510.食物連鎖
床に中綿入りラグを敷いて料理を並べ終わった時、村長が訪ねて来た。その後ろには、村長の息子さんというおじさんと孫だという男の子と女の子が立っていた。対応するのは、人当たりのいいエドとカリム。
「先程、コカトリスを頂いたんでな、ウチのばあさんがコレを持って行けと。こんなもんで申し訳ないがな」
村長から渡されたのは、マッシュジャガトと野菜炒め、リップルの甘露煮、そして自家製のお酒を貰った。高級肉でも有名なコカトリス。それを惜しげもなく1羽渡されて、村長宅では大騒ぎだったらしい。
「空き家を貸して頂いたお礼でしたのに、逆にすみません」
「いやいや、良いんじゃ。森にコカトリスがいるのは知っておったが、ワシらでは倒せんしましてや食べる事もできん」
「そうそう。こちらとしては嬉しいが、本当であれば売った方が良かったんじゃないのかい?」
「あー。まぁ、そうですけど……こっちも既に料理になってますし、気にしないで下さい」
カリムが村長達と話している間に、ちょこちょこと私達が座っているラグに近づいてきた男の子とその男の子の服の裾を掴んでいる女の子。
「なぁ、冒険者の兄ちゃん。その料理なんだ?見たこともねぇ」
「これか?これは、唐揚げだ」
「あっ、知ってる。俺の兄ちゃんが王国一美味いって言ってたヤツだ。兄ちゃんは、春の季から学院の騎士科にいるんだぜ。凄いだろ?姉ちゃんも一般科にいるんだ」
「そっか。兄ちゃんと姉ちゃんがいんのか」
ダガー達が唐揚げを摘まみつつ男の子と話している間、私とベルは7歳だという女の子から質問攻めを受けていた。
「ねぇねぇ、冒険者のお姉ちゃん達の彼氏はどの人?」
「「え?」」
「だって、男の人ばかりだから一人ぐらいはこの中にいるんでしょう?あたしの予想はね〜、今パパ達と話してる二人かな〜。ちなみに、あたしの好みは〜あの人〜」
おしゃまな女の子が指を刺したのはダガー。女の子が言うには、普段怖そうなのに優しそうな笑顔が素敵なんだそうだ。この年で、ギャップ萌えらしい。その後女の子には、私達と彼らは同級生で仲が良いだけだと伝えたら露骨にガッカリはした表情をしていたが、大学芋を渡すととても良い笑顔で頬張っていた。
*****
今日から、二手に分かれて森に入る。
依頼は群れの討伐だけれど、全ての群れを討伐してしまうと森の食物連鎖が崩れてしまう。食物連鎖に異常が起こると、ある魔獣が栄養を得られなくなりその魔獣は生きていくことができなくて絶滅し、逆に食べられることがなくなった魔獣が爆発的に繁殖するといった生態系の変化が起こってしまう。そうなると、森の自然も崩れてしまう可能性が高くなるので、今回は魔獣達の数を減らすことを重点的に行うことが昨日村長達との相談で決定した。
「でもさ〜、昨日の村長達の話だと今までは畑を荒らすことなかったんだろ?」
「そうらしいよ。半月前ぐらいから荒らされ始めたって」
「だろ?だとさ、森の食物連鎖が何かによって変えられたって考えられねぇか?」
「確かに、それはあるかも……」
朝食を食べながらみんなと討伐について話していると、ソウヤが気になる事があると話し出したのが、強制的食物連鎖の崩壊の可能性についてだった。
前世でも、国連の報告書で過去50年の生態系の変動をもたらした主な要因として「陸と海の利用の変化」「生物の直接的な搾取」「気候変動」「汚染」「外来種の侵入」をあげていたのをニュースで見たことがあった。この中で考えられるのは、「外来種の侵入」。つまり今まで森にいなかった魔獣がやって来た可能性がある。しかも、その魔獣は森にいる魔獣達よりも強者。
「じゃあある程度、各群れの数を減らしつつ森の警戒か?」
「だな。もし、群れ以外の魔獣にあったら連絡を取り合おう」
「うん。絶対無理は禁止!」
「よし!行くか」
「「「「「「「おー!!」」」」」」」
出発は9刻、帰宅は17刻と決めて、昨日と同じ場所で二手に分かれた。今日は昨日と逆に私達は左側に向かう。こちらも昨日と同じように見た感じは、いたって普通の森。だけど、昨日よりも魔獣の気配が多い気がする。
「何だろ?見られてる感がするんだけど……」
「ああ、わかる。しかも至る所からな」
「とりあえず相手の出方みるか」
「うん。それが良いと思う」
念のため抜刀済みの状態で森の奥へと進む。時折り出てくる小型の魔獣の群れを狩りつつ、2刻間ほど歩くとぽっかりひらけた場所に出た。不思議とそこだけ高木がなくて、光が入ってくる場所だった。
「ちょうど良いから、ここでランチしようぜ」
「「「賛成!」」」
ランチは、みんなで作ったサンドウィッチ。中身は焼肉のタレに漬け込んだホーンラビットを焼いたものと野菜のマリネ。倒木に腰を下ろして食べながら、これからどう行動するか相談することにした。
ここまで来るのに、討伐した小型の魔獣はホブゴブリンが率いるゴブリン軍団、クイーンキラービーと巣を含むキラービー軍団。もちろん当初の決定通り、ある程度数を減らしたら短時間だけ有効な睡眠の煙玉を投げて討伐部位を拾ったらその場を離れた。この後は、もう少し奥へ進むかと決め出発しようと立ち上がった時……
「グゥオオオオー!!!」
森の奥の方から、何かの雄叫びが聞こえた。
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