SS 俺の妹 sideジーン
9/10発売の書籍予約記念SSです。
6話『妹想いの兄たち』あたりのジーン目線です。
俺はランペイル辺境伯家、次男ジーン・ランペイルだ。十一歳で王立学院の一般科の二年。好きな授業は武術で、嫌いな授業は年表が全然覚えられない国史。十四歳になったら騎士科に進学して、将来は父上と同じ第二騎士団に入団するのが夢だ。
俺の兄弟は二歳上の兄上と六歳下の妹がいる。兄上は、本の虫と言っていいほど常に本を読んでいる。そのせいで五年前ぐらいから眼鏡をかけているけど、それが知的だって女子から言われているらしい。まぁ、確かに兄上は格好良いし頭も良い、将来魔術師団に行くと言うぐらい魔術の制御が上手い。更に、誰に対しても優しいからそりゃモテるわ。妹は、ちっちゃい時は「にーに」と俺の後をよく付いてきて可愛かったのに、今はただの我が儘なだけだ。俺よりも好き嫌いがあるし、自分が中心じゃないと怒り出す、というか暴れ出す。
でも、そんな妹が洗礼式で【無】属性とわかった。洗礼式には両親だけ参加していたから、倒れた妹を連れて帰って来たと聞いてさすがに心配した。医者はショック的なものだって言ってたけど……。翌日目を覚ました妹は、何て説明したら良いかわからないけど何か変だった。妹だけど妹じゃない、あんな微笑むような笑顔は見たことないし、嫌いだった野菜も文句言わずに食べてた。まぁ、俺の違和感は妹の『前世の記憶持ち』だってことで全て納得した。スキルだって、やっぱり人とはちょっと違って数は多いし、S まであった。
下女になりたいなんて言い出した時は「は? 何言ってんだコイツ」とは思ったけど、よくよく考えると俺の妹は面白い。だって妹が【無】属性だからって、冷遇するわけもないしまして家から追い出すことなんて誰もしねぇのに。
父上に料理をしたいと頼んだ妹は、色々と作った。食べたことのない料理ーーたぶん前世の料理だろうなーーが出てくることを考えるとワクワクする。寮生活だから週末しか食べれないけど、帰るたびに妹の料理が楽しみだ。今のところ、1番はエビフライだ。あんなにサクサクでエビがプリプリなのは王都でも食べたことがない。お菓子もそうだ。学院に戻る朝に必ずクッキーや焼き菓子をくれる。それを大事に少しずつ食べているのに、親友に見つかってしょうがなくあげたら毎日のように俺の部屋に来る。代わりに売店で何か買ってくれるけど、妹の作った物には劣るんだよなぁ。
洗礼式で【無】属性の判定をされた妹だったけど、きっと神様が不憫に思って前世の記憶を思い出させたのかも知れない。……なんて思ったりもするけど、でもどんな妹だって俺の妹には変わりない。ちっちゃい時の追いかけてくる妹も、我が儘な妹も、【無】属性の妹も、料理の上手い妹も、俺の大切な妹……ジョアンには変わりない。くれたクッキーが辛いとか、たまにイタズラにムカつくけど、でもイタズラ成功を想像して笑っているだろうジョアンを思い浮かべると何か笑える。まぁ、帰った時に仕返しはするけどな。
だから【無】属性だってジョアンが負い目を感じないように、俺たちはジョアンを守るんだ。まだまだ武力は父上やグレイには勝てないから、俺が出来ることを今は考え中。ジョアンが、これからも笑って過ごせるように頑張らないとな。
たびたびのご案内ですけど……9月10日にマッグガーデン社様から発売されます!
多少、加筆もしております。是非、予約して頂けたら嬉しいです。どうぞよろしくお願いします。
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