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コミカライズ連載中【WEB版】享年82歳の異世界転生!?〜ハズレ属性でも気にしない、スキルだけで無双します〜《第11回ネット小説大賞 金賞受賞》  作者: ラクシュミー


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513.過保護な付与

 スピードが遅くなったアウルベアに向かい、私とベルは走り出した。それを見たアウルベアは、後ろ脚で立ち上がるも麻痺薬が効いているために重心がグラついている。それを見逃さず、更にスピードを上げた私はアウルベア手前で助走をつけて飛び上がる。アウルベアよりも更に上へと飛び上がった私に気を取られ視線を上げた時には、ベルがアウルベアの左後ろ脚を斬りつけていた。アウルベアの重心が更にグラつき、視線がベルにうつった瞬間に私が右手首を力任せに斬り飛ばした。【火】属性の魔石を付けていることもあり、3mほど先に落ちた右手首から白煙がわずかに上がっている。


「グゥガァァァァァァー」


 両後ろ脚のダメージでアウルベアが前のめりに倒れる。すぐさま起きあがろうとするも、右手首がないせいで上手く起き上がれないようだ。その隙に、皆んなが距離を詰めて来ていた。

 ようやく体勢を整えこちらを睨んだ刹那、アウルベアの眉間には至近距離で放ったエドの矢が刺さっていた。そして、アウルベアの身体はゆっくりと横に倒れた。


「……やったか?」


 ダガーが呟く。それを聞いた私は、ダガーをチラッと横目で見て誰にも気づかれないように溜息をついた。


 いや、ダガー、それってフラグだから……。


 そう思い、アウルベアに再び注視すると微かにお腹部分の上下運動が見られる。私は、そっと剣の魔石を変え次の展開に備えた。

 状態を確認するためにアウルベアに近づこうとしたジョーイさんだったが、その瞬間を待っていたアウルベアが急に動き出したことに驚き、後ろに下がろうとしてつまづき尻餅をついてしまった。今から助けに走っても間に合わない。だからアウルベアが迫る中、私は躊躇いもなくジョーイさんの目の前に転移し彼の腕をとると、再び転移して元の位置に戻った。


「「「「「「「「えっ!?」」」」」」」」


 私が転移したことにスキルを知らなかったダガーとブラッド、ランクAの二つのパーティメンバーは何が起こったのかわからず呆然としていた。私はというと、後で皆んなに説明したり謝ったりしないといけないなと思いながらも、次の行動にうつす。


 シュン…。

「「「「「ジョアン!」」」」」


 再び、アウルベアの前に転移するとすぐさまアウルベアに立ち向かう。ベル達が声をあげているが、今は振り向いている余裕がない。相手は手負いの巨大な熊魔獣。念のため、結界を張り先程と同じように、上へと飛び上がる。アウルベアの視線が上に向いた瞬間、再び転移。今度は、アウルベアの背後にまわり背中に袈裟斬り、続け様に逆袈裟斬りをする。つまり、アウルベアの背中にはバツの傷跡がついた。

 アウルベアは、前のめりに倒れ痛みから巨体を左右にゴロゴロと転がっているが、しばらくすると動かなくなる。よく見るとアウルベアの巨体が光っているように見えた。慎重に近寄り観察した私は、ボソッと呟く。


「えっ?マジか……」


 アウルベアが動かなくなったことに、私や皆んなも不審に思い近寄ってきた。


「どうした?ジョアン」

「アウルベアは?」


 と、近寄りながらエドとカリムが聞いてきた。


「えっと……凍ってる?」

「「「「「「「は?」」」」」」」

「ほ、本当だ。アウルベアが凍ってるぞ」

「マジか?」

「一体何があったんだ?」


 皆んなが口々に言う中、アウルベアの傍に片膝をついて観察していたカリムが私に聞いてきた。


「何の魔石を使った?」

「えっ?ただの【水】属性だよ」

「……その魔石って誰かから付与してもらったか?」

「【水】は、アラン兄様から……」

「それだ。アランドルフ様のことだから、ジョアンが使うならとかなり強力な付与をしたんだろう」


 通常魔石は、魔獣の体内にあるもの。魔獣は大気の魔素や魔獣を食べることで体内の魔石を育てる。しかし、稀に魔素を取り込んでない魔石がドロップすることがある。特に、動物でいうところの草食動物だ。ホーンラビットなどの他の魔獣を食べない魔獣がそれにあたる。その際にドロップされた魔石は、(から)魔石と呼ばれる。これに魔法をある程度習熟している人ならば、属性を付与することができる。

 【無】属性の多い平民が生活するに使う魔道具にも付与された魔石を使っている。【火】は保温や火種、【水】は冷蔵や生活水、【風】は換気などにといった感じに。ただ、属性を付与された魔石は、蓄えられたエネルギーを放出すると空の魔素に戻って空中に拡散していく。そして、また空魔石となるのだ。

 そして、私の太刀に使われる魔石は全て家族が付与してくれたものになる。【水】はアラン兄様、【火】はノエル兄様、【風】はジーン兄様、【雷】はヴィーが付与してくれた。


「あー、ありえるな。アランドルフ様ならそうかもな」

「うん。間違いないね。過保護だもの」


 アラン兄様と面識があり同じ貴族令息令嬢のエドとベルが、納得したように頷いている。


「ま、まぁ、取り敢えず討伐完了ってことで……いいよね?」


 見回すと皆んなが頷いてくれる。よしっ!とガッツポーズをすると、私の両肩をポンポンと叩かれる。


「取り敢えず、帰りがてら説明をもらえますか?ジョアン様?」

「えっ……」

「うん。助けてもらって本当に感謝してる。でも、説明頼むな」

「は、はい……」


 肩を叩いたフィリップさんとジョーイさんから説明を求められた。ベル達に助けを求めるも、苦笑いしながらゆっくりと首を横に振られた。




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