522.携帯食の依頼
9月10日にマッグガーデン社様から発売されます!
多少、加筆もしております。是非、予約して頂けたら嬉しいです。どうぞよろしくお願いします。
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16日間の職業体験が終わり、通常の学院生活が戻ったが私達は授業が終わった教室でレポートに追われていた。
「あー、何で全部終わってからなんだよー」
「ほんとだよ! 中日の休日で書かせてくれたらこんなに苦労しねーのにー!」
「なーなー、あの時何したっけ?」
「えっ? アレだよ……あれ? 何だっけ?」
ガラガラガラ
「あ? お前ら、まだ終わらねーのか?」
「せんせー、何でレポートなんてあるんだよー」
「あのなぁ、騎士団も遠征やら行った後必ずレポートというか報告書書くんだ。だから、これも職業体験の一部だな。ちなみに、各騎士団長に見られるからな」
「「「「ギャーーー」」」」
「俺、書き直す」
「「「「俺も」」」」
その様子を教卓に頬杖ついてブライアン先生がニヤニヤと見ている。
「せめて、体験が始まる前にレポートのこと教えてくれたら……」
「ソウヤ……言っても無駄だ」
「よし! 出来たー」
「私も」
「俺も終わった」
「……よし、終わり」
「俺もでーきた!」
レポートをいち早く書き終わった私とベル、カリム、エド、リキはブライアン先生に提出すると、他のクラスメイトからブーイングを受けながら教室を出る。
「なぁ、なぁ今から家来ねぇ? 父さんから試食してくれって言われてんだ」
リキに誘われて、学院から歩いて数分の所にある『オアシス』に向かう。『オアシス』に行くのは、アルバイトした以来だった。店に着くと、夜の仕込みをやっているところで久々に来た私達を歓迎してくれた。リキママやカレンさんと話していると、リキパパが新作の料理を持って来た。
「前にジョアンちゃんに教えてもらったオムライスとドライカレーをアレンジしたんだ」
そう言って持って来た料理は、チキンライスとドライカレーをそれぞれ薄焼き卵に包み、棒状にしたものだった。
「実は、これを携帯食として売り出そうかと思ってな」
リキパパから聞くと、王都南の冒険者ギルドからの依頼で『オアシス』の携帯食を売って欲しいという事らしい。なぜ『オアシス』なのかというと、一重に "食の女神" が唯一直接調理を指導したからだと。
「これなら冒険者も移動中に食べやすくて良いな」
「ただ、これだとちょっとパンチが足りないような気がしてなぁ」
リキパパは、冒険者は肉好きが多くこの二品だと食いつきが悪いのではないかと懸念していた。
「じゃあ、肉巻きおにぎりは?」
「「「「「肉巻きおにぎり?」」」」」
とりあえず食べてもらった方が早いと思い厨房を借りて、肉巻きおにぎりを作り出した。
ご飯を先程の二品と同じように棒状にし、そこにストレージに常にある焼肉のタレに漬け込んだ薄切りのオーク肉を巻いていく。巻き終わりを下にして熱したフライパンに並べて焼き、肉に火が通れば出来上がり。皆んなの評価は、満場一致で採用。単品で売ると偏りが出るということで、10cmサイズにし三種類セットで販売することに決定した。
そのまま『オアシス』で夕飯を食べることになり、一応ソウヤ達に文を飛ばすとソウヤ、カリム、ダガー、ブラッドも合流することになり、2階の個室を借りることにした。夕食を食べながら、職業体験の話になり私は気になっていたことを聞いた。
「そういえば、第二騎士団の他の班はどういうことしたの?」
「俺らAチームは、ノア先輩が班長で王宮で待機だったが魔術師団のテイマーとその魔獣と鍛練したぞ」
Aチームのエド、ベル、ダガーはノア先輩の班だったらしい。魔術師団には何人かのテイマーが所属しており、王宮待機の時に一緒に鍛練するらしい。今回は、デーモンオウルとアイアンゴーレムだったそうだ。
「俺達は、スド村で事後調査だった」
Cチームのカリム、ソウヤ、ブラッドはヴィーが班長を務める班でアウルベア討伐後の森の調査をしたそうだ。あの森の生態系もようやく本来の姿になったようだ。
リキパパが作った『オアシスセット』と名付けられた携帯食は、売れに売れて肉巻きおにぎりを教えてくれたお礼に、魔羊の樽漬けを頂いた。魔羊の樽漬けを希望した私を、リキ達は「相変わらずだな」と苦笑していた。だって、美味しいんだもん。しかも、ヘルシー!




