512.助っ人登場
翌日、王都南の冒険者ギルドから派遣されてやって来たランクAパーティは、違う意味で予想を外してくれた。
「お久しぶりです!ベル様、ジョアン様」
「「『荒野の翼』!?」」
「よぉ、みんな元気だったか?」
「「「「「「先輩!?」」」」」」
派遣されたパーティは、二組。一つは、バースト所属の『荒野の翼』のフランクさん、ボスコさん、ペックさん、マードックさん。ベルと友達になった頃、ベルパパがベルの為に私の身辺調査とランペイル領でダイヤウルフの討伐に尽力してくれた人達。もう一つは、騎士科の二つ上の先輩でフレッド殿下の同級生、ジョーイさん、チャンドラーさん、ロイさん。今もファンタズモ所属の『南海の守護者』。普段は王都にいるはずもない二つのパーティ。でも、王都南のギルマスから依頼を受けたのは彼らで間違いない。なぜなら、ちゃんと依頼書の複写を持っているから。
「どうして王都にいるの?」
「あーそれはですね、俺達も『南海の守護者』も新しくできたダンジョンに行こうと思って領を出て来たんですけどね。直接エッケに行くより、時間もあるし所々のギルドで依頼こなしながら行った方が良いと思いまして」
「俺らもそんな感じ。卒業以来の王都だし少しゆっくりしようかと思って。で、久々に王都南のギルドに顔出したら、ギルマスに捕まったってわけ」
私の質問にフランクさんとジョーイさんが答えてくれた。彼らにとっては不運だったろうが、王都東の似非ランクAパーティが来るかも知れないと不安だった私達にとっては幸運だった。
*****
「じゃあ、察知するね〜」
『荒野の翼』のペックさんは、スカウトだった。スカウトはパーティの目、探知系の魔法を使いこなし、パーティの誰よりも先に危険を感知し、備える役目で罠の発見、解除も担う。
「……いた。ここから、11刻の方向に」
「よし、じゃあここから二手に分かれて左右から回り込む形で行こう。俺達とエドラヒル様のチーム、『南海の守護者』とジョアン様のチームで」
二手に分かれ、私達は右側からアウルベアにアタックすることになった。その道中は、久々に騎士科の先輩に会ったということもあり和気藹々とした雰囲気で森の中を進んだ。
《アウルベア》
フクロウの頭に熊の姿をした凶暴な魔獣。
通常の熊より大きく強く、非常に獰猛で貪欲、短気で攻撃的な魔獣。昼夜問わず活動し、深夜に就寝する。森の獣から魔物まで、なんでも捕食する。知性はほとんどない。
アウルベアの気配がわかるぐらいの位置まで来ると、カリムから文がとどいた。どうやらあちらも、近くまで来たらしい。まず前方にいる『荒野の翼』連合チームがアウルベアへ先制攻撃を行う。アウルベアが彼らに気を取られている隙に、私達が背後から近づいて攻撃をするという作戦だ。
『荒野の翼』連合チームがアウルベアとの延長線上を半分程進んだところで、アウルベアに向かって矢が飛んだ。エドの放った矢は、正確にアウルベアの左目を射抜いた。
「グゥオオオオーゥ!!」
片目を潰されたアウルベアは、『荒野の翼』連合チームの方に凄いスピードで迫る。それに対して、再度エドが矢を放つが身体に矢を刺した状態でも走り続けるアウルベア。ようやくスピードが落ちたところで、ボスコさんが身の丈ほどある大剣を軽々と振り回しアウルベアに斬り掛かる。しかし、アウルベアの巨大な爪と大剣がぶつかり合いキィンと甲高い音がした。鍔迫り合いの結果、ボスコさんがアウルベアの右手を飛ばした。
「グガァァァァァ!!」
アウルベアが痛みからの雄叫びを上げている隙に、私達は背後を取る。チャンドラーさんが弓を、ロスさんが【雷】属性の雷球を放つ。何発か当たるも怒り狂ったアウルベアには効かないらしく、くるりと方向を変えると標的を変え私達の方へと走ってくる。そこへリキも【火】属性の火球弾を打つも、横に跳んでかわした。しかし、かわす事を予測したソウヤが強力な麻痺薬を塗った短剣を投げる。短剣は、アウルベアの左前脚と右肩に刺さりアウルベアのスピードが落ちたところで、再度放った短剣は右後ろ脚に刺さった。強力な上に速効性のある薬を使ったようで、アウルベアの歩みがゆっくりとなる。
「グルゥアアアアアア!!」
普通の人や下級冒険者では、聞くだけで気絶しそうな魔獣の威圧。それを真正面から受けているのは、私とベル。
手にしているのは、イジョクさんに新たに造ってもらった愛用の剣。ベルのは、前回はショートソードだったが、今回はバスタードソード。バスタードソードは「片手半剣」とも呼ばれ、本来は片手でも両手でも持てる長さの剣だ。もちろん今回のも魔力を流すことができ、既に刃身が赤くなっている。
そして私のは、前回身長の関係で作れなかった太刀を造ってもらった。私の太刀は、刃長は約80 cmほどで柄のところに魔石をはめる窪みがある。そこに五大属性の魔石をはめると、簡易的な魔剣になる。イジョクさんが、【無】属性の私の為に考えて造ってくれた。そして、今はベルのバスタードソードと同じように刃身が赤く光っている。
「行くよ、ベル」
「うん!」
いまさらながら、X(旧Twitter)はじめました。
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