536.修学旅行13 認定証
助っ人のエイブさん達と別れ、私とベルは騎士学校に戻って来て寮のカフェテリアに向かう。昼時のカフェテリアにはいつものメンバーがいて、口々に「おかえり」と言ってくれた。私は、ラギール殿下に提案された認定証について、みんなに相談してみた。
「あー、確かに認定証があれば間違った調理法の料理はなくなるな」
「じゃあ、やっぱ認定証あった方がいいんじゃね?」
実家が同じように飲食店のリキが言うと、ダガーがやった方が良いと言う。
「んー、やっぱりそうかなぁー」
「ジョアンが悩んでいるのは、認定証を始めるのがアニア国からだから悩んでいるんだろ?」
「ん? どう言うことだ?」
「つまり、認定証があればジョアンの料理が正しく広まるが、そのスタートがエグザリア王国でなくてアニア国だと、帰国した後に面倒な事になると思っているんだろ」
私の悩んでいることをカリムとエドは、理解してくれていた。もちろん一緒にラギール殿下の話を聞いていたベルも、私の悩みに気づいて「みんなに相談してみよう」と言ってくれていた。
「あー、そういうことか」
「確かになー。言ってしまえば、昔からジョアンの料理を間近に見て、料理を作っているウチの店としては先に認定証を貰いたいな〜なんてな」
私の悩みを正確に理解したリキは、『オアシス』の息子としては先に認定証をもらいたいと冗談混じりに言う。
「とりあえず、相談してみたらいいんじゃねーか?」
「そうそう。ジョアンの場合はベルデもいるんだし」
「あっ、そっか」
ソウヤとブラッドに言われるまで、自分が簡単にエグザリアに戻れる事を忘れていた。私は思い立ったが吉日とばかりに、一度ブライアン先生に理由を説明し帰国することにした。もちろん他の生徒にバレないように、寮の自室に戻ってからベルデにお願いした。
「お帰りなさいませ」
先触れとしてお母様に文を飛ばしてから自室に転移するとナンシーが待っていた。
「ただいま。お母様は?」
「執務室にいらっしゃいます。ジョアン様が帰宅次第お連れするようにと」
ナンシーに案内されてお母様の執務室に向かう。以前はなかったお母様専用の執務室は、ジョウ商会の営業の仕事が増えてきた頃にできた。
トントントン。
「ジョアン様をお連れしました」
「どうぞ」
お母様は何かの書類に目を通していたが、私が執務室に入ると少し顔を上げて微笑んでくれた。
「お帰りなさい。先に座っていて、もう少し待ってちょうだいね」
一緒に中に入ったナンシーが紅茶とクッキーを出してくれたので、お母様がひと段落するまでお茶をした。
「それで? 転移してまで戻って来たのには理由があるのでしょう?」
「はい。実は……」
私は、今日の午前中に料理教室をしたこと、そこでラギール殿下に認定証について提案されたことなどを説明した。
「なるほど……。確かに自国で渡してもいない物を先に他国で始めるのには問題があるわね」
「そうなんです。ジョウ商会はもちろんのこと、リキの家の『オアシス』も一般科の頃からお世話になってますし、ダッシャーさんの所も前からスイーツを出してもらってます」
「そうねぇ。……では、一桁から二〇番まではエグザリア国でのみ発行すればいいのではなくて?」
つまり十番台までは、エグザリアの永久欠番ということね。昔で言うところの、ON砲ってことね。確かにそれなら後から問題にはならないわね。
お母様は執務机に戻り、さらさらっと認定証のフォーマットを作りベルでナンシーを呼ぶとその書いた紙を渡した。ナンシーが執務室から去ったあと、私はお母様とアニア国での修学旅行についてや料理教室での事を話していた。
そして、約一刻間後ナンシーが執務室に戻って来た。
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