53.調理指導②
同時2話更新。
こちらは2話目です。
そろそろ、どちらの料理も出来る頃ね。
初めてにしては、ちゃんと教えられたんじゃないかしら?
食堂の方が賑やかになる。
私兵団の他のメンバーが、領地の見回りから帰ってきた。
「おかえりなさい」
「「「「「「「っ!!!!」」」」」」」
みんなが私を見て、目を大きくし顔を赤くした。
あら?熱中症かしら?
「あっ、た、ただいま帰りました」
「「「「「「ただいま帰りました」」」」」」
エルさんの後に続いて、他のメンバーも帰った旨を言う。
「今日は春の季にしては、暑かったから大変だったでしょ?」
そう言いながら、ストレージから冷えたジョアン特製スポーツドリンクを出し、みんなに配っていく。
「ありがとうございます。ジョアン様、これは?」
見慣れない飲み物を渡され、エルさんは聞く。
「リモンとハチミツと塩を入れたものです。汗をかいた時は水分だけじゃなく、塩分も取ったほうが良いんですよ」
本当は二日酔いのお父様の為に作ったんだけど、良いわよねぇ。自業自得の人より、仕事して来た人の方が優先権はあるわ。
ゴクッ。
「「「美味い!」」」
「「「「うっま!!」」」」
「もう少しで出来るんで、待ってて下さいね」
ニコッと笑い、厨房の方に戻る。
「寮で可愛い子の《おかえり》は、何かいいな……」
「うん、何か今ので疲れが取れた」
「毎日言ってくれないかなぁ〜」
「そしたら、どんな仕事でも頑張れるな」
「あー、どんな厳しい訓練でも耐えられるな」
「「うん、うん」」
7人で話していると、足元から冷気を感じた。
気配を感じてバッと振り返ると、そこには冷ややかな目を向けるナンシーが立っていた。
「「「「「「「ひぃっ!!!!!!」」」」」」」
「ナ、ナンシー隊長。お疲れ様であります」
エルは咄嗟にナンシーを昔の役職で呼び、敬礼をする。
「「「「「「お疲れ様です」」」」」」
それに他のメンバーも続いた。
「おい、てめぇら、たるんでんじゃねーのか?ああん?今、どんな厳しい訓練にも耐えられるっつったよな?嘘言ってねーよなーー!ダイ・マキース、答えろ!!」
ナンシーが怒号した。
「はいっ、申し訳ありません」
「誰が、謝れっつったよ?おい、キラ、答えろ!!」
「はいっ、言いました」
「だーよーなーー。じゃあ、やってもらおうじゃねーか。厳しい訓練とやらをよぉーー」
「「「「「「「っ!!!!!」」」」」」」
「おらっ、ちょっとついて来いや!!久々に、直々に指導してやらぁーーー」
ナンシーはクルッと厨房の方をみると、入り口でノエルとジーンがニヤニヤこちらを見ている。
「あら?坊ちゃん方、覗き見はいけませんよ?……ちょっとだけ、この方たちと外に参りますのでジョアン様のことお願いしますね」
そう言い残すと、颯爽と演習場の方に歩いていく。その後を7人が、肩を落としてついて行く。
「「いってらっしゃーい」」
2人で手を振る。
「ありゃ、久々にマジモードだったな。ナンシー」
「そりゃ、ジョーで良からぬ妄想をしたのが悪いよ。ジーンもそう思うだろ?」
「「自業自得だな」」
そう言い、ノエルは防音の魔道具と雲隠れの魔道具のスイッチを切った。
防音の魔道具のおかげで音は漏れず、雲隠れの魔道具のおかげで気配を消すことができたため、厨房にいるメンバーは食堂での一部始終を気づいていない。
「出来ましたよ〜。って、あれ?いない」
料理の出来上がりを食堂に伝えに来たが、食堂には誰もいなかった。
「ジーン兄様。エルさんたち知りませんか?ナンシーもいないし」
「あー、なんか腹空かせる為に、ちょっと運動してくるって言ってたよ」
「えー、そうなんだ。じゃあ、待った方が良いのかな?」
「いや、たぶん時間かかるから先に食べておいてって言ってたよ」
「そっかぁ。じゃあ、エルさん達の分はストレージに入れておくとして……出来立て食べよ」
「「「「「「「「「イェーーーイ」」」」」」」」」
「「「いただきまーす」」」
「「「「「「「……」」」」」」」
「えーと、その《いただきます》ってのは何?」
オミさんが聞く。
「あっ、えっーと……食事を作ってくれた人や食材になったモノに対してへの感謝の言葉だよ」
「「「「「「「「「へぇーーーー」」」」」」」」」
あっ、ノエル兄様、ジーン兄様も言葉の意味を、教えていなかったわねぇ。
「じゃあ俺たちも言おう。いただきます」
オーキさんの掛け声で。
「「「「「「いただきます」」」」」」」
「「「「「唐揚げ、うっまっ!!!」」」」」
「美味いな!!」
「何だこれ?こんなに美味い食べ物、初めてだ!」
「うん、うん、うん」
「オムレツも食べ応えあって、いいな」
みんなの口に合ったようで、良かったわ〜。
やっぱり、唐揚げはこの世界でも万人受けするのねぇ。オムレツもジャガトが入ってるから腹持ち良いし、私兵団にはもってこいよねぇ。
「おい、ジーン。こんな美味い物、いつも食ってんのか?」
「ん?そうだけど。羨ましいだろ」モグモグ…。
「あぁ、羨ましい。可愛い上に、料理上手」
「手ぇ、出すなよ!!」
「……」モグモグ…。
「おい、返事しろって」
「……」モグモグ…。
「マーティン?」
「なぁ、ノエル。俺、これ自分で作ったなんて信じらんねーよ。美味すぎる」
「だろ?僕の可愛い妹は、作るのも教えるのも上手いんだ」
「学院の寮の飯が不味く感じるな」
「あー、それな。僕も思ったよ。早くジョーのご飯食べたい!って」
「俺も明日からそーなるんだな」
「あぁ、なるよ。間違いなくね」
「……なぁ、ノエル」
「なんだよ、ガン。改まって」
「義兄と呼んでも良いか?」
「は?どういうこと?……ガン、君、ジョーに手を出すつもり?」
「……」モグモグ…。
「ねぇー、答えてくれる?」
「……」モグモグ…。
「それが一時の迷いじゃなきゃ、僕も考えーーー」
「ありがとう。お義兄さま」
「やっぱり、止めた」




