SS 僕の妹 sideノエル
9/10発売の書籍予約記念SSです。
6話『妹想いの兄たち』あたりのノエル目線です。
僕はランペイル辺境伯家、長男ノエル・ランペイル。十三歳で王立学院の一般科だ。来年からは魔術科に進み、将来は母上と同じように、王宮の魔術師団に入団したい。そんな僕には五歳になる妹がいる。
妹は、僕とは八歳離れている。産まれた時は小さくて可愛い存在だった。僕の後ろを頑張ってヨチヨチと追いかけて付いて来るし、抱き上げるとキャッキャと笑い可愛いすぎて食べちゃいたいぐらいだった。でも、三歳ぐらいから好き嫌いや我儘が激しくなった。イタズラもするようになり、ある時は僕の本に落書きをされたことがあって、それからは自室以外に本を置いておくことを止めた。またある時は、ハサミを持ってきて僕の髪を切られそうになってからは妹とは少し距離をおいた。もちろん無視をするとかじゃなく物理的にだ。その距離が昔のように戻ったのはあの洗礼式の後からだった。
洗礼式の前まで「わたくしは、きっと【光】属性で聖女として皆んなに敬われる人になりますわ」なんて言っていた妹の判定は【無】属性。その判定を受けその場で倒れたらしい。その時はざまぁみろと思ったが、その日意識が戻らなかったことに対しては一応心配はした。翌日の昼過ぎに意識を取り戻したことを聞き、妹の部屋に行くと今までイタズラしても絶対に謝らなかったのに心配をかけて悪かったと謝った。その後もベッドの上に立ち、何かを叫んでいる妹を見てジーンと笑ったが、その時は頭を打ったせいでおかしくなったと思っていた。夕食の時も、いつものようには騒がず嫌いな野菜を黙って食べたり、下女になりたいなんて言い出したりいつもとは違う妹に困惑した。
妹が泣きすぎて寝た後に、父上に【無】属性のことについて調べたことを話した。調べたことに驚かれたが、いくら距離をおいていた僕だって妹が【無】属性の判定を受けるなんてショックだったからに過ぎない。【無】属性についての文献は、父上の妹であるジュリエッタ叔母上が研究していたものだった。そこには『【無】属性は、あらゆる属性の能力が平均の場合もある』『他の属性との相関関係を持たなかったり、あっても軽微であることがほとんどである』と書いていた。つまり、ハズレ属性だという認識が覆されるかもしれないということ。しかもスキルの種類も優れているし数も多かった。それだけでも驚いたのに、それ以上に妹から前世の記憶があるということを聞いた方が驚きだった。
妹は好き嫌いも我儘もなくなった分、厨房に行っては料理をし僕らを驚かせた。学院に入ってから一気に視力が落ちて眼鏡なしでは生活が大変だったのに、妹のドライフルーツとやらを食べた翌日には眼鏡なしでも生活が出来るようになった。それに、妹の作るお菓子は美味しい上に疲れも取ってくれるから本当にありがたい。出来ることなら学生寮に妹を連れて行きたいのに、母上が許してくれない。
その後、妹は僕らが学院に行っている間に勉強も鍛練も頑張っているようで、兄としては負けてられないと更に頑張るようになり定期試験でも良い成績を取れるようになった。
妹は、洗礼式で貴族内ではハズレ属性と言われる【無】属性だったが、人よりも多く珍しいスキルを持ち、更に前世の記憶持ち。これから妹……ジョアンが心安らかに生活する為に、僕は出来る限りのことをしよう。誰が敵になろうとも、僕はあの子の絶対的な味方でいるつもりだ。
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