491. 武闘会 予選①
武闘会は、剣術部門、槍術部門、弓術部門、体術部門、魔術部門があり、各部門ごとに各国10名ずつ参加する。本戦に出場できるのはその中から勝ち残った10名のみ。本戦出場者を決める予選の試合は出場者を5ブロックに分け、各ブロックで勝ち残った2名が本戦出場者として出場できる。ちなみに、予選会場は王城内の騎士団演習場で3部門、学院の演習場で2部門行われる。
予選のルールは……
・片方が舞台から落ちた場合。
・10カウントダウンを喫した場合。
・降参した場合。
本戦のルールは、予選ルールに加えて……
・気絶はダウンとみなされるため、10カウント以内に意識を取り戻して立ち上がることができれば負けとはならない。
・以上の他に重傷などの理由で審判判断により、試合続行が不可能と判断された場合も負けとなる。
反則行為は……
・相手を殺すこと。
・殺傷能力のある武器を使用すること。
・1人の対戦相手に対し、複数人数で挑むこと。
・目潰しや急所攻撃すること。ただし、その箇所に偶然当たった場合はダウンカウントは取られない。
・これらは未遂であれば反則とはされない。
審判は、予選は各国の騎士団長が務め、本戦では各国の軍務大臣が務める。
各部門の優勝者には優勝トロフィーと共に副賞として、希望する褒賞が与えられるらしい。過去には騎士爵や金銭、豪邸、さらには平民が貴族令嬢との婚姻を願ったこともあるらしい。もちろん、全て副賞として授与されたというから、よっぽどの物でなければ希望したものが手に入るようだ。だから、騎士達は国の威信も大事だが、何よりも副賞目当てで戦う人間は多い。
予選は無観客で行われる為に、式典が終わった段階で続々と観客は席を立つが、コロッセウムを出た所に武闘会の為だけに屋台村が作られた。しかも、エグザリア王国内の屋台だけではなく、申請し旅費等を自腹で払えるのなら、他国の人間でも屋台を出せる。なので、学院内の一角は前世の百貨店の催事場でよく見た物産展のようになっていた。だから、多くの人はここで食事をしたり飲んで行くので、未だに学院内は賑わっている。
屋根のないコロッセウムの中にも、屋台村から食欲を誘う良い匂いが漂っているけれど、そんなことはお構いなしに予選が始まった。
学院で行う予選は、体術部門、魔術部門。私達、騎士科の生徒は引き続き参加騎士のサポートに回る者、予選用の舞台の周りで魔術科の生徒と共に巡回する者、神殿から救護班として来ている神官のサポートする者など色々と担当分けされた。ベルは神官のサポートへ、私は巡回組になった。私と組んだ魔術科の生徒はエレーナ先輩の弟のランスだった。
「話には聞いていたけど、ここまで各国の騎士団が集まると凄いな」
「だよね〜。そういえば貴賓席に、ドミニクおじ様とレティおば様がいたね。やっぱり、元騎士団長と元魔術師団長だから?」
「ああ。他国の知り合いも来るからと言ってたから、それもあってだな。ランペイル辺境伯様もだろ?」
「うん。騎士団の副団長経験者までは招待状が行くらしいよ」
「じゃあ、ちょっとした同窓会だな」
巡回といっても、舞台の損傷がないかとか参加騎士のサポートは足りているかの確認などなので、ほとんど雑談をしながらコロッセウムのフィールド内を散歩していると言っても間違ってない。
「「「いた!ジョアン嬢!!」」」
そんな散歩中に、声が掛けられた。声のする方を見ると、見たことのある3人の騎士達が駆け寄って来た。彼らの髪の毛は赤、黄色、青でドワーフ族の騎士達。そう、あの時私に絡んで来た信号機トリオだった。
「あっ、お久しぶりです。代表騎士に選ばれたんですね」
「はい。ギリギリでしたけどなんとか」
「俺達、あれから心入れ替えて頑張りました〜!」
「……その、あなたに感謝する。あのままだったら、きっと退団させられただろう」
確かにあの時は、ちゃんと訓練もせず自分達よりも下の者に対して横柄な態度だった。でも、副団長のレギンさんの指示で、私にこてんぱんにやられてからは、心を入れ替えて誰よりも真摯に訓練をしたという。といっても、彼らが言っているので本当かはわからないが、現に代表騎士に選ばれたぐらいだから頑張ったんだと思う。
「それで、その……もし、優勝したら……」
「お、俺と……あの……」
「……つ、付き合っーー」
「おーい!ジョアーーン!!」
信号機トリオが何か言い掛けてたところに、やって来たのはアニア国ティガー公爵家三男のゴールダー。今回の武闘会の手伝いに、アニア国の騎士学校の生徒もやって来ていた。
「あっ、悪い。話している途中だったか?」
「あっ、いえ、俺達はこれで……」
「失礼します……」
「あっ、予選、頑張って下さいね〜」
「「「はい!!」」」
信号機トリオが去って行くのを見ながら、ゴールダーが割り込んだ事に関して再度謝るので、気にしていないことを言うと
「あの3人が不憫……」
と、ランスが呟く。その言葉に、私が首を傾げていると、ゴールダーとランスが同時に溜息をついた。
「ジョアンは、どの国に行っても人たらしだったんだな」
「まあ、それがジョアンらしいっちゃあ、らしいけどな」
「確かに」
「2人とも酷くない?」
「「理解しているだけだろ」」
ゴールダーに「紹介してくれ」と言われたので、ランスを紹介する。
「ゴールダー、こちらはウチの学院で魔術科のランス・ディーゼル侯爵令息。あっ、第二王子妃になるエレーナ先輩の弟さん。ランス、こちらはアニア国のゴールダー・ティガー公爵令息。2人とも同じ年だよ」
「俺はアニア国王立騎士学校のゴールダー・ティガーだ。ディーゼル侯爵令息殿とは、話が合いそうだ」
「魔術科のランス・ディーゼルです。俺もそう思ってました。あっ、俺の事はランスと呼んで下さい。同じ年らしいので」
「じゃあ、俺のこともゴールダーと。んで、敬語はお互いなしでどうだ?」
「ありがとう、こちらこそよろしく」
挨拶を終えた、ゴールダーにガロンは?と聞くと、剣術部門の方に行っているらしい。




