526.修学旅行③ ファンタズモ
昨日は、第1巻の発売日でした☆
読んでくれた人いますかねぇ〜?
ジェネラルを出発し、野営で一泊して港町ファンタズモに到着した。宿は学科ごとに異なり、今回はファンタズモの宿に騎士科も泊まる。でも、宿に入ろうとした時にブライアン先生からいつものメンバーだけ呼び出された。
「あー、悪いんだがお前達は宿ではなく領主館の方に泊まってもらうことになった」
「えっ!? なんでですか?」
「実は、宿の部屋が足りないんだ。冒険者ギルドの宿泊施設も借りたんだが、今の時期から冬にかけてカルキノス目当てで冒険者や観光客が殺到しているらしい。そこで、ウィル様やリンジー様と面識のあるお前達は屋敷で受け入れてくれることになった。すまんな」
屋敷に行くとお祖父様、お祖母様だけではなく使用人達も歓迎してくれた。久しぶりに会ったお祖父様もお祖母様も変わらず元気で、ソウヤ達が恐縮するも皆んなでテラスに出てアフタヌーンティータイムをした。
「で? 明日はどうするんじゃ?」
「明日は、冒険者ギルドに行こうかと。ベル以外、ファンタズモで依頼を受けたことがないので」
「そうじゃのう。内陸で受ける依頼とこちらで受ける依頼は勝手が違うーー」
カンカンカンカン、カンカンカンカン。
お祖父様の話の途中で、港の方からけたたましい鐘の音が聞こえた。私達が何事かと顔を見回していると、家令のセバスチャンさんがお祖父様の元へやってきた。
「旦那様、冒険者ギルドより私兵団に応援要請でございます」
「して、内容は?」
「はい、岸より目測で十Kmほどの所に魔物の影あり、と」
「ギルド長の見立ては?」
「……シーサーペントではないかと」
「「「「「「「「「「っ!!」」」」」」」」」」
セバスチャンさんの言葉に誰もが息を飲んだ。それは、お祖父様もお祖母様も同じだった。
《シーサーペント》
海に現れ船を沈める、巨大な海蛇。
毒蛇であることが多い。
肉や皮の他に、毒袋や毒の牙を採取できる。
そこそこ美味な食材。
お祖父様は私兵団に指示を出すと、自分も愛剣の大剣を担ぎ馬で駆けて行った。
「お祖母様……」
「……あなた達も行くのね」
「「「「「「「「はい」」」」」」」」
「わかっているかも知れないけれど、優先すべき事は領民や観光客の安全よ。でも、あなた達も互いに護りなさい。十分に気をつけ、絶対無理はしないこと」
「「「「「「「「はい!」」」」」」」」
「パール、ベルデ、メテオ。この子達をお願いね」
『ええ、もちろん護るわ』
『かしこまりました』
『任せてよ』
*****
ファンタズモの街は、シーサーペントを見たい観光客達でごった返していた。中には、桟橋で近くまで行こうとする野次馬までいる始末。私兵団が安全な場所に誘導しようとしても、動かない者が多すぎる。
海上では、先に襲われた船のマストが折れていたりし既にボロボロになって沈むのも時間の問題だった。漁師達や冒険者達が船に乗ってシーサーペントとの距離を詰め、矢や魔法で攻撃するも動きが素早く中々当たらない。
「ジョアン!」
「あっ、ブライアン先生! ヘクタール先生!」
人混みから武装したブライアン先生とヘクタール先生がやって来た。
「今から俺達も行ってくる。お前達はウィル様に指示を仰げ」
そう言うと桟橋の方に向かって行った。
「お祖父様!」
「おぉ、お前達も来たか」
「私達は何をしたらいいですか?」
「では、エドラヒル君とジョアンはわしと来い。他の者は私兵団と共に人の誘導とシーサーペントに追いやられた小物魔物の討伐を」
「「「「「「「「はっ!!」」」」」」」」
お祖父様に指示を受けたベル達は私兵団長の元へ向かって走って行った。
「お祖父様、私達は?」
「あぁ、お前達にはやってもらいたいことがある。もう少しで……おぉ、来た来た。おい、イジョク! ここじゃ、ここじゃ」
「旦那! 持ってきたぞ。ん? おぉ、嬢ちゃんじゃねぇーか。元気だったか?」
「はい。イジョクさんもお元気そうで」
イジョクさんが持ってきたのは、空の魔石が付いた矢と大弓だった。お祖父様の説明によると、この空の魔石にお祖父様の【雷】属性を入れる。そして私とエルがスノーに乗ってシーサーペントの上空から、弓の得意なエルが矢を射るということらしい。
「エル、行くよ。スノー、お願いね」
前に小型パール、後ろにエルを乗せて、スノーで飛び立つ。周りにいた領民や観光客がこちらを凝視しているが、飛ぶことに集中する。エルを後ろに乗せただけでなく、大弓が思った以上に邪魔なのだ。浜辺からシーサーペントの元へ慎重に飛んでいる途中で、襲われていた船が沈んでいくのが見えた。
「ベルデ、投げ出された人の確保を」
『かしこまりました』
「エル、大丈夫そう?」
「んー、なんとも言えない。大弓はあんま使わないからな。それこそ、エルファの伯母上の借りたことがあるぐらいで」
「エルファの伯母上って、もしかしてファニー様?」
エルの伯母さんは、フェニコッテロ・エデーン侯爵夫人。穏やかそうな方なのに、まさかの大弓使いだとは人は見かけによらない。
船に乗った漁師達には、万が一感電するかもしれないから離れるように、私兵団には投げ出された人の救助は終わっていることを伝えた。船がある程度の距離を取った所で、シーサーペントの上空からエドが矢を放った。一度目は寸前の所でかわされたが、パールの【水檻】で動きを止めたところに左目に一つ、怒りで口を開けた所に口の中に一つ矢が刺さった。シーサーペントは痺れているにも関わらず暴れていたが、トドメとばかりにパールが雷を落とすと海の中に沈んだがしばらくすると海面に腹を出してぷかりと浮いた。
自分の書いたものが、実際に本屋に並んだものを見ると嬉しいですね〜。
特典SSも楽しめるものを書いたつもりです。




