今日だった。
「ゴールダーからは大まかな内容は聞いたが、今一つわからないのだが……。確か、温泉とは東の国にあるという自然に出来た風呂だったか?」
「はい。東の国では地中から湧き出したお湯を用いた入浴施設が多くありますね」
「それが、我が領にあると?」
「ええ。【サーチ】しましたが、ちゃんと『天然温泉』とありました」
「なんと……」
あの時、天然温泉なのは確認したが効能などについてはちゃんと確認しなかった。なので、いかに温泉が良いものなのかプレゼンし難い。私個人としては、前世から温泉好きで家族や友達などとよく行ったものだ。晩年は、孫達と電車で日帰り温泉にも良く行ったし、週に三回は銭湯にも通っていた温泉大好き人間だった。
だから、東の国を訪れた時も嬉々としてサッちゃんに教えて貰った銭湯に通っていた。まさか知り合いの領地に天然温泉が湧いているだなんて、これを見逃す私ではない!
『ジョアン様、お待たせ致しました』
「ありがとう、ベルデ」
「ジョアン嬢、これが?」
「はい。今、ベルデに領地まで行ってもらい温泉を汲んできてもらいました」
緑の精霊であるベルデなら一瞬でティガー領に行き、温泉を汲んでこれる。それを目の前で【サーチ】すればプレゼンもし易い。
「……なんで鍋なんだ?」
「えっ? 何となく?」
「「「「「……」」」」」
カリムに突っ込まれたのは、ベルデが温泉を持ってきた容器。ティーカップやティーポットに入れても良かったのだが、本当に何となく鍋を渡していた。正直に言うとニコニコと微笑んでいるマルタ様以外が無の表情になっていた。
「と、とりあえず【サーチ】しますね。【サーチ オープン】」
------------------------------------------------------------
[ティガー領の天然温泉]
ティガー領に湧いた天然温泉。泉温四五度の高温泉。
酸性泉の療養泉。
効能:関節症、腰痛症、神経痛、五十肩、打撲、捻挫
筋肉痛、冷え性、疲労回復、健康増進、水虫
飲用:慢性消化器病
補足:「美肌の湯」とも呼ばれ、くすみやシミ、シワ、色素沈着などの肌トラブルを改善!
美肌効果に期待!
温泉に入れば、つるんと卵肌。これで殿方の視線は釘付けさ。
------------------------------------------------------------
「おおっ!」「まぁ! 美肌」
「「「ぶふっ」」」
「……」
驚くティガー公爵、喜ぶマルタ様、補足を見て吹き出すエド、カリム、ソウヤ、侍従見習いとして頑張って反応しないようにしているザック。でも肩が震えている……。相変わらずお茶目なサーチ内容に、皆んなの反応はまちまち。
「ジョアン嬢、温泉とは一度入れば良いのだろか?」
「いえ、さすがに一度では無理ですね」
確か、前世のテレビで温泉ソムリエの人が言っていた。
「本来、週に2回の入浴で温泉効果は力を発揮します。そして、一般的に温泉にはいって療養する湯治には二~三週間の期間を要すらしいです。でも、そんなに時間を取れる人は中々いないですよね? だから週1回の入浴を三~六ヶ月間続けることにより、連続湯治に匹敵する効果があるらしいですよ。とはいっても、1日に何度も入浴するのは体に負担がかかって逆効果です。 一日に二~三回を目安として下さい」
さすがに前世の記憶とはティガー公爵には言えないので、東の国で得た知識と装って話す。
「なるほど。では、怪我した私兵団などは休暇ごとに温泉に入らせると良いのか」
「それが良いかと思います」
「もし私兵団で結果がでれば、湯治を一大事業にしても良いな。ん? まずは王家に言うべきか? もしそうなるとすると……」
ティガー公爵は、ぶつぶつと今後の展開について考え始めてしまい、隣のマルタ様は「もう、あなたったら」と言いつつも優しく微笑んでいる。
その後、私達は明日の予定を飲みながら決めつつ夜が更けていった。
*** あと4日! ***
3/14に、コミックス1巻が発売です!
『享年82歳の異世界転生!?〜ハズレ属性でも、スキルだけで無双します〜 1』
マヒロタバ先生の描く、ジョアンをお楽しみ下さい!
詳細は、活動報告をご覧ください♪




