506.母、恐るべし
Merry Xmas☆
サンタさんより、ネトコン11の金賞をプレゼントを頂きました。
読んで頂ける皆様には、本当に感謝です!
引き続き、宜しくお願いします。
『オアシス』の個室に入ると私の腕にある魔道具のバングルで防音をかけた。すると、ソウヤとリキが同時に安堵の溜息をつく。
「うふふふ。あなた達のこと、ご両親は全く気付かなかったようね」
「はい。その……正直、嬉しいのか悲しいのかわかりません」
「まぁでも、変装が成功したと考えれば良いのではないか?」
「「あっ、確かに」」
エドに言われて、ソウヤとリキは表情を明るくする。
しばらくすると、注文した料理が運ばれて来た。今回、注文したのはBLTサンド、ハムチーズサンド、本日のスープそしてミックスジュース。
「まぁ、美味しいわぁ。サンドウィッチもそうだけど、このトメットのスープは具沢山で酸味も塩味もちょうど良いわ。あら?もしかしてこれはショートパスタというものかしら?」
「あ、ありがとうございます!はい、あの、エドの……レルータ領のショートパスタになります」
本日のスープ、ミネストローネを褒められてリキは満面の笑みで頭を下げる。ミネストローネに入っているショートパスタはエドの実家、レルータ領でスパゲッティとともに販売始めたものだ。でも、正式にはショートパスタではなく、スパゲッティを作る際に出た切れ端や、乾燥の際に折れた物を集め長さを揃えたもの。つまりショートになったパスタだ。このショートパスタを提案したことで販路がさらに広がったと感謝され、謝礼としてレルータ伯爵から小麦粉やらスパゲッティやらショートパスタが年3回大量に頂けることになり、私としても嬉しい。ちなみに、最近ショートなパスタとは別にちゃんとしたショートパスタも提案をした。マカロニやペンネのように穴の開いたものは説明しにくかったのもあって、提案したのは蝶の形のファルファッレと貝殻の形のコンキリエ。今は、レルータ領の職人さん達が頑張って量産を目指している。
先程までの料理店と違い、王太后様も気に入ったようでペロリと完食していた。もちろん私達も。男性陣はスープをお代わりしサンドウィッチも追加で頼んで全て完食していた。食後の紅茶を飲んでいた皇太后様と私、ベルはみんなの食欲に苦笑するしかなかった。
ちなみに厨房にいるリキパパとリキ兄のアルバさんにはバレていなかったが、リキママにはバレていたようで店を出ると小走りでやってきて王太后様に深々とお辞儀をしていた。リキママ曰く、どんな格好になっても子供のことはわかるんだそうだ。もちろん内緒にしてくれるらしい。さすが母、恐るべし。
『オアシス』を出た後は、再びマーケットを散策という名の視察をした。実は、今回の視察対象はマーケットの店舗や顧客だけではない。前世でいうところの警察機関である第一騎士団の働きも対象になっていた。この事を王太后様に説明された時は誰もが驚いた。先に行われた武闘会中のスパルタンレースの際にお祖母様に聞いていた、第一騎士団の問題点を未だに反省していない団員がいるらしい。守らなければならない国民に、金品を要求したり、無銭飲食なども横行しているらしい。
私達は、変装と共に録画機能のある魔道具を付けており、視察中色々な場面を記録していた。屋台からのみかじめ料を要求する騎士、売り子にセクハラする騎士、後輩であろう騎士にパワハラをしている騎士などがいた。もちろん中には困った人を助ける善行をもちろん無償で行う騎士もいるし、多くは後者だが皇太后様曰く全員そうでなければおかしいと。もちろん私達もそう思う。この結果は、王太后様より軍務大臣であるリバークス侯爵ーーカズール先輩のお父様ーーに報告されるそうだ。通常は、第一騎士団長に報告するらしいが、さすがに問題を未だ解決できない団長では埒が開かないという事で、その上の上司である軍務大臣に報告されるそうだ。
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「今日は、ありがとう。みなのお陰で、とても楽しかったわ」
「「「「「「「「はっ」」」」」」」」
王都の視察を終え、私達は朝と同じ馬車止めの所で馬車を下り皇太后様はアルバート殿下と共に王宮内へ入って行った。
「Aチームの諸君、ご苦労だった。これにて近衛隊での職業体験は終了だ。明後日は次の配属先である第一騎士団との顔合わせである。忘れぬようにな、以上」
「「「「「「「「ありがとうございました」」」」」」」」
近衛隊長がいなくなると、アラン兄様をはじめ近衛隊の先輩達が私達を労ってくれた。
そして、予定通りその日の夜にチャッターさんの奢りで食事会が開かれた。私達の他に、チャッターさん、アラン兄様、リュークさん、レオさん。
「今日は、遠慮なく食べてくれ」
「おいチャッター、俺達もいいのか?」
「いや、先輩達は勘弁して下さいよ〜。正直、騎士科の子達がどのくらい食べるかドキドキもんなんすから〜」
「安心しろ、チャッター。俺も出すから」
「マジっすか、アラン先輩!!さすがっす!!」
「俺も彼らには妹が世話になってるから、俺も出す」
「レオ先輩、あざぁーす」
「……じゃあ、俺も出すわ」
リュークさんも渋々ながら払うことになり、近衛隊の先輩達の奢りで私達はお腹いっぱいになり、そして良い感じに酔っ払った。




